[508](投稿)原発の核分裂は二酸化炭素は生まないが死の灰を生む

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グスコーブドリの願い

火山の爆発で大量の「炭酸ガス」を放出させ、温室効果で冷害による飢饉(ききん)を防ぐ。自らの命を犠牲にしてイーハトーブを救うブドリ。幼いころに読んだ「グスコーブドリの伝記」で妹や地域を思うその情熱に心を打たれたという方も多いだろう▼「ガスは大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包む。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろう」。クーボー大博士の説明は約100年前の童話とは思えないほど克明だ▼実際には粒子が太陽光を遮る「日傘効果」による気温低下と温室効果による上昇という相反する効果がある。それでも粒子に比べ、温室効果の影響は長期にわたる。ブドリの考えもあながち的外れではないようだ▼米主催の気候変動に関する首脳会議がオンライン形式で開かれた。人権問題などでは対立する中ロが参加したのも危機感の表れだろう。新たな温室効果ガス削減目標を掲げた日本も実行力が問われよう▼火山噴火でも相反する効果があるように自然現象の影響は多面的分析が必要となる。あらゆるデータや見方を検討し、科学的知見に基づく行動につなげたい▼飢饉で両親を亡くし噴火で職も失うブドリは技師となり、噴火被害の軽減や人工降雨の研究に取り組む。通底するのは人々の暮らしを守るという願いだ。世界のリーダーにも見習ってほしい決意である。(2021・4・24 「卓上四季」北海道新聞デジタルより)

※※※ 骨川筋衛門のコメント

 「温室効果ガス」が地球の温暖化の主たる原因かどうかはまだ科学的には証明されていないというのが、現在の科学的探究の「位置」であり、『卓上四季』の筆者の「実際には粒子が太陽光を遮る「日傘効果」による気温低下と温室効果による上昇という相反する効果がある」という見解もあるかと考えます。
 しかし、小出裕章氏によると、原発を使えば「二酸化炭素を出さない」と主張する菅首相をはじめとする「原発推進派」は「核分裂反応は二酸化炭素を生まない」と言い換えるべきだと主張します。そして、ここに問題があるのだと指摘します。「確かに核分裂反応は二酸化炭素を出しませんが、その代わりに核分裂生成物、つまり死の灰を大量に生み出」すと強調します。
 二酸化炭素光合成に欠かせないなど、地球の生命体に欠かせない」けれど、「核分裂生成物はいかなる場合においても有害」だと言います。「核分裂反応というごく限られた過程だけを取り上げて、二酸化炭素を出さないと主張し、死の灰に目をつぶる議論はそもそも間違って」いると、またそれだけでなく、原発を動かせば、放射性廃物という「核のごみ」が大量に生み出され、それらを今後、数十万年から数百万年にわたり、安全を確認しながら保管しなければいけないという過酷な作業も原発には求められると指摘します。
 いったい誰が、この過酷な「安全確認」を継続しうるのでしょうか?

 福島県の皆さん、原発再稼働してる県民の皆さん、寿都町の皆さん、神恵内村の皆さん、福井県の県民の皆さん、「核のごみ」の廃棄や「原発の再稼働」に反対の声を上げていきませんか!?
参考文献:「原発事故は終わっていない」 小出裕章 著 毎日新聞出版 2021・3・5 発行

[507]失業率改善とはいうけれど、数字のまやかし

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失業率改善とはいうけれど

 総務省が4月30日に発表した3月の完全失業率は2.6%でした。前月を0.3%下回り、これだけを見ると新型コロナ感染症が広がっている中でも雇用が回復したかのようです。しかし実感も実態もそうではありません。

完全失業率は次のように算出されます。

完全失業率=完全失業者÷労働力人口×100

 「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合のことです。労働力人口とは15歳以上の就業者数と休業者および完全失業者数の合計です。完全失業者とは失業した労働者のうち求職活動をしている人のことをさします。職を探していない失業者は、学生や専業主婦、リタイアした高齢者などとともに非労働力人口とよばれます。
 4月30日の総務省発表で着目すべきことは、3月の非労働力人口が2月より24万人増えたことです。昨年の4月に緊急事態宣言がだされたときには3月より94万人増えました。休業した会社の労働者と求職活動を諦めた失業者が増加したことが示されています。その後非労働力人口は減少し続けましたが、3月の緊急事態宣言の影響で2月から24万人増えたのです。昨年の4月と同じような傾向が顕著となっています。
 朝日新聞によると総務省が示した完全失業者数は180万人(季節調整値)で、2月より23万人減りました。労働力人口が33万人減っており、非労働力人口は24万人増えています。就業者数は13万人減っています。完全失業者の「数字」が減っていることは仕事を失った労働者が増えていることを意味しているのです。コロナ休業や倒産が増えるなかで仕事が見つからずハローワークに行くのを諦めている失業労働者が多いのです。
 緊急事態宣言によって経営危機に追い込まれた飲食、宿泊等サービス業で働く労働者は、解雇され失業しました。交通、アパレル関連の労働者も「希望」退職がしいられてます。厚労省の発表で新型コロナ感染症の影響で解雇された労働者が4月8日で10万人をこえました。求職活動をしない、あるいはできなくなった労働者は失業していても完全失業者にカウントされないため計算上は完全失業率を下げる要因になるのです。仕事を失った労働者は「完全失業者」よりはるかに多く、「失業率2.6%」は失業の実態から乖離しているのです。
 
 総務省によると、3月の就業者数は6649万人で、前の年の同じ月と比べて51万人減り、12か月連続の減少となりました。また就業者のうち、パートや派遣社員、アルバイトなどの非正規労働者は2054万人で、前の年の同じ月から96万人減りました。特に女性の非正規の労働者が65万人削減されました。
 総務省ですら「前の月に比べて完全失業者数が減ったことで完全失業率が下がったが、就業者数も減るなど、新型コロナウイルスの影響は依然見られ、雇用情勢が改善していると言っていいか難しい」とコメントしています。
 これから雇用情勢はさらに悪化することが予想されます。政府の失政の犠牲転嫁を許してはならないと思います。

労働者はスクラムを固めなけれなりません。
               
               労働組合

[506](寄稿)医療あれこれ(その57)

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ペンギンドクターより
 
 私が勤務している病院のクラスターは収束して、ほぼ通常の病院機能が回復しました。PCR検査を繰り返して、費用は掛かりましたが、つくづく、自前でのPCR検査の効果を感じます。要するにPCR検査を何度も繰り返すしかないのです。私は昨年「数が増えれば500円ぐらいでやればいいのだ」とクリニックで話してみんなに呆れられましたが、国策としてそれぐらいで出来るようにしていたら、結果的に何兆円もの節約になったのではないかとすら思います。

 今回は、医療あれこれ(その57)を送ります。
 今回は、いや今回もまたと言っていいでしょう、私のまとまりのないよもやま話です。  
 
 先日、書庫を整理していたら、1994年5月19日第1刷発行『シネ・スクリプト 「カサブランカ」』(マガジンハウス刊行)を見つけたので、久し振りに読んでみました。読み始めたら夢中になり一気に読んでしまいました。内容は、皆様もご存知の映画「カサブランカ」(ハンフリー・ボガードイングリッド・バーグマン主演)の台詞の対訳本です。読んでいるうちに、映画の場面が浮かんできて、懐かしいというか切ないというか、まだ自分にもこういう気分が蘇ってくるのかと、奇妙な感じでした。
 この映画は、1942年に封切られています。日本に入ってきたのは戦後のはずですが、私はもちろん、この映画を映画館で見たわけではなく、ビデオでみました。それで、すっかりボガードとバーグマンのファンになり、二人のビデオを何本か集めました。・・・・・・ と書いていくときりがありません。バーグマンの乳がんの話をするつもりなのですが、もう一冊書庫にあった写真集『イングリッド・バーグマン 生きて恋して演技して』(1977年2月15日第1刷発行、1991年9月5日第11刷発行、芳賀書店刊行)も読んで、彼女の出演した映画のうち、何本のビデオを見た記憶があるか調べてみたら、9本のビデオを見ていました。現在手元にあるのはDVDが3本です。実は彼女は乳がんで亡くなっています。60歳で乳がんになり、7年間の闘病生活を送っています。そして、最後まで演技の仕事を続けています。1915年8月29日生まれで1982年8月29日死去、享年67歳です。どのような治療を受けたのかは知りません。しかし、乳がんなら樹木希林さんの例を挙げるまでもなく、がん細胞の増殖は比較的ゆっくりしていますので、体力・知力特に知力は最後まで保たれるケースが多いと言えます。しかし、がんですから、必ず死は訪れます。日本人である樹木希林さんやスウェーデン人であるバーグマンが、どんな思いで仕事を続けていたのか、私には想像もできませんが、見事な職業人だったことは間違いないでしょう。

 さて、今クリニックの患者さんに60歳代の「乳がん未治療」の患者さんがいます。以前皆様にもちょっとお話したことがあります。息子二人?がO 市で仕事しているということで、O に引っ越してきて、現在一人暮らしです。旦那さんとの関係がどうだったのかは、聞いていません。
 約5年前に左乳がんの診断を受けたものの、手術を含む一切の治療を拒否して対症療法のみの患者さんです。腫瘍は5センチ以上の大きさになり、左腋窩リンパ節の転移も大きくなっています。脊椎の圧迫骨折の腰痛で整骨院にかかっていたのですが、たまたまクリニックの初診の外来が私でした。痛み止めなどの処方希望でしたが、初診の際に彼女から「乳がん未治療」という話が出て、その後私の外来に来るようになりました。腫瘍マーカーが徐々に異常を示しており、腰痛も「骨への転移の可能性が高い」と数か月前から、話しています。・・・・・・。
 つまり、乳がんの具体的な経過、転移のこと、痛みのこと、亡くなる場合の死因(肺転移による呼吸不全が多い)などについて、理解してほしいと思うので、来院のたびに少しずつ話していました。本人も痛みなどを軽減する投薬治療は拒否していませんから、「最期は大体、麻薬を使って苦痛を軽くする」という話や、「ある閾値を超えると一気にがんが暴れ出すことが多い」「最期は病院ではなく在宅で迎えたいと思うのでしょうから、その準備をした方がいい」ということまで、話しました。一方、同時に「手術をして抗がん剤投与をしていても、5年目に再発してくる人は結構いるから、その意味では、あなたが治療しなかったことが悪いとは言えない」という話もしています。
 要するに、治療を拒否するような人への対応は極めて難しいのです。彼女は彼女なりに情報を収集していますから、知識はあります。しかし、「乳がんで死ぬ」ことの具体的なイメージがあるとは言えません。医者であっても専門分野が違えば、具体的な「がんによる死亡」のイメージがない人はいます。まして一般人ならなおさらです。もっとはっきり言えば「自分が死ぬということ」を理解している人は、この日本の「平和な時代」では少ないのではないでしょうか。今の私の役目はそれを少しずつ具体的に分かってもらうことだと言えるかもしれません。   
 さて、3月に入って、それまで月に一度来院していたのが、腰痛がひどくなってきたせいか、痛み止めや他のビタミン剤などを希望して毎週来院するようになっていました。私もそのたびに本人の希望通りに処方を変更したり追加したりしていました。ただ、患者さんが多めで忙しい時は彼女にだけ時間を割くのは難しく、いつもの20-30分の診察を10分足らずで切り上げることも多い日がありました。そしてその後、2週続けて来院しない日があり、今度は「ひょっとして痛み止めの副作用で胃潰瘍が出来て血でも吐いて自宅で死んではいないだろうか」と心配することになり、事務員に朝「今日来院しなかったら携帯に電話してみよう」と話していました。事務員は「あの人はいつも11時過ぎてから来院するから・・・・・・」とのこと。実際に事務員の言う通り、11時過ぎに彼女はびっこを引きながら、来院して私はホッとする始末でした。それが4月初めで、その日は、具体的に「訪問医療」「訪問看護」などについて、ナースに話してもらいました。「詳しい在宅医療の話は息子と一緒に聞きたい、しかし今仕事が忙しいので、連休明けにお願いしたい」と言っています。ナースの話では、住民票を移していないので、「介護保険の申請にはこちらに移す必要があり、急いでそれをしてください」と伝えたということでした。    
 私の外来に受診しているとは言っても、死ぬまで面倒をみるのは、私ではありません。一般には体調が急変すれば、病院に紹介する形になります。しかし、この女性の場合は、治療するわけではないので、今すべきことは、在宅医療への準備です。意外にこれが時間がかかります。私がいろいろ気を遣うのはそれが分かっているからです。死亡診断書を書くのは院長をはじめとする常勤の医師です。院長には昨年すでにこの患者のことは話してあります。院長は小児心臓外科の出身ですが、よく理解しています。
 私が病院に勤務していたころは、こういう苦労は勿論ありませんでした。要するに死ぬまで私が面倒をみることができました。死亡診断書を書くのは若い医師にしても私がそばにいることが可能でした。パートの医師の辛いところですが、実は死ぬまで面倒をみることをしないで済むから、私は常勤医をやめてパートの医師になったとも言えるでしょう。
 乳がんについては、この患者さんもそうですが、一気に衰弱するわけではないので、なかなか本人に「死ぬという実感」「衰えたという実感」がなくて、私のように「様々な死」を見てきたものとしては、「がん患者の急死」もあり得るので、心配してしまいます。これ以上続けると、愚痴っぽくなるので、この話はこのへんで。
 いずれにしても、外来をしていて、波長が合い、持続的に来院してくれるのは、医者冥利に尽きるという人もいますが、私は一般外来をしている限り、完全には平静な気分にはなれません。患者さんは必ず急変すること、特に老人は頻度的に急変することが多いものです。予測できないことも多いけれども、後で振り返ってみて、「予測すべきだった」と言えるケースもあります。そのことが私を神経質にしています。その点、検診業務はパターン化可能で、精神的には楽ですので、引き受けているのが今の私です。

 最後にこの10日間で読んだ本および今読んでいる本の紹介をします。
 池上彰佐藤優『ニッポン未完の民主主義 世界が驚く、日本の知られざる無意識と弱点』(2021年4月10日初版、中公新書ラクレ)、大澤真幸『新世紀のコミュニズムへ 資本主義の内からの脱出』(2021年4月10日第1刷発行、NHK出版新書)、斎藤幸平『人新世の「資本論」』(2020年9月22日第1刷発行、2021年3月6日第9刷発行、集英社新書)です。特に3つ目の斎藤幸平の新書は「新書大賞」受賞とか、駅ビルの書店に平積みになっています。こういう本が平積みというのは凄い。それだけ読まれているわけです。

 池上彰佐藤優大澤真幸の本は沢山読みましたが、斎藤幸平という人は、初めて知りました。1987年生まれですから、まだ33歳、こういう人が出てくるのは日本にもまだまだ希望があります。東大の理科Ⅱ類に入学したものの3ヶ月で退学してアメリカに渡り哲学を勉強して、ドイツ・ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。世界5か国で彼の著書が刊行されているようです。今大阪市立大学の経済学研究科准教授です。そして大澤真幸もこの斎藤幸平のこの本を引用しています。要するにコロナ後の世界は、今までの資本主義が変わらざるを得ないということです。新型コロナウイルスが終息しても、同じようなウイルスは必ず出現します。世界は極めて狭くなっています。そして地球はもうアップアップです。「コミュニズム」「マルクス」「資本論」という言葉に違和感がなくなりつつあるように感じます。私もヨタヨタですが、何とか頑張るつもりです。では。

[505](投稿)40年を原子炉「長期利用に道」ともちあげる読売新聞

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原発 長期利用に道」という見出しで、読売新聞は、原発の稼働を40年以上に進める政府・関西電力福井県の知事の「応援・太鼓持ち記事」を掲載している。
 一応、原発の核燃料から出る放射能中性子)による原発の原子炉圧力容器を構成する鋼鉄の壁の劣化=「中性子照射脆化(ぜいか)」(「中性子線にさらされた金属が粘りを失う現象で、原子炉の耐久性が低下する」)という課題や「他にもコンクリートやケーブルなどの経年劣化が問題になる」と、読売新聞は「長期運転」の危険性にちょっとは触れるが、「劣化の進み具合は一律ではなく、原発の型式や稼働状況に左右される」として、「原発ごとに個別に安全性を評価する必要がある」と、長期運転の危険性を薄めている。さらに、それを補強するために、山口彰・東大教授(原子力工学)は「運転期間や延長回数は、福島第一原発事故後に十分な科学的評価がなされないまま(40年という運転期間を目安としていることについて)決定した。世界の実績を踏まえ、延長を1回に制限している制度を見直す時期に来ている」と発言。東大教授という「肩書」で世界の流れは「海外40年超3割」とか「米80年も」と「ちょうちん」記事を書くことを忘れてはいません。
 それならば、なぜ米国で新しい原発を設置し運転しないのかとか、欧州では原発廃炉に向かう趨勢があることを書き添えないのかという疑問も自ずと湧いてきます。
 安倍元首相が東南アジアに原発「トップセールス」に回ってみたものの、どこの国も購入しなかったのかという疑問も書き加えるべきです。
 それ以前に、「福島の汚染水の問題」や「核のゴミの問題」も取り上げてしかるべきです。核のゴミをどこで引き受けるか?その当てもなく、「核のごみ」の廃棄と管理に、何百万年以上…を要しますが、そのことには触れていません。それだけでなく、日本列島は地震津波、台風、噴火…様々な災害が襲って原発を暴走させる・壊すということが、読売新聞の記者は、福島第一原発事故で身に染みて分かっているのだろうかという疑問を抱かざるを得ません。
 
原発がなければ電力不足?
 
 もう一つは、「電力安定『延長』頼み」という中見出しも付けられていますが、福島第一原発事故直後は、夏場に電力供給が不足するのではないかと不安視されていましたが、クーラーなどを使っても電力供給には全く問題はありませんでした。さらに、各地の原発が稼働しなくても、電力供給に全く支障がないことが分かりました。火力発電などで十分補えたのです。

「脱炭素」は錦の御旗 

 現政権は「二酸化炭素削減」を高く掲げて推進するとしていますが、二酸化炭素削減は「錦の御旗」であって、錦の御旗を高くすることによって、各地の電力会社の原発を稼働することを正当化したいのです。「電力会社」の儲けを図ることが菅首相らの狙いであって、決して電力不足や二酸化炭素による温暖化阻止することが真の目的ではないと考えます。
 養老孟司氏は早くから「京都議定書」の二酸化炭素排出量を低くするという目標をかかげるべきではなかったと批判していました。1800年代の産業革命以来、炭酸ガス濃度は右肩上がりであり、その後、徐々に「地球温暖化」は進んできたといろいろな資料には書かれています。とりわけ、1900年頃から石油の消費も加わると急速に炭酸ガスが増え、温暖化に拍車を掛けました。しかし、これらに加えて、山林を伐採し、農地を増やし、砂漠化を推進してきたことなども忘れてはなりません。
 私は「環境保護原理主義者」ではありませんが、どろ亀さん(注1)や自然農法の福岡正信さん(注2)たちの緑化などには賛成です。森林や畑があり花を愛でるのは賛成ですが、権力を使い自国民や他民族に圧政を行い、土地を占領し、戦火を交えることには反対です。石油や石炭やウランなどを「盗掘」に等しいことをすることにも反対です。
 人間も昆虫や野鳥などものびのびと暮らせ、実りの多い、放射能に汚染されていない食物や水などや暮らしやすい世界を希望していますが、原発の電力でこれらを賄(まかな)えるとは全く思っていません。無駄な大量生産、大量消費などにも反対です。それこそが炭酸ガスを多く出す原因の一つだと思っています。
 また、炭酸ガスの排出が温暖化の原因だとも思っていません。温暖化の一つの原因とされたフロンガス説はどこへ行ったのでしょうか?多様な原因で「温暖化」はしていると思います。マンモスがシベリアの凍土から発見されていることから、大昔はシベリアも温暖化していたのではなかったのではないかと考えます。その後、寒冷化して凍土のなかにマンモスは閉じ込められて、現代になって凍土が溶けて、発見されたと考えられます。
 福岡正信氏は、米国に招かれ、飛行機からカリフォルニアの乾燥した地域を眺め、昔は緑豊かな地域だったのだろうと推測しました。いまや、井戸を掘って、高山の雪解け水が地層深くに溜まっていたのをポンプで吸い上げ、その「化石水」も激減しています。これも、人工的に化石水を大量に利用して、畑を潤し農産物を大量生産した結果です。何事も、過剰に酷使し、利用するとしっぺ返しが来ることを示す一例です。

原発の排水も温暖化の原因

 原発は、海水や河川水を利用しなければ、稼働できません。核物質を燃料にして高温に発熱させ、その熱で水の温度を上げて、熱湯を作り(湯沸かしをし)、熱湯の蒸気で発電機を働かせて発電するわけですが、利用し終わった熱水を冷却して、再度原子炉で熱湯に変えて再利用しています。2次的に冷却した水は海洋に流します。この海洋に流される冷却水は、1秒間に70トンの水を7度温度を上げます。この大量の7度も上がった温水を海洋に流すことも、温暖化に加担していると考えられています。(注3)

 同じ日の読売新聞の社説にも「既存原発を有効に利用したい」というタイトルで書かれていますが、もちろん、趣旨は当然上記の内容と同じです。この「有効性」が福島第一原発事故の二の舞三の舞にならないようにすべきです!!

 上記の理由から、原発の利用、再利用には反対です!!読者の皆様も、「温暖化阻止」という名の菅政権の「錦の御旗」に惑わされず、原発の廃止を目指して、原発再稼働反対の声を上げていきましょう!!(原発稼働・再稼働に反対する北原麦秋

(★題材は「読売新聞」2021・4・29です)。


注1:高橋延清 - Wikipedia

注2:福岡正信 - Wikipedia

福岡正信 - Wikipedia
関連文献. 木下泰雄 「米と柑橘--愛媛県伊予市福岡正信さんの「自然農法」」 『協同組合経営研究月報』 、無農薬農業の事例をたずねて(ルポ) 207巻、 町田: 協同組合経営研究所、85-90頁、1970年12月。 issn 09141758 。; 坂本慶一 「日本農業の再生は可能か」 『中央公論』 90巻5号、 東京: 中央公論 ...
ja.wikipedia.org
注3: ① 原発事故は終わっていない 小出裕章 著 毎日新聞出版 2021.3.5 刊

    ② 原発ゼロ 小出裕章 著 幻冬舎ルネッサンス新書 2014・2・20 刊


   

[504](投稿)福島原発汚染水の「不都合な真実」

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福島第1原発の汚染水の「不都合な真実」: もう一つの汚染水放出に政府がしがみつくわけ

 第一に、政府・官邸が、汚染水を海洋放出することに拘(こだわ)るのは、タンクが汚染水で満杯になり来年の秋には置く場所を延々と拡張しなければならず、それによって莫大なお金がかかることです。そのために海洋放出を選びました。その根源は「海洋放出」あるいは「河川放出」が、これまで日本を含め、各国の原発保有国では、原発から出る汚染水を海洋放出や河川に放出することが当たり前になってきていたからです。
 このことは、ほとんど国民に知られていないことです。正常に運転されている原発からは、トリチウムだけでなく各核種の放射能に汚染されている「汚染水」が、海洋や河川に放出されているという事実を国民に全く知らされていないことは極めて酷(ひど)い問題です。最近やっと報道され始めましたが、わずかにしか言及されていません。そのため、多くの国民はだれも、この常態化している汚染水放出について全く疑問に思わないことが厳然としてあることです。
 
 第二に、もう一つの問題は、小出裕章氏の著書(注1)で書いていますが、トリチウムの濃度を1ℓ当たり6万ベクレル以下に希釈しなければ海洋放出できないことです。
 また汚染水が毎日増え続けている現状を考えると、すべてを放出するまでに、何十年もかかり、敷地には限りがあり無限にタンクの増設をできるわけではないため、いずれ国と東京電力は「放射能汚染水を海に流す」という選択をするだろと小出氏は予測されています。「しかし、これは『究極の環境汚染である』ということを忘れてはいけません」と、小出氏は問題視し、警告されています。
 
 東京電力福島第1原発で溶け落ちた炉心から発生したトリチウムの量は1~3号機合わせて200トンです。もし、原発事故が起きていなかったら、原子力推進派の構想では、使用済み核燃料を青森県六ケ所村の再処理工場に持ち込み、化学処理をほどこしたあと、プルトニウムを取り出し、残った核分裂生成物はガラス固化して地中に埋設、除去できないトリチウムは海洋放出する方針だったと言います。

 六ケ所村の再処理工場では年間800トンの使用済み核燃料を処理する計画ですが、もし福島第1原発トリチウムを含む処理水を海に流さず、タンクに貯蔵し続ける方策をとることになれば、六ヶ所村での海洋放出もできなくなってしまい、再処理工場の稼働自体ができなくなります。だから、政府小委員会、原子力規制委員会東京電力は口が裂けても「タンクに貯蔵し続ける」とは言えないと小出氏は指摘します。

 今、福島第1原子力発電所で問題になっている200トン分の燃料に入っているトリチウムなど、彼らから見れば、大した量ではないのです。もし、それが問題だと言えば、もう、六ケ所再処理工場は稼働させられないことになってしまいますから、日本の原子力そのものが根底から崩れてしまうわけです。だから、彼らは絶対に「海に流す」という選択を諦めません。(中略)漁業関係者をはじめ、国内外の反発を受けて決定は先送りになっていますが(これが書かれ発行された2021年3月5日以降の2021年3月13日に汚染水を海洋に放出する決定をしました)、私は流すと思いますと小出氏は断言しています。
 
 日本という国が原子力を推進しようとする限り、トリチウムは海洋放出する以外の方策は取れないのです。だからこそ私は原子力を使うこと自体に反対してきたのですと小出氏は強調しています。(「原発事故は終わっていない』 小出裕章 著 毎日新聞出版 2021年3月5日 発行」の第1章の「放射能汚染水を海に流す、これは究極の環境汚染である」P49~51:一部表現を変えている部分があります)

 ※※※真田幸村のコメント: 小出氏のこの「原発事故は終わっていない』という書物を読み、現在政府が強行しようとしているトリチウムの入った汚染水の海洋放出は、絶対にしてはいけないことだと強く思いました。地球温暖化や脱炭素にも触れたこの書を徹底して読むと、政府・官邸、原子力規制委員会や諸外国の原子力放射能の規制委員会などの勧告や規制値などは欺瞞以外の何物でもなく、むしろ「欺瞞的」・「嘘っぱち」だと思います。この書をゆっくりとかみしめて読むと原発を稼働させている日本政府、諸外国の政府の原発即時停止が正しいと思います。「風評被害」は実際は「実害」で、漁業関係者だけではなく、農業などにも実害を及ぼし、放射能は全世界に拡散していると分かります。癌などの難病が増えているのも五感では感じられない放射性物質を取り込んだ魚介類だけではなく食物すべてが放射能汚染を被っていることが原因の大きな部分を占めていると分かります。北海道の泊(とまり)原発の周辺地域の人は、その他の地域の人たちの1.2倍、癌になると「北海道がんセンター 名誉院長 西尾正道」氏は早くから指摘しています。
 私たちの未来、私たちの子々孫々放射線の障害を最小限にするためには、汚染水の海洋放出に反対の声を上げて行きましょう!!

[503](投稿)40年超原発再稼働を福井県知事容認

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40年超原発、初の再稼働へ 福井県知事同意、関電3基

 福井県の杉本達治知事は28日、県庁で記者会見し、運転開始から40年を超えた関西電力美浜原発3号機(同県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働に同意すると表明した。必要な地元同意手続きは完了し、東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年と定めたルール下で初めての延長運転が確実になった。関電は近く再稼働の工程を公表し、燃料装填などの準備を進める。

 温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」の実現を掲げ、既存原発の活用を進めたい国や関電にとって大きな節目となる。一方で建設から長期間を経た原発の安全性や、避難計画の実効性への懸念は完全には解消されておらず、国民の理解を得られるよう丁寧な説明が求められる。

 美浜、高浜両町は2月に再稼働に同意し、今月23日には県議会も容認した。関電は知事が求めた使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の県外候補地を2023年末までに確定させると約束。知事は現地で3基の安全対策を確認し、27日に梶山弘志経済産業相から原子力政策や地域振興策の説明を受けた。

 ただ3基はテロ対策施設の完成が遅れており、仮に再稼働しても高浜1、2号機は6月上旬、美浜3号機は10月下旬に設置期限を迎え停止する。

 国内では日本原子力発電東海第2原発茨城県東海村)も最長20年の運転延長が認可されたが、同意手続きは進んでいない。(2021・4・28 北海道新聞デジタルより)



※※※ 真田正幸のコメント:

 再三投稿で言われている原発の再稼働で、40年を超える原発の再稼働はしてはいけないと思います。スリーマイル原発事故、チェルノブイリ原発事故、福島第1原発事故等々発生後のその後の原発を稼働させている国家は、脱原発の流れになっています。スリーマイル島原発事故では、残った原発の継続的使用はペンシルバニア州知事が中止にしました。ソビエト連邦の解体はチェルノブイリ原発事故によって始まりました。日本は、東海村IOC臨界事故(注1参照)、そして何よりも、2011年3月11日の東日本大震災による電源喪失によるブラックアウトの結果、チェルノブイル原発事故と同レベル7の過酷な原発事故が生じ、原発事故による放射能によって、多くの人々の未来を徹頭徹尾変えてしまいました。(注2)

 それからまだ10年も経ていない中、放射能に悩まされ、汚染水に悩まされている事態を横目で見ながら、しかも、いまだ「原子力緊急事態宣言」下にあるにもかかわらず、福井県の杉本達治知事は、運転開始から40年を超えた関西電力美浜原発3号機(同県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働に同意すると28日に表明しました。安倍元首相も杉本達治知事も「原子力緊急事態宣言」を全く意に介さない鉄面皮な人物だと思います。

 炭酸ガスの排出を減少させるという名目のために、原発をさせても炭酸ガスは減らせません。むしろ、これ以上は、不要でしかも捨て場のない「核のごみ」を増やすだけです。(注3)

 原発の稼働は40年と一応言われていますが、原発の鋼鉄などで作られている圧力容器や格納容器は、核燃料の放射能による劣化や2800℃になる高温で、かなり脆弱(ぜいじゃく)になっていると思われます。いわゆる放射能による金属の経年劣化です。それを無視して、補助金のカネ目当てで稼働をするなら、得るものはなく、失うものが極めて大きい「第2の福島原発事故」をもたらすだけだと思います。

 現在、福島第1原発の近くはもちろん遠くまで広がった放射能汚染や、汚染水の海洋放出までごり押ししようとしている菅政権のやり方を見ていると、日本海に汚染水を直接放出する羽目に陥ります。また、田畑や森林や山岳にも放射能は散乱します。福島では、有機農法をやっていた方が自殺したり、牧場を経営していた方は牛たちを放置せねばならない羽目に陥りました。住居を失うことを余儀なくされた人は数えきれないくらいおられます。ご高齢の方は逃げる最中に亡くなられました。そんな結果をまた招こうとしています。

 しかも、福島の原発事故から10年経過すると、住居手当も出してくれない仕打ちを政府はしました。このような仕打ちをする「冷酷な」菅政権・政府・電力会社(東京電力)です。

 福井県内だけに放射能は降り注ぐわけではなく、隣り合う京都府滋賀県富山県、少し離れていても中部地方、東北地方、西日本などにも放射能の粒子は降り注ぎます。滋賀県にある琵琶湖が放射能汚染されると滋賀県だけでなく、琵琶湖の水を利用している京都府大阪府などは、琵琶湖のから流れ出る河川水を飲料水や工業用水として利用できなくなります。山林、田畑、牧畜、山菜取り、漁業等々に多大な影響が及びます。

 反対するなら今です。新型コロナ禍対策に忙しい最中を利用して、コロナ禍のどさくさに紛れて、使用限度の40年を超え経年劣化した原発をわざわざ選んで、稼働させるという「政治屋」の悪行に対して、多くの人たちは団結して反対の運動と声を上げて行きましょう。コロナ禍で、反対運動も「3密」を避けると見込んで、今なら劣化した原発の再稼働ができると政府と福井県知事や関西電力は思っていると思いますが、それを押し返してでも、工夫して原発再稼働に対して反対運動を起こすべきです。未来の子供たちに禍根を残してはなりません!!それが現在に生きているわたくしたちの使命だと思います。

 読者の皆様、多くの人たちと連帯して、原発再稼働反対の運動と声を意見を上げて行きましょう。そうでなければ、原発事故が発生したならば生活も成り立って行かないと思います。放射能障害による病を生じる可能性もあります。また、生命を失う危険もあります。福島の人たちのこの10年間の苦しみを共有することから始めませんか!!原発再稼働反対の運動を作って菅政権・県知事・関西電力の愚かな策動を止めましょう!!

注1:東海村JCO臨界事故 - Wikipedia
注2:東日本大震災 - Wikipedia
注3:「原発事故は終わっていない」 小出裕章 著 毎日新聞出版 2021年3月5日 発行

[502]東京女子医大医師100人が退職

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 4月20日の『東洋経済オンライン』は、ジャーナリストの岩澤倫彦氏のスクープを掲載しました。東京女子医大で3月までに100人を超える医師が退職したと報道しました。「スクープ!東京女子医大で医師100人超が退職  一方的な経営陣の方針に抗議の意思表示か」という記事によると、実質上の賃金引き下げが退職の最大の理由のようです。

 『東洋経済オンライン』の岩澤氏の調べによれば、医師の基本給は「30歳の場合、東京女子医大25.9万円、東京医大31.1万円、日赤医療センター41.1万円、がん研有明病院49.7万円。(東京医労連調査部「賃金・労働条件実態 2020年度版」より) 病院によって資格手当などが加算されているので、あくまで参考値だが、東京女子医大の給与が低いことに変わりはない。」とのことです。

 東京女子医大の30歳の医師の基本給は25.9万円で、医師の平均的賃金から見ると低賃金です。そこで週に1日の「研究日」に「外勤」することが大学当局から認められていたそうです。この外勤によるアルバイト収入で生活費を補てんしていたところが、今年2月、この研究日が廃止されたのです。

この事態をスクープした岩澤倫彦氏(:ジャーナリスト)の『東洋経済』の記事を引用します。

東京女子医大の経営統括部が、教授ら管理職に対して配布した学外秘の資料を筆者は入手した。そこに記されたポイントを要約すると、次のようになる。

・「研究日」に医師の「外勤」をあてる慣例があったが、国が推進する「医師の働き方改革」に合わせて、今年3月末で廃止する

東京女子医大に勤務する医師は「週39時間」の労働義務を負う

・「外勤」を継続する医師には「週32時間」勤務の選択肢を用意するが、給与は相応の水準とする


 研究日の廃止によって、医師には2つの選択肢が与えられた。
 まず、「週39時間」勤務を選ぶと、外勤をしていた1日分を東京女子医大で働き、現在と同じ額の本給が支給される。ただし、外勤で得ていた1カ月あたり32万~40万円分がなくなるので、そのまま減収になる計算だ(あくまでも概算。医師の経験や技量によって、外勤先からの収入はさまざま)。

 一方、週1回の外勤を継続すると、これまでどおり1カ月あたり32万~40万円の収入は確保できる計算だが、毎週1日分は本給から引かれてしまう。

いずれにせよ、どちらを選んでも、現在より収入が大幅に減ることは間違いない。

研究日の廃止は、働き方改革に名を借りた、人件費のコスト削減が真の目的なのではないか?」引用以上

 これまでの週32時間労働が39時間に延長されました。基本給25.9万円が39時間労働になっても変わらず実質上の賃下げになったのです。希望する人は週一回のアルバイトはできるのですが、「給与は相応の水準とする」と決められました。どのように減額されるか定かではありませんが、ここで「週32時間勤務」を選択すると週7時間分の賃金がカットされるとして大体の試算をしてみます。
 月約21.3万円となり約46000円のカットです。一人当たり月46000円の賃金カットは病院経営者にとって大きな人件費コストの削減になります。ここで医師の60%が「週32時間勤務」を選択すると仮定して削減額を概算してみます。東京女子医大3つの大学病院の医師数は合計すると1322人です。退職した医師が100人として、単純計算で一年1222×46000×12×0.6≒約4億円のコスト削減となるのです。

 では「週39時間勤務」を選択した場合にはどうなるのでしょうか。基本給は25.9万円で変わりませんが、労働時間が7時間増えますから約21%実質的な賃下げになるのです。角度を変えていえば、「39時間勤務」を選択した医師労働者は従前と同じ賃金で21%多くの労働を義務づけられるということなのです。同大学は昨年も看護師のボーナスゼロ回答で問題になりました。厳しい賃金抑制を行っています。今度は医師の賃金カットで100人超を退職に追い込み、賃金源資を削減しただけではなく、残った医師に100人分の仕事をカバーすることを強いているのです。

 岩澤氏は研究日の廃止は、働き方改革に名を借りた、人件費のコスト削減が真の目的なのではないか?といっていますが、そのとおりだと思います。それと同時に「東京女子医大に勤務する医師は『週39時間』の労働義務を負う」とされたわけですから、通常の労働時間を7時間延長し、その時間に減員した医師の仕事を引き受けさせることができるようにしたというわけです。

東洋経済から一部引用します。

「東京・新宿区に位置する東京女子医科大学病院。「本院」と呼ばれ、国内最大規模の1193床、医師数は831人と公表されている。この本院に勤務していた内科の医師、約170人のうち50人以上が、今年3月末までに退職した。

内科の3割以上が去ったことで、残された医師は当直業務が一気に増えたという。当直後、そのまま翌朝からの診療を担当するので体力的な負担は大きい。これが長期化すると、通常診療にも影響がでてくる可能性が懸念される。このほか、外科の医師も10人以上が辞めている。

東京・荒川区にある、東京女子医大の東医療センターは450床。医師数258 人の2割にあたる、約50人の医師が退職した。

東医療センターは、足立区に新しい病院が建設され、今年度中に移転する予定だが、働く医師が足りなくなる事態も懸念される。

 千葉・八千代市にある八千代医療センターは、501床で医師数233人。救命救急センターなど、地域の重要な拠点病院だが、ここでも相当数の医師が退職していた。(3病院の病床数と医師数は公式HPから引用)

 東京女子医大3つの附属病院を合わせると、実に100人以上の医師が減った計算になる。今年度に採用した医師は、この数に到底及ばないという。」

東京女子医大経営者の反論
 
 『東洋経済オンライン』のスクープ記事はインターネット検索すれば見られます。この報道にたいして東京女子医大は2021年04月20日づけで反論をプレスリリースしました。


【患者及び本学関係者の方々へ】東洋経済オンラインによる本学に対する偏向報道について

              令和3年4月20日

患者及び本学関係者の方々へ


東洋経済オンラインによる本学に対する偏向報道について


東洋経済オンラインの報道において今年3月末に医師が大量退職し、本学の附属病院の運営に支障が出ているかのような報道がなされました。事実と全く異なる偏った内容の報道であり極めて遺憾であります。

3月の退職者数は、ほぼ例年通りの退職者数であり、特に診療に支障をきたすような事態が発生したという事実はございません。一般診療は通常通りおこなわれ、また、新型コロナウイルス感染症に対する診療も十分に対応できております。

関係者すべての方々におかれましては、偏った報道に惑わされることなく、どうかご心配のないようお願いいたします。


以 上


 26日のスポニチアネックスによると、同大総務部広報室は「事実と異なる偏った報道内容で誠に遺憾です」と報道内容を否定し、医師不足などが発生しているかどうかについて「不足はしておりません。診療には特に支障を来しておりません」と答えたと報じられています。

 『東洋経済』の岩澤氏の記事では、医師の一斉退職に関して、東京女子医大の広報室に質問状を送ったところ、「回答できない」という返事だったとのことです。

 東洋経済の記事は複数の関係者のインタビューによる諸事実が紹介されており、東京女子医大労働組合の顧問弁護士の大竹寿幸氏は賃下げは「不利益変更」と指摘しています。
 けれども医師労働者の賃下げに反対する運動が、労組からも医師個人からもつくられていないために100人退職問題はうやむやにされかねません。
 
大学経営者はまったく反省の色なし

東洋経済』にたいする先の大学経営者側の反論は「今年3月末に医師が大量退職し、本学の附属病院の運営に支障が出ているかのような報道がなされました。事実と全く異なる偏った内容の報道であり極めて遺憾であります。」というものです。
 運営に支障は出ていないにもかかわらず、支障が出ているかのようにいう報道は偏っている、というのです。
 しかし、実態は、経営者が医師労働者に長時間労働を強いて運営に支障が出ることをおさえこんでいるだけなのではないでしょうか。コロナ危機のなかで病院の医療スタッフが医師の人数を減らされ、長時間労働と労働強化に耐えて働いているから病院は何とか運営されているのです。東京女子医大労働組合のホームページに投稿している医療スタッフの現場の声をみると、経営者の賃金抑制の施策に怒りのマグマが沸騰しています。新型コロナ危機が深まるなかで、これからも運営に支障がでない保障はないのです。
 東京女子医大の労働者は、賃金削減・長時間労働・労働強化反対、「研究日」廃止反対、働くひとを犠牲にした設備投資反対を掲げて団結してがんばってほしいと思います。

日本労働運動の再生強化を願い闘う組合員より