投稿[9]医療体制の変革・再変革を

医療のなかで考えること

 何とか、COVID‐19感染減少の兆しが見えてきたようです。PCR検査や抗原検査、さらには抗体検査も次々と施行されることになりつつあります。日本についてはPCR検査の低い割には死者数が少ないことを評価する外国の動きも出ているようです。ロックダウンを行なわず自粛、自粛の掛け声で乗り切ることができると、結局政府は、中小零細企業には法的な裏付けがないから、そこまでの補償はしなくていいとするのでしょうか。私には「自粛」という言葉にいいイメージはありません。法的な裏付けがなく、隣組でお互いを監視するイメージだからです。東日本大震災において強調された「絆」という言葉にも私自身は抵抗を感じていました。個人的な言葉に対するイメージに過ぎませんが。

 新型コロナウイルス(COVID‐19)感染については、これでもか、これでもかと連日テレビ・新聞・インターネットで詳報されていますので、十分ご存知と思います。したがって、私の送信する情報にも陳腐なものが多いと思いますが、私としては数か月前に誰がどう言っていたのか、ということを含めた過去と今との比較のためにも、ちょっと前の情報も入れて、この原稿を書くようにしています。

 日本人はすぐ忘れてしまう傾向があります。いや日本人だけではなく、余りに急速な変化が起こっていると、世界中がたったひと月前の状況も忘れざるを得ないことになっているのだと思います。WHOの事務局長も、自分が語った言葉を都合よく忘れているようです。お疲れとは思いますが、情けない話です。このへんもチェックしています。


 もう一言。日本の医療提供体制の件です。

 COVID‐19問題が起こる前に、全国424の公的病院の見直しが大きな話題になったことを覚えていらっしゃるでしょうか。公的病院の恥部についての私の文章はただ今中断しています。

 私の想像では、公的病院の幹部は、ある意味胸をなでおろしているのではないかと思います。公的病院の重要性が増しているからです。具体的には、病院を整理統合して集約すると、そこに一人COVID‐19感染が起こればすぐにクラスターとなり、その中核病院は閉鎖せざるを得なくなる、つまり病院というのは非効率とはいえ分散させておくのも意味があるということになります。そしてそれぞれの病院は住み分け・任務分担をしていくことです。

 これは私の持論ですが、病院というのは快適に過ごすところではない、豪華なホテルである必要はない、したがって地震で倒壊しない程度の骨組は必要だが、安普請でいい、医療の進歩は急速なので検査機器もすぐに更新する必要があるから、建物はすぐに建て替えられ得る構造であるべきだ、と思います。感染症が主体だった時代には、豪華なホテルのような病院はなかった。豊かな長寿社会になった、抗生物質の発見・進歩によって「感染症」は過去の病気になった、慢性疾患が重要になったがゆえに病院はそこで楽しく暮らせるような施設であるべきだ、という考え方が顕著になったわけです。その揺り戻しです。我々はもう一度、医療を見直す必要があると思います。

 AIの利用や、遠隔医療などの新しい医療のみならず、上記のようなパラダイムシフトの見直しも必要になります。そこでは旧態依然たる日本医師会厚労省既得権益は否定されるべきです。COVID‐19感染によって医療体制の変革・再変革を起こすべきだと思います。今病院は危険ということで、人々が近寄らなくなっています。クリニックなど開業医の先生の外来患者の急減を嘆くメールも多く見られます。14日毎に再診していた患者さんが30日や60日・90日処方を要求すると嘆く医師もいます。しかしながら、それはある意味で正常な反応でもあります。

 私も糖尿病患者さんにはひと月ごとにHbA1cを見ては食事などの注意を促すので毎月来院してもらっていますが、高血圧や脂質異常症においてはこちらから90日処方を勧めています。お互いに感染が怖いからです。

 COVID‐19感染が終息したとき、医療の世界にも大きな変化が来ているのではないでしょうか。では。

5月16日
ペンギンドクター