[63]投稿 新型コロナウイルス(COVID‐19)情報その11

ペンギンドクターより

新型コロナウイルス(COVID‐19)情報その11

 順不同にてCOVID‐19情報をお伝えします。

●「軽い風邪」の経験が免疫に?……注目される「交差免説」                 

2020年6月13日(土)配信 読売新聞 

新型コロナウイルス感染症が昨年末、武漢市で確認されてから5か月が過ぎた。この間、ウイルスは全世界に広がったが、日本を含むアジア地域で人口当たりの死者が少ない理由に着目し、解明する研究が盛んになっている。(新型コロナ取材班 木村達也、鬼頭明子)*ペンギンドクター注(一部省略あり) 

◍「家に靴を脱いで上がる」から少ない? 
日本は人口当たり死者数が7人で欧米に比べて数十~100分の1である。 
一定の成果を上げた理由には、「キスや握手の回数が少ない」「手洗いやマスクの習慣がある」などの文化的要因、医療の質の高さ、軽症のうちに医療機関にかかりやすい国民皆保険制度、都市の清潔度まで、様々な指摘がある。だが、人口比の死者が少ないのは中国や韓国、インドも同じだ。イランを除くアジアはほぼ同水準で、国民性や医療環境では説明できない。

◍BCG接種との関連は? 
今年3月、結核予防のBCGワクチンを定期接種している国では「患者や死者が少ない傾向がある」という論文が発表された。欧米は結核患者が少なく、感染率が高いアジアやアフリカは接種が奨励されている。 
BCGには免疫力を高める物質を増やす効果もあるとされ、接種した子供は結核以外の呼吸器感染症や敗血症の発生率が4~5割少ないとする研究もある。 
ただBCGの定期接種を行うブラジルやイランは人口比の死者が多く、1980年代半ば以降行っていない豪州は低いなどの矛盾もある。イスラエルの研究では、BCG接種と新型コロナウイルス感染症の発症率に関連は見られなかった。

◍「人種の違い」が理由? 
研究候補の一つが白血球の血液型とも言われる「HLA(ヒト白血球抗原)」の違いだ。HLAには多数の型があり、ある型の人はエイズウイルスに感染すると短期間で発症するなど、感染症に対する体の反応に差が出る。 
国際的に連携し、アジアや欧米を含めた集団間で遺伝情報の比較をしたい。 
一方で、人種の差では説明できない現象も報告されている。米国で死者に占める黒人の比率は18%(人口比約13%)、アジア系は11%(人口比同6%)で、アジア・アフリカ系は人口比に対して死者が多い。人種より所得格差の影響が大きいという指摘もある。

◍初のウイルスと認識せず? 
過去に新型に似た弱毒のコロナウイルスが流行した結果、新型に対する免疫もある程度ついたとする「交差免疫説」だ。 
新型ウイルスの流行前から米国で採取・保存されていた血液を調べた研究では、約半数から新型を認識する免疫細胞が検出できたという。似たウイルスで交差免疫が起きた可能性を示す成果だ。 
アジアで過去に新型に近いウイルスの大きな流行があり、欧米人よりも強い交差免疫がついていたとすれば、人口比の死者の差に説明がつく。 
アジアで交差免疫の本格的な研究はこれからだが、示唆する研究はある。 
東京大学児玉龍彦名誉教授らが新型コロナウイルスの軽症患者の血液を調べると、まったく新しい病原体に感染したときに初期にできる抗体が増えにくいことがわかった。この抗体は、国立感染症研究所が発症から9~12日たった患者21人を対象にした調査でも、1人しか陽性にならなかった。過去に別の似たウイルスに感染して免疫がつき、新型を初めてのウイルスと認識しなかった可能性がある。  


いかがですか。この最後の「交差免疫説」についてもっと詳しくみてみましょう。余計なことですが、上記の児玉龍彦氏は40年余り前、私が都立駒込病院の病理科で仕事をしていた時、彼は肝臓科にいて一緒に肝臓のカンファレンスをしていました。私は記憶していますが、彼は覚えていないでしょう。

●東アジアで死亡率が低い背景に「SARS‐X」? 国内陽性者IgM抗体の反応鈍く、東大先端研・児玉氏らが研究       
レポート2020年6月9日(火)配信小川洋輔(m3.com編集部) 

日本人の一定数は新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)に似た中国由来のウイルスによる感染症に既に罹患していた?――  

東京大学先端科学技術研究センター名誉教授の児玉龍彦氏は、東大病院などで実施してきた新型コロナウイルスSARSCoV―2)の抗体検査で、IgMの反応が遅い患者が多かったことから、日本の死亡者数が欧米と比べて少なく抑えられている要因として、上記のような仮説を掲げている。精度の高い抗体検査を広く実施することで、感染状況を把握するほか、重症者はIgMの数値が高くなる傾向が見られたことから、治療や隔離の必要性を判断する材料にもなるという。――中略―― 
児玉氏らが取り組んでいるのは、検査結果のノイズを下げるためウイルスたんぱく質を磁気ビーズの表面にコートし、結合したIgG、IgM、IgAを化学発光で定量的に測る方法で、中国・武漢に突貫工事で建設された火神山病院で日本のJSR製のビーズで開発された。 
厚労省による性能検査で偽陽性が相次いだとみられているイムノクロマト法による簡易検査と比べて、偽陽性が少ないのが特徴で、2019年以前に採取した100人分の血清で陽性はゼロだった。定量的に抗体価を測ることもできる。

重症例ではIgMが上昇  

東大病院などで実施した予備検討の結果、PCR検査の陽性者19例のうち16例はIgG陽性となり、PCR検査の陰性者19例でIgG陽性となった例はなかった。発症推定から9日目には9割以上のIgG陽性が観察されたが、それ以前ではIgG陰性となる可能性があるという。 
一方、PCR検査の陽性者でも、IgMは、半数程度の例で、感染後早期には高値にならなかった。児玉氏は「一般的な感染症と比較して、新型コロナウイルスIgM反応は多くの人で遅く、鈍い。既に部分的な免疫記憶があると考えると説明しやすい」と指摘する。  

そこで、児玉氏が注目しているのが東アジアでの重症化率、死亡率の低さだ。「コロナウイルスには、4種の風邪コロナウイルスSARSやMERSを引き起こすウイルス、コウモリのコロナウイルスなど、さまざまなファミリーがあり、絶えず進化している。中国経済の急激な成長と交流の拡大により、日本にもこの地域の多くのコロナファミリーウイルスが入っていることは間違いない」と説明。いわば「SARS-X」のようなウイルスが、SARSが流行した2003年以降、東アジアの各地で広がり、交差するコロナウイルスファミリーへの抗体を持っている人が一定数いる可能性があるという。ただ、そうした人々もCOVID‐19に罹っていることから「免疫パスポートのような完全な免疫ではない」とも指摘している。 
また、「重症例と軽症例を比較すると、重症例では、IgMが早期から上昇する」という特徴も見られたため、重症化する患者は、交差免疫を持っておらず、またIgMの早期測定で、重症化の恐れのある患者のトリアージに活用できる可能性もある。  


いかがですか。私は「納得できる。なかなかいいぞ」と思っています。