ペンギンドクターから その3
●いかがですか。COVID‐19感染は世界中に広がっています。当然日本でも多くの人が感染したはずです。しかし、抗体検査では、感染した人が少ない、これはなぜか。
次の記事が「女性セブン2020年7月16日号」に出ています、あるいはまもなく出るはずです。
NEWSポスト 2020年7月3日 16:05
●コロナ抗体「2~3ヶ月で激減」衝撃データ再感染リスクは!
新型コロナウイルスの再拡大が止まらない。週100万人規模で感染者が増え、6月末には全世界の感染者は1000万人、死者は50万人を超えた。中国、ドイツの一部都市ではロックダウンが再び始まった。日本でも緊急事態宣言が解除された後に各地でクラスターが発生し、東京都では連日50人前後の新規感染者が出る事態が続く。感染経路が追えない感染者も多く、再び外出制限が必要になる懸念もぬぐい切れない。
そんな中、新型コロナウイルス発生地の中国で衝撃的なレポートが発表された。
6月18日、英医学誌『ネイチャー・メディシン』に中国・重慶医科大学などの研究チームによる論文が掲載された。
「新型コロナウイルスの抗体は2~3ヶ月経つと急激に減少する」
研究チームは、今年4月上旬までに重慶で新型コロナウイルスに感染して症状が出た患者37人と、症状が出なかった患者37人について、抗体の量の変化などを調査した。それによると、感染後しばらくして作られる「IgG抗体」が80%以上の人で検出された。しかし、退院から2カ月後には、抗体が検出された人のうち、症状があった人の96.8%、無症状の人の93.3%で抗体が減少したことが判明した。減少割合は、半数の人で70%を超えたという。
ーー中略ーー
「たとえば、麻疹の抗体は生涯にわたってあまり減少せず、免疫が持続します。だから麻疹は一度感染して抗体ができると、再感染しにくい。しかし、新型コロナウイルスはそういうわけではないということでしょう。」
国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんは続ける。
「新型コロナの抗体が減少する理由はよくわかっていません。ただ、同じRNAウイルスであるインフルエンザの場合も同様に減少します。また、感染者の年齢によって、抗体の下がり具合は異なるようです。今回の研究結果通りに抗体が減少するなら、再感染のリスクが高いことになります。特に若年者の抗体が消えやすいとされるので、若者の再感染に対し警戒が必要です。無症状の若者がウイルスを蔓延させる危険性があります」
感染が広がる中で、注目されてきたのが「集団免疫」という考え方である
それは、免疫を持つ人が一定の割合に達すると感染拡大に歯止めがかかるというものだ。ただ、収束のためには、全体の60%程度の人が免疫を持つ必要があるとされ、短期間では難しいのが実情である。
以下は「集団免疫」を目指していたスウェーデンの「失敗」について言及しています。――以下略――
●いかがですか。
「女性セブン」も進んでいますね。上記の重慶医科大学の論文は「ケアネット」でも言及しています。
ここでIgG抗体について振り返ります。話を分かりやすくするために、IgMとIgGに限って述べます。
感染症において細菌やウイルスなどが人体に入ってくると、IgMがまず増加します。少し遅れてIgGが増加します。前回児玉龍彦氏の「交差免疫説」ではこのIgMの増加が少なくIgGが高くなるということから、交差免疫説が登場してきたわけです。
一般的にはIgGが高いことは免疫があるということを意味します。言い換えれば、過去に感染したことを意味するわけです。
麻疹などでは一度感染すると、麻疹ウイルスが消えても、このIgGの高値が持続するわけです。つまり免疫が持続するので一生麻疹の心配はしなくていいということになります。
一方、ピロリ菌感染は赤んぼの頃に感染して、持続感染しているので、私たちでもIgGの検査をすれば、高値ならピロリ菌がいることがわかります。しかし除菌すれば、徐々にIgGは下がってきます。約半年で十分低下するのでIgGの値で除菌が成功したと判断できます。さらに一年後二年後とIgGを調べると個人差はありますが、最終的にはIgG抗体は検出不能まで低下します。だからピロリ菌の場合、IgG抗体が陰性といっても、もともといないのではなく除菌後にいなくなったり、胃粘膜がぼろぼろになってピロリ菌そのものが住めなくなって、ひとりでに消滅した場合もあるので、胃の内視鏡チェックが必要になるというわけです。
ということで、抗体検査の場合、偽陽性とか偽陰性とかという検査自体の感度・特異度とは別に、IgG抗体の持続時間の問題が出てくるわけです。
以上から、6月初めに鳴り物入りで施行した新型コロナウイルス抗体検査も、1月や2月の感染の有無については、判定不能ということになります。さらに、このことを敷衍すると、仮にワクチンが来年出来てもその効能について疑問符がつくことになります。もっと言うなら、ワクチンの効能もインフルエンザワクチンと同様に不安定であり、毎年ワクチン接種を行うか、年に二回接種とか、様々なパターンが必要になりそうです。
若い人はともかく、高齢者である我々は、感染したら生命の危険があるので、まずは3密を避けるしかないのでしょう。
子供に新型コロナウイルス感染が少ないことについて、興味深い理論が出ています。それはまた次回。