[191](投稿)寿都町 文献調査反対の署名活動はじまる

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北海道新聞」2020・9・29 の「時代を視る」からの引用です。
 

 核のごみ捨て場と北海道    鎌田 慧


カネを餌 国の常とう手段


いよいよ、北海道での核のごみ問題がはじまる。

 後志管内寿都村につづいて、さほど離れていない神恵内村も、核のごみ捨て場(高レベル放射性廃棄物の最終処分場)候補に名乗りを上げようとしている。

 いままで、手詰まりだった経済産業相は、さっそく、大臣が歓迎のコメントをだした。以前からほかの地域も含めて交渉していたからだ。原発立地探しのときもそうだったが、地域の商工会が誘致陳情の先頭に立つ。政治家や官僚たちから、 地域にカネが落ちる。ビジネスチャンスだ、と吹き込まれると期待が膨らむ。


反対運動を分断


 日本海に面した南に泊原発をはさんで寿都町神恵内村。北の宗谷管内には「幌延深地地層研究センター」があって、分厚い粘土で包んだ地層処分の見本が安置されているが、何百年間で崩壊するのは織り込み済みだ。

 原発や核再処理工場建設もそうだったが、国はいくつかの地域を競い合わせて、反対運動を牽制(けんせい)、分断する。せっかくのビジネスチャンスを逃すのか、という議論が始まる。あるいは、用地買収交渉での価格を抑えられる。

 建設に至る調査は、文献調査、概要調査、精密調査と3段階ある。文献調査に応じるだけで、自治体に2年間で最大20億円の交付金が振り込まれる。概要調査で70億円。この段階では、ボーリング調査などがあっても、まだなにも始まっていない。それで喉から手がでるほど現金が欲しい、過疎地域の首長や議員たちは、「なにも危険なことはないんだから」と住民を説得する。反対論や慎重論が、「カネ縛り」「カネを餌」に賛成に変えられる。

 「カネびたり」「金づけ」「カネ中毒」になった極端なケースが、3億円以上の大金が、福井県高浜町の助役から、関西電力の会長、社長らに還流した事実だ。地域を独占している電力会社に支払われる、各家庭からの電気料金の一部が、原発工事を請け負う建設業者に支払われ、それが発注元の電力会社の重役の元に戻って行く。

 わたしは、1981年に「伊方・金権力発電所の周辺」と題したルポを書いた。その頃、各地の原発をまわると、さまざまな名目でカネがバラ撒(まか)れていた。原子力は金権力だった。

 原爆を体験した日本人には、放射能への恐怖感が根深い。青森県むつ市原子力船「むつ」への漁民の抵抗は激しかった。原発は危険だ、として全国の立地地域で反対運動が起こった。

 高知県窪川町、和歌山県日高町、宮崎県串間市新潟県巻町、富山県珠洲市などで、住民運動原発の進出を止めた。それでも「ふげん」「もんじゅ」をふくめて59基(このうち廃炉が26基)もつくられたのは、結局、カネに押し切られたからだった。


行き先ない猛毒


 日本では、使用済み核燃料を、再処理した後の廃液を、ガラス固化体(ガラスと混ぜて固めたもの)にして最終処分する。廃液は、近づいただけで致死量に達するほど強い放射線を出す。原発稼働からほぼ半世紀がたって、この間に生じた使用済み核燃料はガラス固化体2万6千本分に相当する。全国の原発のプールのなかで、使用済み核燃料が再処理工場への搬送を待って眠っている。冷却できなくなって溶け出せば、大量の放射性物質が直接大気に漏れ出す。

 猛毒の高濃度廃液などの最終処分場を、いまどこでも引き受けなかったのは、きちんとした対策がなかったからだ。原発現地で、電力会社の担当者と構内を歩きながら、「使用済み核料」はどうしますか」と質問すると、えたりとばかり「全部六ケ所村の再処理工場に運びます」と胸を張って答えた。

 青森県に生まれ育ったわたしは、70年から「巨大開発計画」に翻弄(ほんろう)された六ケ所村を取材してきたのだが、「核燃料サイクル」計画は、秘密にされ、84年まで隠されていた。(拙書『六ケ所村の記録』)。再処理工場は93年4月に建設開始したが、27年たっても完成していない。「日本原燃」は、再来年には完成するとして今夏、25回目の計画変更を発表したが、根拠はない。田中俊一前原子力規制委員長も、核燃料サイクルはウソだ、と断言している。政府が最終処分場の決定を急ぎだしたのは、原子力政策の破綻が明らかになったからだ。

 北海道の大地が、カムイの大地が、核廃棄物の最終処分地として狙われてきた。無害化されるまで10万年とも言われている。泊原発の廃棄物も捨て場がない。では、どこが引き受けるのか。それはだれもいえない。それでも、毎日、素知らぬ顔して、原発が稼働し、稼働させられようとしている。としたなら、日常的に猛毒を発生させる 稼働を止め、未来を真剣に考える議論をはじめなければならない。(ルポライター



※※※ 石川木鐸のコメント

 これまで、手早く泊原発周辺の地域が矢継ぎ早に、町長や村長や商工会の面々が、文献調査に手を挙げたのは、鎌田慧氏も指摘するように、そして北海道鈴木知事が言った「頬を札束でたたくやり方だと批判した」ことと同様に、カネに誘引されたのでしょうね。

 木鐸(ぼくたく)も、同様に考えていました。そして、何よりも政府は、溜(た)まりに溜まった「高レベル放射性廃棄物」を「六ケ所村の再処理工場の稼働のめどが立たない」ので、どう処分していいか分からない「核のごみのサイクル」政策の破綻を救う神様を探していて、全国の「適地」の市町村長等に密かに呼びかけており、政府と諸町村とが「相思相愛」になるために、カネが媒酌人になりました。

 しかし、すでに寿都町などでは反対の署名活動が行われ始めました。片岡寿都町はすぐさま「最終処分場反対」の署名活動と誤解し、「文献調査に反対の署名活動だ」と署名活動をしていた方から説明を受け、受け止め方が間違っていたと大慌てで火消しに回り、「誤解だった」と弁明しています。

 反対の署名活動は、本質的に文献調査だけでは終わらないと町民の皆様が直感し、最終処分場になることを恐れているからだと思います。おそらく、遅かれ早かれ神恵内村でも寿都の例が参考になって署名活動などの反対運動が起こるのではないでしょうか。

 原発の稼働を続ける限り「高レベル放射性廃棄物」は増えていき、ますます処分に困るだけです。

 第一に、核のごみを作らない、第二に、猛毒の核のごみを、カネで人を操って、人口減の市町村に廃棄しないということが求められると思います。

 読者の皆様、労働者の皆様、人民の皆様のお考えはいかがでしょうか?