[207](投稿)「学問の自由」という標語だけでは学者諸氏の自由は守れない

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選考に介入、水面下で着々 学術会議任命拒否 法的な根拠曖昧のまま 18年見解でつじつま合わせ
10/07 09:36 更新
 菅義偉首相が日本学術会議から推薦された新会員候補6人の任命を拒否した問題で、政府が2016、17年にも水面下で選考に介入していたことが明らかになった。法的根拠が曖昧なまま介入を続け、推薦通りに会員を任命する義務はないとの「新見解」をひそかにまとめたつじつま合わせの実態も浮かぶ。政府は学術会議のあり方に切り込む姿勢をアピールし、国民の批判をかわしたい考えだが、過去の国会答弁と矛盾は目立ち、野党は追及を強める構えだ。


 内閣府が18年11月にまとめた見解は、首相が「(学術会議に)推薦されていない者を任命することはできない」とする一方で、「推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない」と指摘。「(首相が)形式的に任命を行う」とした1983年の政府見解を大きく変えた。この新見解を基に今回の任命拒否を行ったとする。

 しかし、安倍政権はこれより前から人事への関与を強めていた。16年の補充人事の際に学術会議側が定年を迎えた会員3人の後任を選考していたところ、候補3人のうち2人について難色を示した。17年秋には政権側は交代会員105人を決める際に定員より多い候補者の名簿を示すよう要求、学術会議が応じていた。

■不適格者を選別

 18年の内閣府見解は「首相は任命すべき会員を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命することも否定されない」とも明記。官邸側は推薦された候補から、「不適格者」を任命しないケースを想定していたとみられる。

 政府・与党内には、政治と距離を置こうとする学術会議の姿勢に不満はあったものの、83年の国会答弁が壁になっていた。安倍政権は17年3月に防衛装備庁の研究助成制度を巡り、学術会議が「政府の介入が著しく問題が多い」とした過去2回の声明を継承したことに、危機感を抱いた。会員の人事への関与を強化する方向にかじを切った。

 後任の菅氏も路線を踏襲し、推薦された人をそのまま任命する学術会議の人事を「あしき前例」とみて打破を図った。6日の自民党役員会で首相は「(学術会議は)年約10億円の予算を使って活動しており、任命される会員は公務員だ」などとして、任命拒否は妥当だったと重ねて強調した。政府の強権的な姿勢に批判もあるが、周辺は「国費投入などが明らかになり、世論の空気が変わってきた」と自信ものぞかせる。

■答えられぬ連発

 ただ、多くの疑問点は不明のままだ。6日に国会内で行われた野党によるヒアリングでは、野党議員から任命拒否の理由や、任命過程を開示するように求める声が相次いだが、内閣府職員は「人事に関することなので答えられない」の一点張り。推薦された候補を任命する義務はないとする内閣府見解を巡っては、首相が形式的に任命するとした83年の国会答弁との矛盾が露呈し、任命を見送られた岡田正則早大教授は「法解釈の変更と言わざるを得ない」と指摘した。

 立憲民主党枝野幸男代表は国会内で開かれた党会合で、「法律で決められた解釈を勝手に変えるのは前例に縛られないという話とは全く次元が違う。気に入らない者を排除するのは安倍政権以来続く政治の大問題だ」と批判した。(石井努)

② 自民・船田氏「闇討ちのよう」 「身内」も政府批判

 自民党の船田元・元経済企画庁長官は6日、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題で、政府の対応を批判した。共同通信の取材に「いきなり人事で前例にないことをするのは闇討ちのようだ。手続きに瑕疵(かし)があるのではないか」と述べた。6日までのブログでは、首相の任命を「形式的」とした1983年の国会答弁に触れ「直近まで有権解釈として政府が受け継いできたはずだ」と指摘。任命されなかった6人が安全保障関連法などに反対してとして「『反対するとこういうことになる』と抑止効果を狙ったものとしか見えない」と強調した。

③ 「説明なければ違法」 学者指摘

 菅首相日本学術会議の新会員候補6人の任命を拒否した問題で、政府は憲法を根拠にしたと説明する一方、個別の人事にかかわるとして理由を明かしていない。6人は政府の方針に批判的な主張をしていたためとの見方もあり、憲法学者は「公的に説明できない理由で任命拒否することは違法だ」と指摘する。

 政府が首相の任命権の根拠とするのは、「公務員の選定、罷免は国民固有の権利」と定めた憲法15条1項。特別職の国家公務員である日本学術会議員も対象になる。

 加藤勝信官房長官はこれまでに記者会見で、繰り返し憲法15条に触れ「首相が学術会議の推薦通りに任命しなければならないというわけではない」と強調。ただ、国民の権利が首相の任命権につながるのか、十分な説明はない。

 東京都立大の木村草太教授は「憲法15条は、国民主権の原理に基づき公務員の選定を国民固有の権利と宣言した条文。国民の代表である国会が指名した首相が任命すれば、間接的に国民が選んだと言える」と解説。ただ「15条を持ち出しても、今回の任命拒否の適法性は説明できていない」と話す。  
 さらに「(内閣は)法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌握する」と規定する憲法73条4号から、「首相の任命権は法律にのっとって行使しなければならない。恣意(しい)的な任命権の行使は、日本学術会議法に違反し、ひいては国民の意思に反すると言う。 
 木村教授は「研究、業績は自律的に評価すべきだ。通常では考えられないような異常事態でもない限り、任命拒否は許されない。『公にできない』として政府が具体的な説明をしないならば、任命拒否は違法だと考えざるを得ない」と批判した。 
 慶応大の横大道聡教授は、内閣に行政権を与えた憲法65条などを根拠に「内閣の手が一切及ばない行政組織を創設することも憲法上問題がある」と指摘。「首相が持つ任命権は完全に形式的なものでもなければ、反対に全く自由裁量であるとも言えない。裁量はあるが、かなりの程度限定されると理解すべきだ」と話す。 
 その上で「状況からすると、6人は政治的な見解や活動歴を理由に任命拒否されたとしても仕方がない。政府が『そうでない』ことを説明しなければ、裁量権の行使に逸脱や乱用があったとされる可能性がある」と述べた。

④ 北教組「蛮行」 6人任命求め声明

 日本学術会議の新会員候補の6人の任命を菅首相が拒否した問題で、北大教職員組合は6日、任命拒否を「蛮行」と批判し、6人を任命するよう首相に求める声明を発表した。 
 任命を拒否された6人は安全保障関連法案や特定秘密保護法などに反対姿勢を示しており、政府の政策に批判的なことが拒否の理由ではないかと指摘されている。 
 声明は「政権の考えに一致しない意見表明を行わないような学術会議は存在意義を失う」と強調。「他者の批判を許さない独断的な政権は、やがて息詰まることは歴史の教訓だ」と訴え、政府に対し、任命しなかった理由のも求めている。

⑤「学問の自由を侵す」 日本劇作家協

 日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題で、日本劇作家協会日本新劇作者協会は6日、「不当な介入があったとすれば、憲法が保障する『学問の自由』の侵害になります」として、人事決定の経緯を明らかにするよう求める声明を発表した。 
 声明は、今回の問題が「将来的に、学術や芸術への政府の過度の干渉の引き金となり、また表現・言論の自由への侵害へと発展していくことを私たちは危惧します」とうったえている。

⑥ 読者の声 任命拒否問題 戦前を想起

  北大名誉教授 三島徳三 77 (江別市

 日本学術会議の新会員候補6人が任命拒否された問題が波紋を広げている。 
 同会議の会員は、かつては分野ごとに科学者の直接選挙でえらばれていた。1983年からは研究分野ごとに関連学会から推薦を求め、学術会議会長がリスト化して首相に任命を求めるようになった。 
 任命が形式的なものであることは、同年に政府側が国会で答弁している。これまで任命を拒否された者は1人もいない。 
 菅首相は推薦者105人のうち6人を、拒否した6人は、憲法歴史学など人文・社会科学の6分野にわたる。報道によると、6人は安保法制や特定秘密保護法などに学問的立場から反対の意思を示してきた人たちという。政権の意向に沿わない学問的見解は認めないとの意思表示なのか。そうだとするならば、憲法で保障された学問の自由は死んだも同然である。 
 学問の自由への干渉が、全体主義につながった戦前を想起せざるを得ない。



 ⑦ 社説 学術会議人事 首相の説明成り立たぬ

 菅首相が科学者の代表機関「日本学術会議」から推薦された新会員候補6人を任命しなかったことについて、北海道新聞などのインタビューに見解を示した。 
 だが到底納得できるものではなく、説明になってない。 
 6人が安全保障法制や「共謀罪」法など安倍晋三前政権の重要施策に反対したことは「一切関係ない」とした一方、任命拒否の個々の理由は明らかにしなかった。
 1983年、人選方法を学者による選挙制から現在の首相任命制に法改正した際、当時の中曽根首相は「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と述べていた。

 理由も示さず一部学者を排除することは憲法23条が保障する「学問の自由」と、学術会議の独立性を脅かすものだ。

 首相はインタビューで「推薦された方をそのまま任命する前例を踏襲してよいか考えてきた」と述べ、任命拒否は自らの判断だったと事実上認めた。

 省庁再編の際の議論を受け「(学術会議に)総合的、俯瞰的(ふかんてき)な活動を求めることになった」とも述べたが、任命拒否とどうつながるのか、まったく説明はない。

 さらに学術会議には年間10億円の予算を拠出し、会員は特別公務員に当たると強調し、現在の推薦方法は「現会員が公認を指名することが可能」として、見直しが必要だったとの認識を示した。

 では何が問題なのか。具体的に示して、国会で議論すればよいではないか。

 学術会議は先の大戦で学者が戦争にかかわった反省から、政府から独立して政策提言をしてきた。時の政権が人事を握り、運営に影響を与えることがあってはならない。

 加えて問題なのは安倍政権から政治介入が始まっていたことだ。

 2016年の補充人事の際、選考の初期段階で学術会議が上げた候補に首相官邸が難色を示し、一時欠員状態となっていた。
 
 17年の会員交代時期には、官邸側が定員より多い名簿を示すよう求め、学術会議が応じていた。

 双方とも一連の経緯をつまびらかにすべきだ。

 政府は、学術会議の推薦通りに首相が任命する義務はないとする内閣府見解をまとめた18年の文書を公開する一方、83年の法解釈は変更していないと説明している。

 矛盾しているのではないか。

 前例のない検察官の定年延長を決めた時と同様、法の恣意的(しいてき)運用が過ぎる。まずは任命拒否を撤回するのが筋である。

                        以上は北海道新聞とそのデジタル版(2020・10・7)からの引用です。


※※※ 骨川筋衛門のコメント


 基本的には、戦前の学者の戦争への「加担」を反省し、学者の政治との関係の在り方を問い、政治と一定の距離を取ろうとして「発足」したのが「日本学術会議」でした。しかし、1883年に中曽根に「引き込まれ」、「人選方法を学者による選挙制から現在の首相任命制に法改正した」ことから、変わり始めたといっても良いと考えます。

 実際には、安倍内閣のとき、内閣府が18年11月にまとめた見解は、首相が「(学術会議に)推薦されていない者を任命することはできない」とする一方で、「推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない」と指摘。「(首相が)形式的に任命を行う」とした1983年の政府見解を大きく変えた」。このことが大きく響いて、菅は「この新見解を基に今回の任命拒否を行った」と言うわけです。

 菅が官房長官であったとき、何人の官僚が左遷されたのでしょうか?あるいは、安倍が首相の時、検察庁長官の定年延長までやり、「かけそば、もりそば、さくら」などの問題をもみ消そうとしたことも忘れてはならないと思います。

 その安倍の姿を見習って、今回「学術会議」の「人選」に菅は土足で突っ込んできたということです。


「学問の自由」という「標語」だけでは、日本学術会議の多くの学者諸氏の「自由」は守れないと思います。

 学問と言えど、「イデオロギー」です。「真理」といえど、「その時代の土台に立っている」「上部構造」です。この資本主義の「土台」を見つめ、その上にある・「上部構造といわれる」ところの「学問・研究・意見・見解」と言う上部構造は、下部構造に規定されて「展開していく」と考えます。
 また上部構造の展開は、下部構造に反作用していくと思います。
 
 いわゆる「学問の自由」という概念をもっと深く考え直していき、その上で、新しい「学問・研究」を創出することを目指さない限り、現状の「日本学術会議」だけでは、一致団結は壊され、歪みだけが残り、未来の、「新しい・日本学術会議」の創生はなくなってしまうのではないかと考えます。
 学術会議任命拒否問題は、現政権の圧力・悪政を撥(は)ね退けていく「新しい見解と政府に対する反対運動の必要」性を問いかけていると考えます。

 

 読者の皆様、諸学を探求している研究者・学者の皆様、技術者の皆様、学生の皆様、人民の皆様、皆一致団結して、菅官邸の種々の圧政を撥ね退け、新しい世界を目指してお互いに進もうではありませんか!!