[293]新型コロナ危機のなかにある現代世界━━その1

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管理人より

 新型コロナ危機下の世界の状況をみて感じることを書きます。12月13日の朝日新聞朝刊の「共生のSDGs コロナの先の2030」シリーズで報道されたことを参考にします。


その1 ドイツ


ドイツでは店によっては1キロの骨付き豚肉が約6ユーロ(約760円)で買えるそうです。この安い肉について朝日の記者は次のように書いています。

「安い肉を卸すには、製造段階でなるべくコストを抑える必要がある。その仕組みを根底で支えているのが、低賃金で長時間働く移民労働者たちだ。」

 確かにそうですね。記者は肉の価格が安いことの裏側には移民労働者の低賃金長時間労働があることを明かにし、コロナ危機のなかの移民労働者の過酷な現実に焦点をあてています。

 ドイツ西部レーダウィーデンブリュックの食品会社テニエスの食肉工場で今年6月、1400人の労働者が新型コロナウィルスに感染しました。約7400人の労働者のうち3分の2がルーマニアブルガリアポーランドなど中・東欧を中心とした国々からの移民です。工場は約一ヶ月稼働を停止し、労働者家族は隔離され、工場がある郡の店舗や学校も一時閉鎖されました。

 感染が広がった要因は、工場で長時間密集して働き、家は狭い部屋で家族が暮らしていたことにあったようです。勤務シフトのずれを利用してベッドを共用で使っていたところもあったそうです。

 テニエスの工場は国内市場の30%のシェアを占めるドイツ最大の食品会社です。10月に記者がこの工場で働くポーランド出身で勤続20年の50代の男性労働者にインタビューしました。週6日一日10時間以上、室温4~6度の中で豚を解体し続けています。「肉体的につらいが、ここ10年、昇給していない」といいます。
同地のカトリックの神父は移民労働者の実態を知り、「現代の奴隷制の構造は変わっていない」と話しています。それでも例えばブルガリアの3倍は稼げるので移民労働者たちはドイツで働きつづけざるをえないのです。

 資本主義社会の「賃金奴隷」としての労働者階級の過酷な現実が、彼らが新型コロナに感染してはじめて「社会問題」としてクローズアップされたということです。

 テニエスでの集団感染は食肉工場で働く移民労働者の労働の実態をうきぼりにしました。

ドイツ政府は食肉業界の労働者を守る法案をまとめたそうです。「従業員50人以上の食肉加工会社には労働者の直接雇用を命じ、勤務時間や住環境の厳重な管理を求め」来年1月から施行されます。日本政府の自己責任論とは違うようですね。

 しかしあくなき利潤を求める資本家は法の抜け道をさがすことでしょう。日本の労働組合でたたかう私は、現場で働く労働者の労働条件改善の地道な闘いを願っています。