[338]トランプの反乱

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BBCニュースより
ドナルド・トランプ米大統領は6日、ホワイトハウス前に集まった支持者に対し、大統領選の結果に抗議するため議事堂まで行進しようと呼びかけた。

議事堂では上下両院が選挙人投票の結果を認定する手続きを行っていたが、トランプ氏支持者らが建物内に侵入したため、審議は中断された。

抗議参加者は上院の議場や、ナンシー・ペロシ下院議長の執務室などにも侵入。騒乱の中で死傷者が出ている。」(1月7日BBCニュース)


連邦議会議事堂にトランプ支持者が突入したことにたいして、バイデン大統領をはじめとする民主党だけではなく共和党の内部からも民主主義の破壊だと非難の声があがっています。メディアもこぞって民主主義の破壊として報じています。
いわゆる「独裁」の対立的概念としての「民主主義」は、階級を超えて護るべき「健全な社会」の規範として「普遍性」をもつものとしてあつかわれています。「トランプの反乱」は民主主義という「普遍的」なイデオロギーにもとづく支配秩序の破壊として非難されているのです。
けれども大統領選でアメリカ国民を二分したトランプとその支持者の非合法の行動は、没落帝国アメリカの「不安」の爆発としてとらえなければなりません。また、この事件は、アメリカの支配階級による伝統的な議会制民主主義というかたちの統治形態の翳りを意味しています。
グローバル資本主義はラストベルトに象徴される多くの失業者を生みだしました。増大した貧困層の劣悪な生活環境、労働環境に新型コロナウイルスが直撃しています。貧困と病いに苦しむアメリカの多くの労働者・民衆は、偉大なアメリカをとりもどせ!というスローガンを掲げるホラ吹きトランプに「希望」を託して支持せざるをえないのです。これはアメリカ労働者階級の悲劇です。


民主主義の虚妄

大統領選投票者の半数近くの人々に支持されたトランプは、実は自分が選挙に勝利したのであり、自分こそ偉大なアメリカをとりもどすことができると思い込んでいるのです。このトランプが主導した議事堂占拠行動は、民主主義なるものの脆さと虚妄性を明らかにしました。トランプの扇動に命がけで呼応する人々が議会機能を一時止めたという事態は、アメリカ社会が「民主主義」のベールを脱ぎすてた強権的な独裁政権の登場を忌避しない一面をもつにいたったことを物語っています。アメリカ的ファシズムの汽水域のひろがりに警鐘を鳴らさなければなりません。
カジノ化した資本主義大国アメリカはあとにはもどれません。労働組合指導部が企業防衛主義で頼りにならないために失業者・労働者・民衆の不満と不安は大きくなっているのです。
転向スターリン主義官僚が牛耳る資本主義中国に追いこされる没落帝国アメリカの資本家階級と政治エリートは、分断された労働者・民衆の階級的支配をどういう形態で行うか、日本の地で菅政権の強権的統治下で生きる私たちはアメリカの動きをも注視しなければなりません。