[419](寄稿)「広く、薄く」から「選択と集中」へ

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ペンギンドクターから続稿です。

皆様 またまたMRICからの情報を転送します。塩崎衆議院議員の1月22日の意見です。彼の意見はもうお馴染みであり、新鮮味はないかもしれませんが、具体的な数字が出ているので、私は興味深く読みました。「保守系」の政治家すなわち自民党の政治家にもそれなりに勉強し地道な活動を続けている人がいるのはちょっと救われます。「革新系」政治家も「文春砲」に頼らず地道に情報収集とそれによる発信を試みて欲しいものです。
 書棚にある若い時に買った本とともに、最新の新書もたまに購入していますが、駅ビルの書店を見る限りは、本当に信用していい内容なのか躊躇する本があふれていて暗い気持ちになります。私が信頼している保守系の「佐藤優」も、彼の『池田大作研究』を読んで、ちょっと抵抗を感じました。宗教を理解するためには、その「内在的論理」を知る、私なりに言い換えれば、自分の評価を殺して、池田大作の論理を辿っていくことが必要だ、ということはわかりますが、(佐藤優自身はカルヴァン派キリスト教徒ですから、そういう考え方が出てくる)結局それは研究でも何でもなく、池田大作を持ちあげている結果になっていると感じました。つまり創価学会公明党の応援部隊という結果になっているということです。また断片的な情報ですが、日本学術会議委員の任命拒否の問題で情報漏洩があり、それには日本共産党が絡んでいるということで、佐藤優赤旗との論争になっている・・・・・・と知り、佐藤優の論理が菅政権の行為を弁護する形になっていると感じています。
 佐藤優保守系評論家だから当然という考えもありますが、情報収集とその分析には公平であってほしいものです。彼はあの森元首相に重用された外交官です。今回のオリンピックにおける森発言を佐藤優はどうコメントするか、私には別の興味があります。
 と言ったわけで、政治的なことを云々し始めると、泥沼です。この辺でやめておきましょう。
 このところ、一気に暖かくなり、花粉が飛び出しました。私も3日前から抗アレルギー薬の内服を開始しましたが、先ほど朝7時半からの散歩では猛烈な「鼻水」と「くしゃみ」で、大変でした。帰宅して一時間ほどたち、ようやく落ち着いてきてこの文章を書いています。
 島根県知事が聖火リレーの中止を訴えたのは、なかなか骨があると思いました。地元では9割ほど県知事に賛成らしく、竹下派の竹下代議士の「県知事を呼んで注意する」という発言も話題になっていました。竹下さんは県知事選では現知事の対立候補を応援したとかいう話で、そういうことなら、今回のやり取りも納得と言えそうです。オリンピックをやるにしても3月の段階で無理に聖火リレーをすることはないと言うのが、私と女房の実感です。いろいろ聖火リレーには準備とお金もかかるのでしょうし・・・・・・。また政治的なことに逆戻りしました。
 前回、慈恵医大の大木隆生氏の発言を紹介しましたが、大木氏について調べてみました。その上で私のコメントを述べます。
Wikipediaからの抜粋です。
 大木隆生氏(1962年8月12日生まれ)
●1989年慈恵医大卒業・医師免許を取得し、東京慈恵会医科大学第一外科入局。
●1993年医学博士取得。
●1995年米国アルバートアインシュタイン医科大学モンテフィオーレ病院血管外科研究員。
●1998年同病院血管内治療科部長。●2002年同病院血管外科部長
●2005年アルバートアインシュタイン医科大学血管外科学教授。
●2006年~現在、慈恵医大外科講座教授、診療部長
●2007年~現在、慈恵医大外科学講座統括責任者(チェアマン)
●2011年~2017年 銀座7丁目クリニック下肢静脈瘤センター統括医。  

米国では10年余りで無給医から外科教授まで昇りつめ、独自の手術やステントグラフトの開発にも成功したようです。慈恵医大の外科は今は珍しい「大外科」方式で、消化器一般外科、小児外科、血管外科などを含んでいて、約300名の医局員がいるようです。大木氏はそのチェアマンですから、トップであり、権力者でもあるわけです。さらに慈恵医大で対コロナ院長特別補佐も務めています。漫画にも取り上げられていたり、マスコミにもしばしば登場しているらしく、医療界では有名な医師のようです。私が知らなかっただけということでしょう。
 彼の文章をそのまま紹介しておきます。以下の彼の文章は「不急医療の最たるものが健康診断と人間ドックです」というデイリー新潮の記事に対するものではなく、開業医の先生の「アクセスが制限されておらず、医療行為単価(診療報酬)は激安に」という記事に対する返信のようです。つまり、コロナ診療を引き受ける場合の危険と報酬についてのアンバランスに対する開業医の先生に対する返信ということのようです。

 2021年1月25日 投稿者大木隆生 
はい、だれも赤字覚悟で新型コロナ診療をやれ、とは考えていません。
 菅総理には民間が新型コロナ診療に参入した場合、院内クラスター・風評被害対策などのリスクを負うので、インセンティブに加えて前年度売上を補償してもらうようにお願いしました。さらに新型コロナ診療に携わっている医師・ナース個人へ各々月額100万円、50万円の手当上乗せをすることで十三病院の二の舞を回避するようにと。いずれに対しても菅さんはすでに政府が医療支援に拠出した約4兆円に比べたら少額で、実行力があるのならコスパが良さそうなので官僚に試算させ、前向きに考える、と言ってくれました。なので、もう少し見守ってください。 
本来、こうした交渉は日本医師会がやってくれたら僕が矢面に立つこともなかったのですが、、、医療財源確保の話を誰もしないのでやむにやまれず僕が火中の栗を拾った、という事情もご理解ください。今後も医療体制を強化すべく尽力したいです。
 慈恵医大外科 大木隆生  

次に私の考えです。推定を交えながら述べます。
 「デイリー新潮」(私はこの文章を読んではいません)に述べた大木医師の発言は彼自身ですら「しまった!余計なことを言ってしまった」と感じていると思います。そうでないとすれば、大木医師はよほどレセプターのない人です。
 実は私も去年の5月の段階で、「健診や人間ドック」を中止・延期するのは当然だと思いました。しかし、重症者の医療逼迫の今年1月の時点では、問題は異なっています。投稿者:「自分が何科なのかよくわからな医」という匿名の健診・人間ドック担当医の見解は正しいと思います。重症者対策で、健診や人間ドックの医師やナースを新型コロナ診療に回すのは無意味です。むしろ不慣れなことで感染を広げかねない。これは以前私自身の見解を述べておきました。
 前回のくり返しになりますが、大木医師は現状をわかっていない。アメリカで頑張って超一流の血管外科医になったことは認めるにしても、医療現場とコロナ禍での日本の医療について無知であると考えます。慈恵医大外科の医師たちが手術したいのに出来ない、部下の若手の医師の中にはコロナ診療に携わっている人もいて、彼らが「不急医療でしかない人間ドックの医者がコロナ診療をやればいい」などと愚痴っている現状も実際あるのだろうと思います。・・・・・・。 しかし、どうみても大木医師は塩崎衆議院議員に比べてレベルが低い。まずは、重症者医療逼迫の解決には、自分もその一員である大学病院の現状を分析することから始めるべきです。慈恵医大の医師たちが疲弊するほど頑張っているのなら、その数字を出して他の大学、東大などに文句をつけるべきです。それが「大外科」のチェアマンであり、対コロナ対策院長特別補佐の役割でしょう。
 さらに、新型コロナ診療に携わっている医師とナースに100万円・50万円上乗せと菅総理に伝えたそうですが、非現実的です。また自分の名前を出したメールで日本医師会云々と述べていますが、極めて軽率です。文章は残りますし、メールは転送されます。実際私がそれを見ています。下世話に言えば「日本医師会がダメだから俺様が総理に直言した」という文言はヤクザか政治屋の言い方のように思えます。
 大木医師は日本医師会についてもよく知らないのではないかと思います。日本医学会は日本医師会の下部組織となっています。日本医師会は無力な団体ではありません。開業医の利益ばかり考える圧力団体だという陰口は一部的を射ていますが、日本の医療を動かす大きな団体でもあります。昨年選挙で、麻生副総理の「盟友」である横倉さんから中川会長になって以前よりは勤務医の現状にも理解が深くなっていると思います。
 大木医師は別のところで、日本医師会長の言う「医療崩壊」(通常の医療、がんや心臓病などの治療が出来ないので医療崩壊が既にきているという認識)と異なり、「イタリアのようにコロナ患者が次々と医療を受けられずに死亡する」のを医療崩壊と言っているようですから、日本医師会と対立することを見越しているのかもしれません。それならそれで最後まで筋を通して日本医師会に直言してほしいと思います。
 話せば切りがありませんが、いずれにしろ大学人ですから、もっと情報を収集し熟慮した発言をしてほしいと思います。では。        

*************************************************「広く、薄く」から「選択と集中」へ
この原稿は塩崎やすひさ『やすひさの独り言』(1月22日配信)からの転載です。https://www.y-shiozaki.or.jp/oneself/index.php?start=5&id=1338 衆議院議員塩崎やすひさ 2021年2月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp


医療崩壊が現下の最大課題としてクロースアップされている。特に、入院先調整待ちで自宅待機の間に亡くなられる方が後を絶たず、国会の代表質問でも厳しく指摘されている。
原因ははっきりしている。まずは、入院先の病床が、「選択と集中」がないがゆえに、病床は十分といえる状況下での「コロナ病床不足」に陥っているのだ。従って、保健所や救急隊、医療関係者による入院調整はパンク状態。
一昨日のテレビ番組で、改めて厚労大臣、知事に大学病院やその他公的病院に対し重症コロナ患者等の受け入れを要請・指示する権限を感染症法上明確に定め、コロナ患者受け入れにおける「選択と集中」を図ることしか、問題解決の突破口がないことを改めて訴えた。
病棟の切り分けが可能な大規模病院が重症患者を受け入れ、結果として公的病院等大規模病院に「重症患者」を集中させ、「中等症患者」は公的病院、民間病院双方で受け持ち、「軽症者」、「無症状患者」は民間病院と宿泊施設が中心となるべきだ、と申し上げた。
その振り分けを行う法的根拠、政策ツールとなる法律が不可欠なのだ。 その大前提は、病院全体として、その「対応能力に応じた役割と責任」を担い、「選択と集中」を行うことが原則だ。すなわち、重症状態を脱して軽快しつつある患者は、公的病院等からより軽装備の病院に、できるだけ早期に移動して頂き、限られた医療資源の有効活用を図らないと、全体が回らない。また、厚労省の退院基準を満たすようになった患者は、帰宅し家族と過ごして頂くことやコロナフリーの民間病院に移ってのリハビリなどに移行して頂くのが望ましい。
宿泊療養や自宅療養で入院先調整を待機している多くの方、また、病状軽快者、退院基準を満たす者などで、入院が必要な方を臨時に受け入れる仮設の専用病院・病床を新たに緊急に整備することや国立病院等での受入れを進めることも必要だ。
同時に、コロナ以外の一般医療の停滞も許されない。コロナ医療・病院とコロナフリー医療・病院を明確に分け、「選択と集中」の中で、医療人材は、有事の間は病院間を、時に患者とともに弾力的に移動することも受け入れて頂き、各医療圏のコロナ期前の医療の質と量の全体は守り切らねばならない。 そうやって、人材を含めた医療対応能力に応じた感染症危機における「有事の役割分担」と「有事の連携」に迅速、円滑に移行できることが、最も適切な感染症有事の地域医療体制だと思う。
ところが、1月19日付で行われた全国医学部長病院長会議による記者会見で配布された資料を見て、驚いた。【「新型コロナウィルス感染症患者の受け入れ状況調査結果」と「新型コロナウィルス感染症患者に係る後方施設状況調査結果」】
この組織は、全国の82大学の医学部長と附属病院長などで構成されている。それらの附属病院への1月6日午前0時現在の緊急調査結果だが、「中等症・軽症病床」における「無症状患者」の占める比率が、全国(1216床)の何と27%にも上り、緊急事態宣言下の4都県の21病院(494床)の33%にも上ることに、驚きを禁じ得なかった。 このことを私から紹介した一昨日のTV番組では、コロナ感染から治った方がそのまま病院におられるのではないか、ということになった。
しかし、診療報酬も優遇される高度医療提供病院である「特定機能病院」は、全国で87病院しかなく、その中の82病院を占める「大学病院」が、そもそも「中等症・軽症用」コロナ病床を全国で1216床、4都県で494床も用意すること自体、限られた資源配分として非効率ではないかと強く思った。さらに、何とその2~3割は、症状のない患者によって占められている、という。医療資源の余りの非効率な利用が行われていることが明らかになった。
また、82病院のうち、回答のあった67病院中記載のあった65病院での集計結果によれば、上記のような、軽快、ないし厚労省の退院基準に合致するところまで治った患者を他のもう少し緩い医療環境の病院へ移動をサポートするはずの「後方施設の整備状況」を見ると、「整えられている」と回答した先は、たった25%、16病院。その結果、軽快ないし退院できるのにそのまま高度医療機関である大学病院に残ってしまい、結果としてベッドが空かず、重症患者の受け入れが進まない、医療資源の有効活用ができないことになっていることが容易に見て取れる。
こうした調整こそ、都道府県内全体を見渡せる知事、場合によっては厚労大臣の仕事であろう。しかし、今の知事・厚労大臣に、大学病院に要請・指示をする権限はなく、だからこそ法改正でその調整パワーを付与しなければならないのだ。 さらに、同調査から「重症患者」の受け入れ状況を大学病院平均で見てみると、全国では3.8人、4都県では5.8人と、ハーバード大学医学部の附属病院的存在のマサチューセッツ総合病院の昨年春時点での121人、とは比べ物にならないほど少ない。 因みに、東大病院のICUの数をみると、成人一般用だけで42床あり、その他の用途の病床も含めれば84床あると聞く。それに対し、1月第一週段階では、重症患者受け入れは、10人未満だったと聞く。
検査の徹底により、無症状患者を見つけ出して感染拡大を阻止しつつ、「対応能力に応じた役割と責任の分担」に基づく「選択と集中」、そして「連携」を医療体制において本格的に実現し、コロナに打ち勝つしかない。

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