[448](投稿)東日本大震災から10年

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社説:東日本大震災から10年 ふるさと再生なお途上だ
03/10 05:00
 東北沿岸を巨大津波が襲った東日本大震災では、2万人近くが亡くなった。2500人超が今も行方不明だ。被害の甚大さを踏まえ、政府はこの10年を復興期間と定め、31兆円を投じインフラを中心とする復旧・復興事業を推し進めた。岩手、宮城の両県では市街地のかさ上げや防潮堤建設などの事業はおおむね終了しつつある。国は、4月からの第2期復興・創生期間では施策を縮小する。だが、被災地にはなおさまざまな課題が残っている。東京電力福島第1原発事故の被害を受けた福島県内には放射線量の高い区域が残され、住民の帰還が進んでいない。復興は地域によって進み具合の差が広がっており、まだ途上だ。国は、被災者のふるさと再生の手を緩めてはならない。

■造成地に空き地多く

 6日、国が復興道路として整備を進める三陸沿岸道路のうち、宮城県区間が完成した。 気仙沼湾をまたぐ巨大な横断橋に、「気仙沼が生き返ったみたい」という声が地元から上がった。被災地のハード施設は着実に完成形に近づいている。しかし、かさ上げを行った複数の自治体では、造成地の大半の使途が決まらず、空き地となっている現象もみられる。土地区画整理事業に時間を要している間に、人の流出が加速するなどしたためだ。震災後、政府は創造的復興を基本理念に掲げ、原状回復だけにとどまらず、新たな地域社会の構築を目指すとした。 その責任を最後まで果たさなくてはならない。人口減少と高齢化を想定しつつ、中長期の視点をもって打開策を探るのが重要だろう。被災した人々が安心して暮らせる環境づくりも大切だ。震災後の避難や移住で住民が離ればなれになり、多くのコミュニティーで人のきずなが途切れた。新たな生活場所で孤独や悲観を深めて心身に不調をきたしたり、家族を失ったつらさを抱え続ける人たちもいる。犠牲者のうち災害関連死は3800人近くに上る。被災者の支援を続けてきた民間団体からは、コロナ禍で資金調達が難しいという声も聞かれる。国と自治体は、被災者の心のケアやコミュニティー再生支援にさらに力を入れなければならない。

■除染が鍵を握る福島

 避難者は減ったとはいえ、まだ4万1千人もいる。そのうち3万6千人が福島県出身者だ。 原発事故がそもそも収束しておらず、その周辺に放射線量が高い帰還困難区域が広大に残っているのが大きく影響している。住民が戻る前提が除染だ。政府は帰還困難区域のごく一部を復興拠点と位置づけ、将来の避難指示解除を見据え除染やインフラ整備を進めている。だが、拠点外については対処方針をまだ示していない。県や地元自治体は「このままでは住民が将来設計を立てられない」と強く反発している。未除染の土地に囲まれた地域に帰還するのでは不安が消えないためだ。国はすべての避難指示解除を目指す決意を表明していたはずだ。帰還困難区域全域の除染について明確な道筋を示すべきである。福島の沿岸部では、国家プロジェクトによって水素製造施設など新産業の集積が進められている。唯一全町避難が続く双葉町でも再生のための産業拠点が設けられ、店を営んだり起業を目指す若者がみられるようになってきた。
 こうした動きを後押しするためにも、除染の拡大は欠かせない。国と自治体が連携を強化し、地域の将来像を明らかにしてほしい。

■記憶と教訓を後世に

 被災地では、震災の記録や記憶を伝える伝承施設や震災遺構が各地に相次ぎ整備されている。惨事を想起させる建物を見るのがつらい人もいよう。だが将来へ警告を発し、教訓を自分事として受け止めてもらうのが大切だ。修学旅行の誘致などを通して震災を語り継ぐ活動が続けられるよう、息の長い支援が求められる。福島県双葉町に建てた東日本大震災原子力災害伝承館は、展示が国や東電の責任に踏み込んでいないとも指摘されている。災害の実相を率直に伝えてこそ、後世への針路となるはずだ。復興の司令塔として発足した復興庁は、2030年度末が設置期限だ。南海トラフや道東沖、首都直下で巨大地震が想定されている。国は後継組織のあり方についての議論を早々に始めるべきだろう。平時の防災から災害即応、復興までをカバーする組織は検討に値するのではないか。10年の経験の蓄積を生かす視点も必要である。
(2021/3/10 北海道新聞デジタルより引用)

■■■ 宇江杉謙信のコメント:

「東北沿岸を巨大津波が襲った東日本大震災では、2万人近くが亡くなった。2500人超が今も行方不明だ」という。政府は10年間に32兆円を投じたが、完全復興にはほど遠い。福島第1原発事故の事故後の処理もほとんど進んでいないと言っても過言ではない。復興の課題はまだ山積しているにもかかわらず復興に要する予算を削減するという。これは大問題ではないでしょうか!!▼「かさ上げを行った複数の自治体では、造成地の大半の使途が決まらず、空き地となっている現象もみられる。土地区画整理事業に時間を要している間に、人の流出が加速するなどしたためだ」と、まだまだ「復興した」と喜ぶのは早いようです。コロナ禍のなかで、人々の交流も十分にはできないというのも、復興を阻害する要因の一つですが、共同体の感覚が戻るような、人の体温が感じられるような政策が執(と)ってこられなかったことも大きな要因だと思います。それゆえ、人口減少も加速度的に早まったのではないかと思います。「人口減少と高齢化を想定しつつ、中長期の視点をもって打開策を探るのが重要だろう。被災した人々が安心して暮らせる環境づくりも大切だ。震災後の避難や移住で住民が離ればなれになり、多くのコミュニティーで人のきずなが途切れた。新たな生活場所で孤独や悲観を深めて心身に不調をきたしたり、家族を失ったつらさを抱え続ける人たちもいる」わけで「国と自治体は、被災者の心のケアやコミュニティー再生支援にさらに力を入れ」る必要があると社説の筆者は強調しています。▼また福島第1原発関連の諸問題は深刻で、まだまだやることは山積しています。放射性物質を含む汚染水や土砂などの除染はこれからもしっかりやらなければなりません。汚染水を海に放流するとか、汚染土砂をこそこそと他の地域に運んで、「隠蔽する」ようなことは絶対にしてはなりません。また、福島沖で起きた地震は10年前の大地震の余震とも言われています。これからも、防災に力を入れ、防災を実現するための練習も怠りなくすることや第災害の伝承も社説の筆者は勧めています。

 読者の皆様も被災者になったつもりで、「東日本大震災」について自分のこととしてお考えいただければ幸いです。