[490](投稿)海洋投棄を急ぐ理由

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今、なぜ政府は汚染水の海洋投棄を急ぐのか!!

4月7日の全漁連の岸会長との「汚染水の海洋放出」に関わる会談を菅首相はそそくさに切り上げてしまいました。

 政府は一回の会談後の9日に、なぜ急いで、汚染水の海洋投棄に関する閣議を13日に開いて、海洋投棄をすることに決めてしまうのか疑問でした。

 小出裕章氏の昨年出版された著書『原発事故は終わっていない』(毎日新聞出版)を再読すると第一章に「トラブルが連発し、迷走する汚染水処理問題」「国が評価する巨大な凍土遮水壁、実は問題だらけだった」「汚染水のタンクはもはや限界、残された手段は海洋放出のみ」「放射能汚染水を海に流す、これは究極の環境汚染である」等の題目が並んでいます。
この第一章だけでもまずは読んでみてください。(以下の内容は小出氏の上記の著作に依拠しております。誤りがあれば筆者の責任です)。

海洋投棄以外はお金がかかりすぎるから…

 理由は簡潔に言うと、政府と東電は、汚染水のタンクにためておいても、ただただ汚染水タンクが増え、その結果、金がかかるだけで解決にはならないと判断した結果だと思います。そのため、解決策は安価と考えた「海洋投棄」しかなく、そのほかの手立ても金がかかりすぎると東電と政府は計算したからだと小出氏の著作を読むと分かります。
 小出氏は、タンカーで、東京電力柏崎刈羽原発に運びだすことを提案しました。東京電力柏崎刈羽原発には廃液処理施設も備えていたからだと言います。しかし、国も東電も受け入れませんでした。
 次に遮水壁を提案しましたが、拒否されました。遮水壁も「1千億円かかると株主総会を乗り切れない」という理由で却下されています。
 どこまでも金がまとわりつくのですが、使われないアベノマスクには400億円を投じても平気な国ですが、タンクに貯めておく金は惜しみ、すべての人民の命に係わる汚染水の海洋投棄は、なりふり構わずにやろうとしているのです。

 東電は事故当時から現在まで汚染水をタンクにため続けています。それを置く敷地も2022年夏には満杯になると東電は言ってます。そのため、専門家で作る経産省の小委員会は、2020年2月に海洋放出を有力視する提言を公表しました。2020年には決定しなければならないことでしたが、新型コロナ感染対策などで遅れてしまい、慌てて4月の13日には閣議決定する予定です。

 しかし、東電は、当初トリチウム以外の放射能は除去済みと説明していましたが、タンクに貯蔵されている処理水の8割はストロンチウムヨウ素などが環境に放出可能な濃度以上に含まれていて「トリチウムを含む処理水」は2割しかありません。

 トリチウム半減期は12~13年で、半減期の10倍を過ぎれば放射能量は1,000の1に低下します。従って、トリチウムを含む処理水をタンクに123年貯蔵すれば濃度は1リットルあたり1593ベクレルまで下がり、1リットル当たり6万ベクレルという排水時の濃度限度を大幅に下回るので海洋放出が可能になり、そのため海洋放出に反対している市民グループなどは、タンクを増設して長期間保管するように主張しています。
 トリチウムをなんとか除去できないかという疑問を持つ人もいると思いますが、「同位体濃縮」という技術を使うとできないわけではないのですが、国内の全ての原発でつくった電力を投入しても足りないレベルだから事実上除去できない・不可能だと小出さんは言います。

「放射の汚染水を海に流す、これは究極の環境汚染である」「10年という歳月が流れても原発事故はまだ終わっていない」と小出さんは言います。

「海洋放出は断固阻止せよ!」と小出さんは言います。「漁業関係者とともに私たちもは立ち上ろう」と、私も「汚染水の海洋放出に反対」です。
 東電や国はお金を惜しんで、お金があまりかからない安易な方法を取るべきではありません。「不要不急」なことに使うお金の一部分でも汚染水をタンクで管理することに回し、123年間汚染水を管理することを選ぶべきです。

 環境破壊、海洋汚染、海洋も陸上にも汚染を広げる海洋放出に反対し、放射能から人命と環境を守るために、読者の皆さん!! ともに立ち上がりませんか!!

 (文責:渋沢栄二)

参考文献:
原発事故は終わっていない』小出裕章 著 毎日新聞出版