[513]国民投票法は憲法改悪の一里塚  その1

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国民投票法憲法改悪の一里塚  その1

――感染の広がりに乗じた政府――


 今回の緊急事態宣言は憲法に緊急事態条項を組みこむための足固めという含みもあると思います.
 権力が国民の行動を規制し感染をおさえこむというやり方を憲法に書きこむと、戦争や政府の政策に反対する運動の高揚による政府の危機にたいしても強権を発動して弾圧することが合法化されてしまうということです。国民投票法は政府がねらう改憲の一里塚です。  

 自民党改憲草案には次のように書かれています。これは9条改憲など改憲4項目のなかのひとつです。


「(緊急事態の宣言)

第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

(緊急事態の宣言の効果)

第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」


 緊急事態宣言をだせば、国会を通さずに内閣の独断で政令を発することができるということです。ときの政権は独裁化します。


行動規制がゆるいから感染が拡大するのか?

 新型コロナウイルスがヒトに感染することそれ自体は自然の法則性です。ウイルスは寄生し宿主細胞の機能に完全に依存してはじめて自己複製し増殖することができるのです。人間の力で絶滅はできません。ウイルスは変異をくりかえして存在しつづけます。ですから、このウイルスを人間社会はうけいれてどうするかと問題をたてるほかないのではないでしょうか。人に感染したウイルス、つまりウイルスに感染した患者を一か所に集めウイルスが広がらないようにすることが肝腎なことだと思います。ウイルスは人に寄生して増殖しても感染する対象がなくなれば当のウイルスは活動できなくなり消滅します。
 それを可能にするのは医療体制の強化のほかにはないと思います。診断・治療の体制の強化です。ワクチンが予防効果を発揮して新型コロナウイルス感染症はやがて収束するにしても、いまのワクチンが効かない変異ウイルスはヒトに感染します。どんなウイルスであっても感染して病をひき起こすウイルスを、わかり次第隔離すること、つまり罹った人が入院・治療できる場を常につくっておくことがこの一年のパンデミックの教訓にされなければならないことだと思います。
 人間社会は病をひきおこすウイルスに感染した人が入院できる場をつくり、そこで治療してそのウイルス増殖を衰滅させるしかないと思いますが、政府はそれができなかったということにつきます。

 政府は新型コロナ危機にたいする緊急事態宣言の「効果」を改憲にむすびつけようとしています。感染症にせよ政府批判運動にせよ社会的攪乱因子を、強権を発動して力づくで封じこめるというやり方はその場しのぎであり、非人間的ではないでしょうか。支配者階級が自分の利益を守るために労働者階級民衆に困窮を強いることにしかならないのです。
 日本では5月8日までに1万846人の方がなくなっています。大阪では医療が受けられずなくなる方が増えています。政府や都は感染第4波を国民の「自粛」が足りないことが原因であるかのようにいっています。いわゆる自己責任論です。「自粛」できないなら私権を制限してもおさえこむというのが政府の考えです。テレビでは「自粛」しない若者や、家族づれの映像をくりかえし流しています。
 しかし感染の広がりと治療をうけられない人が出ているというこの現実は、政府や自治体の医療政策の破綻を示しているのです。病院の統廃合や医療機関、保健所の合理化によって感染症に対応できなくなっているのです。昨年以降、新型コロナウイルスが蔓延し社会的パニック状況となり私たちの生活が危機におちいっているのは社会的な要因すなわち感染症を対象とした医療体制の貧弱さがあるからです。自己責任論はそれをおし隠すものだと思います。
 
 にもかかわらず、公立病院の統廃合はいまもなお停止されてはいません。コロナ以前から厚生労働省が進めている公立・公的病院の再編、病床削減がコロナ危機の最中も抜本的見直しはされていないのです。毎日新聞の政治プレミア(3月12日)は、「2014年に成立した地域医療・介護総合確保推進法に基づいて各都道府県が策定している地域医療構想で、圏域に必要な病床数を割り出し、過剰な病床を削減するとしている。厚労省はこの構想に基づく補助金『病床削減支援給付金』の医政局長通知を昨年11月26日付で出した。」と伝えています。

 Gotoもそうでしたが、感染症にたいするオーソドックスな対応とは正反対のことをやっておきながら、緊急事態宣言で新型コロナ感染症を収束させることはできません。強権的に人々の行動をおさえこむというプラグマチックな発想が批判されなければなりません。

つづく