[514](投稿)「憲法はアメリカからのおしつけ」論は笑止

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「卓上四季」 半藤さんの憲法

05/03 05:00

永井荷風の日記は生前と死後に公刊されたもので微妙に異なる。例えば1947年5月3日。「日本新憲法今日より実施の由なり」が死後の全集では、「米人の作りし日本新憲法今日より実施の由。笑う可(べ)し」となる▼「あっぱれな文明批評」とたたえたのが半藤一利さんだ。「首尾一貫して政治や社会の変容の背後の不気味な闇だけを見つめた」から「すべてが狂気になった時ただ一人正気を保ち得た」と見た(「荷風さんの昭和」ちくま文庫)▼鬼畜米英が一夜にして礼賛に転じた戦後。志賀直哉までが国語変更を唱えたが、確かな歴史眼の主は、戦後の解放意識の賛美と戦前の皇国観念の心酔に同根の病巣を見たのだろう。荷風は、そうした致命的愚劣を笑ったのではないか▼戦争放棄の大理想を掲げた新憲法に日本は忠実でありましょう。昭和天皇が言うと、元帥は答えた。50年後日本の賢明が立証されるでしょうと。1975年にサンケイ新聞が報じた「天皇マッカーサー会談」の場面だ▼解釈改憲集団的自衛権行使を認め米軍との一体化を強める日本。国際協力の名の下で非戦の誓いはかすむ一方だ。誠に流れやすい国である▼東京大空襲を生き延びた半藤さんは新憲法に武者震いの出るほど感激したそうだ。憲法は選挙を経た国会審議で制定した。現憲法を「米国の押しつけ論」で全否定するのは「笑止笑う可し」というほかない。歴史探偵の遺言である。2021・5・3(北海道新聞 卓上四季より)


※※※ 山田野案山子のコメント:
 永井荷風日本国憲法について1945年5月3日の日記で「日本新憲法今日より実施の由なり」と記したが、死後の全集によると「米人の作りし日本新憲法今日より実施の由。『笑止笑う可(べ)し』」とも書いていたという。それを半藤一利氏は「あっぱれな文明批評」とたたえたのです。
 半藤氏が永井荷風を「すべてが狂気になった時ただ一人正気を保ち得た」というのは、戦争中は鬼畜米英を叫び一夜にして「米人の作りし日本新憲法」を礼賛しはじめた主体性のない精神的風潮に、戦争を礼賛した絶対随順の精神構造と同一のものを感じ批判しえたということなのでしょう。半藤氏は永井荷風の日記を「あっぱれな文明批評」と評価したのです。
 しかし、今日、多くの支配者階級の御仁とそれに並(なら)ぼうとする人たちが「現憲法」を「米人の作りし日本新憲法」として排斥し「改憲論」を唱えるのは間違っていると思います。
 現在の日本国憲法を「全世界の平和を求める憲法」であるという意味で「平和憲法」と思っている私は、「理想論」ですが現憲法を尊重し、願わくは私たちを含めた世界の人びと多くの人が安寧(あんねい)に暮らせるようになればと思います。

 しかし、残念ながらこの現世界は「ミャンマー」などに代表されるように、「軍事・官僚独裁政権」が幅を利かせている「国家」が多く、反旗を翻す中間層や貧困層をより圧迫し収奪し、人々を虫けらのごとくに殺害している映像を見るたびに慨嘆せざるを得ません。

 養老孟司氏のように、敗戦後、学校で教科書を墨(すみ)で塗りつぶした経験を覚えている方はまだ多くいらっしゃると思います。今まで行われていた「教義」(軍事教育=諸外国が日本を追い詰めようとしているなどなどと「被害的」に考え「逆切れし」、「鬼畜米英」を大義とする等々)が逆転するという「軍国主義国家」を体験された方で、そのことを何度も咀嚼(そしゃく)した人たちが、まだ多く生存されておられると思います。

 歴史的に貴重な体験をされた方たちの話を聞き、このような歴史書などを読み、深く考え、人口の大多数を占める諸労働者はともに団結して戦争や憲法改悪に反対し、この世の中を支配する人たちの圧政を跳ね返していこうではありませんか!!