[520]入管法改悪は非人間的

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 入管法「改正」案が国会で審議されています。7日の法務委員会採決は見送られたものの、政府与党は今国会で成立させる意志を崩していません。立憲民主党など野党は、日本の反対運動の盛りあがりを背景として、名古屋の入管施設に収容されていたスリランカ人女性が亡くなった問題で収容施設のビデオ映像の開示を要求しています。今年3月体調を崩したスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が治療をうけられず亡くなったのです。野党は現時点では、要求を拒否する政府法務省との法案修正協議を拒んでいます。

 様々な理由で日本国内で働き生活していた外国人労働者を強制送還できるような法改悪が政府によって強行採決されようとしています。「不法滞在」という「かど」で入管施設に収容されている外国人労働者は自国に帰ると生命の危険にさらされる場合もあり、難民申請します。しかし却下され退去処分が出ても送還に応じない人は近年3,000人から4000人いるといわれています。
 日本政府は、難民申請手続き中は強制送還ができなかった現行法を改悪し、3回目の申請で難民として認められなければ、強制送還できるようにしようとしているのです。

日本は難民認定率0.4%

ニューズウィークの藤崎剛人記者は5月10日の記事で次のように伝えています。
「日本が2019年に受け入れた難民の数は44人だ。同年のドイツは5万人、フランスが3万人、カナダが2万人、アメリカも4万人を受け入れている。他の欧州諸国も、数千から数万、小国でも数百人単位で受け入れている。日本はこうした国々と比べると、難民認定者数が桁違い、いや三桁違いに少ないのだ。 この三桁違いに少ない難民受け入れ数を支えているのが、難民認定率0.4%という驚異的な低さだ。ドイツの難民認定率は25%、カナダは50%を超えている。日本に来る外国人だけが特異に難民かどうか怪しい人々だというわけではないだろう。ということは、日本は多くの難民を取りこぼしていることになる。その取りこぼした難民を、相手の事情にかかわらず強制送還してしまおうというのだから、国際的な批判が集まるのは当然だろう。 ドイツはナチス政権下で行われたホロコーストの反省から、難民の支援に力を入れている。難民の庇護を体系的に定めたアジール法の語源は、聖なる領域における人身保護を定めた中世の制度に由来する。日本にも「無縁」などとよばれていたアジールのような制度はあって、歴史家網野善彦の研究によって一般的にも知られている。しかし現在、国を追われた難民たちにとって、日本はアジールではない。」

低賃金で長時間働かされ、収容され難民認定されずに送還される外国人労働者

東洋経済オンラインの山田 徹也記者は特集記事を書いています。
不法入国者が収容される現場の『壮絶な実態』 収容期間は長い人で4年超、医療面での問題も」というタイトルです。
 その記事の結びで山田記者は次のようにいいます。
 「私が牛久の入管で面会した外国人は、夜中も早朝も働き、給料と労働時間を考えれば時給200~300円。何年も働いて、オーバーステイだったので当局に見つかって収容された。本来はこういう人たちに目を向けていくべきだ。

 オーバーステイなのだから送還されるのは仕方がないでしょ、という一言で切り捨てるのではなく、何年も日本で身を粉にして働き、ある意味で日本経済を底辺で支えてくれていた。日本の国民も、そこにきちんと目を向けていかないといけないのではないか。」

 本当にそうです。日本の資本家・経営者たちに低価格で労働力を買われ、生産過程で労働を搾り取られた外国人労働者を、劣悪な環境の収容所に入れ強制送還してしまうということを許してはいけないと思います。新型コロナ危機のなかで、解雇されたり雇い止めにされる労働者は増えていくことでしょう。そして投げ出された労働者のなかには「不法」滞在あつかいされる人もさらに出てくるでしょう。

 新型コロナ危機のなかで、日本政府は逼迫した医療体制のなかで過酷な労働を強いられる医療労働者の現状を過去の医療政策の結果としてうけとめることもなく、事実上放置し、オリンピックを何が何でもやるといいつづけ医療労働者をさらに酷使しようとしています。これは労働市場で余分になった外国人労働者を日本から強制的に追いだす政府の非人間的な行為と通底しています。いわば「棄民」政策といっていいと思います。

 私たち日本の労働者は入管法改悪を強行しようとしている日本政府にたいして外国人労働者とともに抗議し改悪を阻止ていかなければならないと思います。