[542](寄稿)アステラゼネカ製ワクチンへの日本政府の対応

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ペンギンドクターより
その1

皆様

 いよいよワクチンの接種も本格的になってきました。情報も乱れ飛んでいますが、皆様の中で第一回目を接種された方も多いことと思います。我が家も71歳の女房が一昨日接種しました。副反応は当日はまったくなくて、生理食塩水のみ注射したのではないかと冗談を言ったのですが、昨日注射部位の痛みと軽い頭痛がありました。今日はもう消失しています。

 医療従事者についても私が水曜日に外来をしている市のクリニックでは若い事務員も含めて第一回目が終了しています。第一回目はすでに1000万人に接種したという情報もありました。オリンピックを開催するのなら、さらに多くの接種が急がれます。ネット上の未確認情報では、購入したファイザーのワクチンの「賞味期限」が7月末で切れてしまうので、菅総理は7月末までに高齢者の接種を終わらせると言ったのだと噂になっています。真偽は不明です。

 個別の接種はファイザー製ですが、大規模接種会場のそれはモデルナ製です。血栓症の副反応が取り沙汰されているアストラゼネカ(AZ)製については、「国として承認したものの推奨しない」という、いかにも日本政府(厚労省)らしい認可がされて、唖然としました。

 この実際には使われないアストラゼネカ製が、無償で台湾に譲渡されることになったようです。実際にすでに贈られて台湾は感謝していると報道されました。台湾はアストラゼネカ製をきちんと評価していると聞いていますから、無償譲渡を喜んでくれたのですが、ちょっと割りきれないものを感じます。ネット上でもそれに対して批判的意見がありました。

 以下は日本ワクチン学会の見解です。学会としては、アストラゼネカ製に対する、政府・厚労省ダブルスタンダード的な扱いは、皆様もよくご存じの子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の厚労省の取り扱いを類推させるので、このやむにやまれぬ見解が出たと私は考えています。

●AZワクチン、まず日本での活用が不可欠

   日本ワクチン学会が見解示す 

メディカル・トリビューン 2021年6月3日配信

 アストラゼネカ(AZ)の新型コロナウイルスSARSCoV‐2)ワクチン「バキスゼブリア筋注」(遺伝子組み換えサルアデノウイルスベクター)が5月21日に特例承認されたものの、接種が見送られる事態が続いている。AZワクチンの一部は感染が急増している台湾に提供するという動きもある中、日本ワクチン学会は「まずは日本での活用が不可欠」との見解を示した。

血栓症の副反応発現率は100万回接種で6.5件

 AZワクチンは海外の臨床試験ではCOVID‐19の発症予防効果は76%、重症化および死亡抑制効果は100%とされている。

 市販後の副反応として極めてまれではあるが、塞栓および血栓の事例が確認されており、欧州医薬品庁(EMA)は2021年4月4日現在、約3400万回接種で222件の血栓症が発現したと報告している。多くが60歳未満の女性で、接種後2週間以内に発症するとされる。国内における第Ⅰ/Ⅱ相試験では、同ワクチンを投与した192例において血栓症の発現は認められなかった。

 EMAはAZワクチンの効果ベネフィットが副反応のリスクを上回ると考え、接種を行なうことを提案している。同学会は「日本においても年齢や性、基礎疾患の有無なども勘案して接種対象を選定し、同ワクチンの接種を進めることも一案」と訴えている。

●他のワクチンと異なる特徴が利点になりうる

 AZワクチンは通常の冷蔵温度(2~8℃)で最低6ヶ月間保管、輸送および管理が可能であり、既存の医療体制において投与が可能である点にも言及し、①一般の診療所でインフルエンザワクチンなどと同様の取り扱いで個別接種が可能である ②安定した状態での搬送が困難なへき地における訪問接種にも適している――など、「日本で特例承認された他のSARSCoV‐2ワクチンとは異なる特徴が利点になりうる」との見解を示した。

 さらに、世界中でワクチン接種によるCOVID‐19への対策が喫緊の課題となる中、特例承認はされたものの国内で使用されないという状況は国際的な理解を得られないばかりでなく、限られたワクチンを公平に分配するという国際共同調達制度COVAXなどが掲げる国際協力の理念に反し、「批判は免れない」と苦言を呈している。

 加えて、「承認はされても使用されない」という前例が、今後ワクチンの領域だけでなくさまざまな医薬品の新規開発に対して大きな障害となることも危惧されるとし、「まずは日本での同ワクチンの活用が不可欠」と結論している。


 いかがですか。コロナ危機においても相も変わらず、世界の孤児「日本」の面目躍如でしょう。まさにワクチン後進国らしい対応がここにもあらわれています。日本でワクチン開発が出来なかった理由がよくわかると思います。結局、政治家・官僚・経済界・医療界すなわち日本人同志が責任転嫁しあってきたツケがワクチンの現状を招いたということがよくわかります。このコロナ危機においても、政府・与党を批判するだけの野党政治家をみて、私は日本人の典型をみる思いに駆られています。枝野立憲民主党代表が、大阪府知事の対応を批判した件です。結果が出た後からなら、何とでも言えます。大阪府知事にしろ北海道知事にしろ、一時は救世主のように言われていましたし、褒められていました。台湾だってコロナ優等生の国でした。それが完全に反転するぐらい、このコロナ危機の対応は難しいのが現状です。世界中が「試行錯誤」をしているのに、事後的に勝手な批判を繰り返している野党政治家には絶望します。

つづく