[549](投稿)NIMBY (ニンビー)(Not In My Back Yard )「我が家の近くは嫌」

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<核のごみどこへ 国策の果て>1 北と南の「迷惑施設」

 エメラルドグリーンに輝く海面が、その一帯だけゆっくりと濁った色に変わっていく。米軍普天間飛行場宜野湾市)の移設工事が進む沖縄県名護市辺野古の大浦湾。ジュゴンなど絶滅危惧種も多く生息する豊かな海を埋め立てる土砂運搬船が沖合を行き来する。船が出入りする西海岸の港には、ダンプカーが次々と茶色い土砂を運んでくる。▼ 昨年6月の県議選は辺野古移設反対派が過半数を占めたが、わずか5日後、政府は新型コロナウイルスの影響で2カ月間中断していた土砂投入を再開した。移設に反対する玉城デニー知事や市民は「民意は明確になった」と猛反発したが、菅義偉官房長官(当時)は「県議選は全く関係ない」と意に介さなかった。▼ 「政治家や都会人は何か起きても、人口が少ない場所なら限られた被害で済むという発想がある。北海道の核のごみの問題も同じですよ」。今も移設反対運動の先頭に立ち続ける前名護市長の稲嶺進氏(75)は、険しい表情で辺野古の海を見つめる。▼ 移設先はなぜ県外ではなく、県内なのか。そこには「迷惑施設は地方に」という中央や都市の論理が横たわり、後志管内寿都町神恵内村で調査が進む核のごみの最終処分場選定問題とも共通する構図が浮かび上がってくる。

■住民を懐柔 露骨に 
 世界一危険な基地―。米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)は周囲に住宅や学校が密集する危険性から1996年、県内で代替施設を確保することを前提に日米政府が移転で合意した。

■ねじれた民意 
 その矛先が向いた名護市では97年12月、移設の賛否を問う住民投票が行われた。防衛庁は当時、職員約200人を動員して民家を戸別訪問させ、移設に理解を求めた。反対運動を続ける浦島悦子さん(72)は、職員が「基地ができれば仕事が生まれ、過疎地に若者が帰ってくる」と盛んに訴えた当時の光景を鮮明に覚えている。▼ 住民投票は移設反対が過半数を占めたが、当時の比嘉鉄也市長は「私たちの世代さえ我慢すれば活力ある街になる」と政府の振興策を重視し、自らの辞任と引き換えに基地受け入れを表明した。浦島さんは「投票で勝てば終わると信じていた市民にむなしさが広がった」と唇をかむ。▼ 翌98年2月に行われた市長選では、比嘉市政を継ぐ与党系候補が移設反対派を破って当選し、住民投票とはねじれた結果となった。浦島さんは「その後は各地区の有力者が政府関係者に囲い込まれ、地縁血縁の中で反対派はものが言えなくなった」という。

■「家の近く嫌」 地元住民を懐柔したのは政府のアメとムチだった。
 政府は99年、移設を円滑に進める目的で名護市を含む県北部の振興事業に2000年からの10年間で1千億円を投じると決めた。一方で移設に反対する稲嶺進氏が市長を務めた10~18年には米軍再編に協力する自治体に支給する億円単位の「再編交付金」の名護市への支給を止める「露骨な」(稲嶺氏)政策をとった。沖縄県には国内の米軍基地の7割が集中するのに、政府はなぜここまでして県内移設にこだわるのか。▼ 「NIMBY(ニンビー)(Not In My Back Yard=わが家の近くは嫌)」。稲嶺氏は各種の迷惑施設に当てはめられるこの言葉を持ち出し、「日米安保の中で米軍基地の必要性は認めるけど、危険な施設が近くにあるのは嫌だという都市の理論で、迷惑施設は貧しくて人口が少ない地域に押しつければいいという発想が根底にある」と厳しく指摘する。

■カネ 感謝の印 この構図は原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定にも共通する。滋賀県余呉町(現・長浜市)、高知県東洋町、鹿児島県南大隅町―。処分場選定手続きを定めた法律が2000年に施行された後、候補地として浮上した自治体は10カ所を下らず、地場産業がしぼむ過疎地ばかりだ。そして昨年11月、後志管内寿都町神恵内村で選定第1段階の文献調査が始まった。▼ 梶山弘志経済産業相は地方が農業生産を担っていることを例に「地域にはそれぞれの役割がある」と話す。その上で核のごみの処分事業について「都会の方々の感謝の念がまずは大事だ」と地方の役割かのように語り、感謝の印が寿都町神恵内村にそれぞれ20億円支給する交付金だという。▼ 両町村では観光客誘致やごみ収集車更新など交付金事業が早くも予算化され、来秋に文献調査が終われば、次の調査に進むかを問う住民投票が行われる。遠い名護市の海辺で稲嶺氏はこう漏らす。「核のごみの交付金も米軍再編交付金も同じ。地方への構造的差別があり、政府は金さえあれば地方は言うことを聞くと思っている」

 国が推し進める各種国策に地方は時に身を任せ、時にあらがってきた。国策は地方をどこへ導くのか、5回の連載で検証する。(2021・5・26 北海道新聞デジタルより)


※※※ 骨川筋衛門のコメント:

 「NIMBY(ニンビー)(Not In My Back Yard=わが家の近くは嫌)」という言葉は、ここに書かれている米軍の飛行場や港湾だけに限定して使われる言葉ではなく、核のごみ=高レベル放射性廃棄物という住民にとって危険極まりないものが、「過疎地」や「お金や職にありつけず困窮し、おカネを欲する辺境の地域に住む人たち」に政府関係の職員が「基地ができれば仕事が生まれ、過疎地に若者が帰ってくる」という嘘を平気で言って町村の人たちを騙(だま)す文脈の中の言葉としても使われています。また、大都市でも「〇〇公共工事」をすれば、「便利になる、都市がにぎわう、カネが流れ込む、災害から身を守れる…」などと言って、都会の人たちをも騙す言葉と同一性を持った言葉でもあると思います。

 卑近な例では、都市に「ごみ処理場」を作るとか、「墓地」を作るとかになると大多数の人が「NIMBY(ニンビー)(Not In My Back Yard=わが家の近くは嫌)」と言って反対し、許しません。近年は「子供たちの声がうるさい」と怒る住人が増えています。それらを「汚いもの、嫌悪の対象とみなし」、「都会にあってはならないもの」として、過密都市の住民は嫌悪し、排除しようとします。その「都市に住む多数の票田としての人」の声に、国会議員や、大都市圏の議員は即座に反応して迎合し容認します。「強きを助け、弱きを泣かす」のが、国会議員や都議や府議や町議らです。

 沖縄の例は、北海道の寿都(すっつ)町や神恵内(かもえない)村に当てはめてもピタリと当てはまります。

 皆様は四国の高知県の東洋町をご存じでしょうか?東洋町は高知県安芸郡にあり、人口は令和3年3月時点で2277人で、世帯数は1386です。ここでは、かつて核のごみを町長が引き受けると言い出して、町民たちが「町長リコール運動」を立ち上げ、新しい町長が生まれて「核のごみ」の廃棄場所になるのをからくも免れましたが、町内でも家族内でも意見が割れて、たいへんな騒動になりました。

 この東洋町の「核のごみ受入れ騒動」を政府は「教訓化」して、用意周到に下準備をして、お金が大好きな寿都町の片岡春雄町長をたらしこみ、町長が商工会等も巻き込んで、町民が知らぬ間に核のごみ捨て場を引き込もうとしました。まずは10億円を餌にして「文献調査」を始め、最終的には核のごみを地層に埋めてしまう算段です。阿諛追従(あゆついしょう)する飼いならされた御用学者も「地層は核のごみを埋めるためには適している」と応援します。

 さらに狙っていたのは、この策略が寿都町神恵内村の町村民の反対でつぶれても、どこかの寒村が「核のごみのごみ捨て場」として、手を挙げてくれるのではないかと政府とNUMO(原子力発電環境整備機構)は期待し算段していたことでしょう。しかし、寿都町神恵内村以外は、これまでは、どこも手を挙げるところはありません。高レベル放射性廃棄物を持ってこられるのは「極めて危険で、迷惑」だとしっかり判断しているからだと思います。

 原子力発電所から必然的に作られるのは電力だけでなく、高レベル放射性廃棄物という強力な放射能を発する種々の核物質が作り出されます。その核物質は、プルトニウムやウランの同位体などで、これらは原爆や水爆にも使われる恐ろしい物質です。広島に落とされた原爆や長崎に落とされた水爆の被害は甚大なもので、爆弾として無数の人を殺害する威力だけでなく、放射線障害で死傷者がこれもまた無数に出ました。今も原爆被害訴訟において、被害者の全面的な補償はなされていません。冷酷な政府は、放射能による死や障害に対する件には、吝嗇(りんしょく)=ケチそのものです。

 危険極まりない高レベル放射性廃棄物・核のごみを地下深くに埋めて、放射能による障害を起こさないようにすると政府の出先機関であるNUMO(原子力発電環境整備機構)は言いますが、到底、人類は「高レベル放射性廃棄物」を何十万年、何百万年という気が遠くなる年月を無事故で管理することはできないと思います。このことは身近な大事件である「福島第一原発事故」を想起するだけでも分かると思います。

 10年を経ても汚染水がたまり続けており、燃料が溶けて「デブリ」となり、高レベル放射能を出し続け、壊れた原子炉に近づくことさえできないのです。トリチウムの入った汚染水や使い古した燃料棒などの核のごみが溜まる一方なので、海洋に放出するというバカげたことや、どこかに埋め立てる算段を画策しているのです。                                 

 これらの高レベル放射性廃棄物の始末もできないなかでも、古びた原発の再稼働や新しい原発を作ろうということさえ「脱炭素社会」とい名目でやろうとさえしています。政府にも電力会社にも福島第一原発事故の反省は全くないのです。

 このような危険極まりない核のごみの埋葬を、政府の後押しでNUMO(原子力発電環境整備機構)がやっている寿都町神恵内村への核のごみの持ち込みに反対するとともに、原発の再稼働や新原発の建造に反対の声を上げて行きましょう!!