[556](投稿)東通り村ーー原発マネーに呪縛された村

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<核のごみどこへ 国策の果て>2 
原発マネー 村を呪縛

■「共生」進め24年
 
「これまで築いてきた電力事業者との信頼関係は何ものにも代えがたい」。青森県下北半島に位置し、再稼働待ちと建設中の二つの原発を抱える東通(ひがしどおり)村。3月の村長選に7選を目指して出馬した越善靖夫氏(79)は第一声に駆けつけた支持者や原発関係者に「原発との共生」を改めて訴えた。▼ 越善氏は1997年の初当選以来、多額の原発マネーを活用して温泉付きの保健福祉センターや地域の集会場、学校などの建設を矢継ぎ早に進めてきた。これら6期24年の実績から村長選は無風とみられていた。▼ ところが告示1週間前に村議会事務局長だった畑中稔朗氏(58)、その4日後には会社経営者が出馬を表明。一転して三つどもえとなった村長選は畑中氏が越善氏を僅差で破る波乱の結末となり、越善氏の支援者はうめいた。「金の切れ目が縁の切れ目となった」

■福島事故で一転

 海から吹く冷たい風「やませ」で稲が育たず、産業に乏しかった東通村は65年、村の将来を国策に託し、原発誘致を始めた。▼ その活動が結実したのが越善氏が村政を担った24年間で、同氏が初当選した翌年の98年に着工した東北電の原発1号機は2005年に運転を始め、並行して東電の原発1号機の建設準備も進行。村財政は時に年30億円を超える交付金や年数十億円の固定資産税で潤い、この財源が越善氏の影響力の源泉となった。▼ だが、原発依存で手に入れた「豊かな村」は11年の東電福島第1原発事故で一転する。事故の2カ月前に着工したばかりの東電の原発1号機は工事が止まり、18年度の完成後に見込めるはずだった新たな固定資産税はお預けになった。▼ 村は年100億円前後に膨らんだ一般会計規模を70億円前後に絞ったが、原発マネーで整備した道路や施設の維持管理で精いっぱいに。村財政は「庁舎の割れた窓ガラスすら直せない」(村職員)ほど困窮した。▼ 村の経済も東北電1号機の稼働時に定期検査で訪れていた年数千人の作業員が姿を消し、民宿や飲食店は疲弊。原発関連の下請け工事なども激減し、越善氏から離反した会社経営者は「原発関連の仕事を取れるのは村長と親しい業者だけとなり、原発事故後の10年で越善村政への不満が募っていた」との見方を示す。

■「建物が残った」 ただ、村長選は3候補とも「原発との共生」を掲げ、原発依存の是非は問われなかった。激減した原発マネーの新たな配分を巡る対立構造が表面化したにすぎず、新村長も村の財政や経済の危機を抜け出す妙案を持っているわけではない。▼ むしろ村は東電と東北電が20年度からの5年間で計40億円拠出する寄付金に頼って村政を続けざるを得ず、一度はまった原発マネーの呪縛は強まるばかり。村議の一人は「原発誘致でこの村に残ったのは建物だけ。村民の生活は豊かにならず、人口は減り続けた。それなのに原発マネーがないとやっていけない村になってしまった」と漏らす。▼ 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を受け入れた後志管内寿都町神恵内村も漁業など地場産業が衰退し、過疎が進む中、調査に伴う多額の交付金に活路を求めた。来秋までに終わる文献調査をクリアすれば両町村は次の調査に進むか選択を迫られる。財政力の弱い地方に国がちらつかせる国策マネーの呪縛に両町村はどう向き合うのか。
(2021・5・28 北海道新聞デジタルより)

※※※ 骨川筋衛門のコメント:

 東通村(ひがしどおりむら)は、六ケ所村やむつ市に隣接している下北郡にあります。推計人口は5787人(2021・4・1)です。「海から吹く冷たい風『やませ』で稲が育たず、産業に乏しかった東通村は65年、村の将来を国策に託し、原発誘致を始めた」村です。原発を誘致し、原発マネーが入り、その金で工事を始め、原発や村の建物などを建設する人たちが来ている間は栄えて、越善村長も6期を務めましたが、福島第一原発の大事故以来、あらゆる工事が止まり、村から人やお金が入らなくなりました。

 当然にも村長選挙でも再選されませんでした。文字通り「金の切れ目が縁の切れ目となった」わけです。村役場の割れた窓ガラスさえ直すお金がない状況まで追い詰められ困窮していると書かれています。コロナ禍で推奨されている「換気」だけは良いなどと言っていられません。飲食店も、緊急事態宣言下で「時間制限あり20時まで・お酒を出さないお店」と書くまでもなく、工事関係のお客さんがいなくなってしまいました。今や、福島第一原発事後は「お金に苦しむ・むなしい」10年が経ようとしています。

 村議の一人は「原発誘致でこの村に残ったのは建物だけ。村民の生活は豊かにならず、人口は減り続けた。それなのに原発マネーがないとやっていけない村になってしまった」と漏ら」しています。「原発マネー依存症」の後遺症は、「麻薬患者」のように途絶えると禁断症状が出て、悪夢うなされ、吹き出るような・あるいはどろりとした汗が出て、手足が震え、苦しみにあえぐばかりになるということです。人もお金も減りはするけれど、繁栄はしないということをつぶさに見て取れる村です。これは、原発の立地地区の常に陥る状態です。

 同じことが、北海道の寿都町神恵内村で生じる可能性は大いにあると思います。「原発マネー」に頼らず、コツコツ働き、地場産業を継続し、子孫が反映していける道を苦心して切り開く意思をもつ町村民がいなければならないと思います。それをけん引する町長や村長が必要だと思います。

 核のごみ=高レベル放射性廃棄物の文献調査等を受けないようにし、原発マネーに踊らされないようにしていこうという声を皆であげて行こうではありませんか!!