[562]東京五輪やれば盛り上がる······

f:id:new-corona-kiki:20210626073625j:plain
だまされないようにしましょう


昨年11月、菅首相IOCバッハ会長との初会談で言いました。

 「人類がウイルスに打ち勝った証しとして、東日本大震災から復興しつつある姿を世界に発信する『復興オリンピック・パラリンピック』として、東京大会の開催する実現する決意だ。」菅首相にとってオリンピックはともかく実現することに意義があるようです。


新型コロナウイルスに打ち勝った証し?


 「新型コロナウイルスに打ち勝った証し」という言い回しは安倍前首相が在任中にくり返し使いました。このスローガンは新型コロナ感染症の広がりという事態をウイルス対人類の戦いという図式にはめ込み、オリンピックが実現できれば戦いに勝ったことになるという・戦時のプロパガンダのようなものです。新型コロナ危機というのはウイルスによる感染症の広がりという自然現象をさすのではなく、政府の医療政策の失敗による感染症の広がりと犠牲を転嫁された労働者、学生、中小経営者の困窮をさすのです。菅(=安倍)政権スローガンは政府への不信と生活の不安に悩む労働者民衆を「熱狂」でたばねるためのプロパガンダです。


「ウイルスに打ち勝つ」という愚昧


 半世紀以上にわたりウイルス研究と感染症対策にたずさわってきた山内一也さんはウイルスは「人生のパートナー」だと語ります。

山内さんウイルスから見れば人間は取るに足りない存在だと言います。

 「20世紀は根絶の時代というか、ウイルスの根絶を目指した時代。21世紀は共生の時代であると私は考えます。ウイルスは30億年前に地球上に現れて、現生人類のホモ・サピエンスが現れたのは20万年前です。生命の1年歴というものがあります。これは地球が46億年前にできて、そこから現代までを1年に例えると、ウイルスが出現したのは5月の始めです。人間が出現したのが12月31日の最後の数秒だった。ほんのひととき。ウイルス対人類と言っても、人間なんてウイルスにとっては取るに足りない存在だと思うのです。コロナウイルスに例えて言えば、コウモリという宿主でずっと1万年前からいる。

 (ウイルスが)人間の方に来なければいいだけですが、来るように仕向けているのが人間社会なのですね。ウイルス対人類と考えてもいいですが、ただ敵というか、勝つとか負けるとかいう相手ではありません。全然違う存在だと思います。我々の遺伝子のヒトゲノムの4割くらいはウイルスです。ウイルスは私たち人間と一体化しているというか、完全に身の内なのです。腸内細菌が100兆個くらいあるわけですが、1つの細菌にウイルスが10以上いると言われています。すると1千兆ですね。それだけのウイルスが我々の体の中にいるということなのです」(山内さん 『NHK福祉情報サイトハートネット』より)

 ウイルスに打ち勝つといって粋がるのは滑稽であり、愚昧です。対策はワクチンで予防し、感染した人が医療施設で治療することができるようなシステムをつくることにつきるのです。世界の国々の支配者階級は、おしなべてそれができなかったのです。現時点で1億8千万人にものぼる人が感染し亡くなった人は390万人になったのです。

 犠牲になったのは労働者階級・貧困層が圧倒的に多く、現代社会の階級的矛盾をうきぼりにしました。人類の敵に打ち勝てというスローガンは支配者の階級的支配の危機をのりきるために掲げられたにすぎないのです。


東日本大震災から復興しつつある姿を世界に発信する「復興オリンピック・パラリンピック」?!


 福島第一原発の事故は終息していません。そのめどすら立っていません。各地で原発をつづけているために核のごみはたまる一方です。復興どころか破滅に向かっているのではないでしょうか。

 6月に経団連会長に就任した十倉氏は、記者会見で脱炭素を名分として原発継続を主張し「安全保障の観点からも原子力は確保しなければならない」とまで言いました。安全保障とは軍事(=核兵器開発など)にかかわることなのです。

 安倍前首相は最近、周辺に「東京五輪は、やれば必ず盛り上がる」と語っているそうです。(6/25朝日新聞参照)

 オリンピックはなにがなんでもやる、というのが政府・資本家階級の意志です。やれば必ず盛り上がるという言葉の裏側には、狂騒をつくれば政府のあらゆる「悪事」を国民は忘れるだろうというみくびりがあるのです。

そうはいかないぞ!