[563]裁量労働制の対象拡大の動き

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東京五輪、コロナ危機の裏側で
裁量労働制の対象拡大の動き


 政府・厚労省はすでに一定の職種に適用されている裁量労働制について、その対象を拡大することを検討しはじめました。現行制度では適用されているのは「専門業務型」(弁護士など)と「企画業務型」(経営企画担当者など)です。対象の拡大は経済界の要望が強く、来月から検討をはじめ厚労省労働政策審議会で議論されます。

 新型コロナ感染症が広がるなかでいま官民あげてテレワークが推奨され、導入されています。各種調査によって労働時間がのびたという結果も出ています。プライベートと仕事の境界があいまいになり労働時間管理が難しく、残業が増え賃金コストも上がるために資本家・経営者はこぞって裁量労働制を望みます。


定額働かせ放題


 裁量労働制とは実際に働いた時間ではなく、労使で決めた労働時間――例えば1日8時間――を働いたとみなし、実際に働く時間の長さは労働者の裁量で決めることができる制度のことです。何時から何時までというきまりはありません。したがって「定時」も「残業」もありません。賃金は「残業代」込みです。働いた時間にかかわりなく、労使で決めたみなし労働時間にたいする「対価」として支払われます。現実には会社からこの仕事をいつまでに達成してくださいといわれた労働者は、課されたノルマを達成するまで働かなければなりません。


労働時間は裁量労働時間の方が長い


 2018年の厚労省調査では、裁量労働制を採用している職場の方が労働時間が短いという結果が出ましたが、サンプリングの仕方に問題があり、そういう結論になるように調査が恣意的になされたことが明らかになりました。25日公表の今回の調査結果は裁量制の方が一般の働き方より20分長いということが明らかになりました。

 雇用主が割増賃金を払わずに長時間働かせることができるようになり、労働者は山のように仕事を与えられ過労に追いこまれ過労自殺、過労死は後を絶ちません。


適用対象の職種の拡大を要請する経団連


 2018年にずさんな労働時間調査問題で裁量労働制の対象拡大は延期されました。そのときに榊原経団連会長はこう言いました。「今般、働き方改革関連法案から裁量労働制の対象拡大を外す方針を決めたことは、柔軟で多様な働き方の選択肢を広げる改正として期待していただけに残念に思う。
 今後、新たな調査をしっかり行い、国民の信頼と理解が得られるよう全力を尽くしていただきたい。裁量労働制についての法案の再度の提出を期待する。」

 労働者派遣法の対象拡大の経緯をみれば明らかなように、経団連の意をうけた政府は裁量労働制の対象も際限なく広げようとするでしょう。1986年につくられた労働者派遣法の対象はサービス業中心の13職種でした。それから何度も改訂され製造業に拡大されたのは2004年でした。

 政府、経団連はテレワークと裁量労働制をセットにして普及させようとしているのです。

 
労働組合の存在理由が問われることだと思います。「会社の利益を守ることが労働者の利益を守ることになる」という考え方にもとづく労使一体化的な労働運動が多数派になってしまっています。 

日本の労働運動を根本的に変革しなければなりません。