[568]ややゆとりある社会の実現は「社会主義市場経済」という名の資本制的生産様式のおかげーー中国共産党100年

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中国共産党100年習近平総書記演説

 7月1日中国共産党100周年に合わせて、陸上自衛隊と米陸軍は奄美大島で対空戦闘訓練を実施しました。中国にたいする日米政府のきな臭い「あいさつ」といえるでしょう。

 メディアは「外部の圧迫」への強気の姿勢をとりあげています。

 演説(要旨)から引用します。「中国の人民は、いかなる外部勢力が私たちをいじめ、抑圧し、奴隷のようにすることも決して許さない。故意に(圧力を)かけようとすれば14億人を超える中国人民の血肉で築かれた『鋼の長城』の前に打ちのめされることになるだろう。」(日経新聞参照)

 中国共産党・政府は高揚した香港の逃亡犯条例反対・国家安全維持法反対運動に追いつめられ、その担い手を壊滅するためにいま動いています。演説のこの一節には、香港行政府を背後で突き動かす中国共産党にたいする欧米日・資本主義諸国政府の非難への対抗姿勢が示されています。そして同時に、本質的には国内外の労働者階級の抗議の声を退ける強い姿勢が示されています。

 香港の反対運動への行政府の強い弾圧には、政府内で指導する中国共産党を怖がらせるほどの反発力への焦りが表れていると思います。香港の民衆の声に抗弁できない習近平が強権的弾圧に頼るほかなくなっているのです。不当な弾圧を正当化するために、力んでいるのです。習近平天安門の望楼に立って、中華ナショナリズムを宣揚し中国人民の目を外に向けるためにアジテートしたのです。100年目の中国共産党の「内的揺らぎ」の表白といってもいいでしょう。


改革開放と社会主義市場経済は「ややゆとりある社会」実現への歴史的転換


 小康社会の実現を共産党の成果としてうたっています。小康社会とは大衆の生活にややゆとりのある社会という意味です。演説の一節を引用します。

━━中国を救えるのは社会主義だけであり、中国を発展させられるのは中国の特色ある社会主義だけである。
 揺るぎなく改革開放を推進し、各方面からのリスクや挑戦に打ち勝ち、中国の特色ある社会主義を創り、堅持し、守り、発展させ、高度に集中した計画経済体制から活力に満ちた社会主義市場経済体制への歴史的転換を実現した。
 閉鎖や半閉鎖から全方位開放への歴史的転換を、生産力が相対的に遅れていた状況から経済の総量で世界第2位に躍り出る歴史的突破を、人民の生活で衣食が不足していた状況から総体としてはややゆとりがある社会を、さらに全面的にややゆとりがある社会に向かう歴史的な飛躍をそれぞれ実現した。・・・・・・改革開放こそが現代中国の前途と運命を決める鍵となる一手であり、中国が大股で時代に追いついたのだ。━━

 中国共産党は中国の資本主義化を「社会主義市場経済」という二律背反の奇妙な概念で基礎づけています。習近平は鄧小平の路線転換を継承し中国経済の資本主義化を推し進めているのです。
 まさに中国は大股で末期資本主義の時代に追いついたといえます。


誰が何のために「社会主義市場経済」といいはじめたのか


 1992年10月の第14全大会において「社会主義市場経済」という虚偽のイデオロギーが党綱領に謳われました。ソ連邦の自己崩壊を目の当たりにした鄧小平が、官僚支配体制をまもるために「改革・開放」の名のもとに中国経済を全面的に資本主義化することを決意し実現していくことになったのです。それを正当化し国家統合のイデオロギー的手段として「社会主義市場経済」という概念を使ったのです。共産党指導部は「経済特区」の設置、「市場経済化」の促進、国有企業、農村改革、などの資本主義化政策などを労働者・農民の抵抗を抑えつけて実現していったのです。

 習近平がいうように、中国共産党指導部の経済建設路線はスターリン主義官僚制計画経済から党=国家官僚が統制し調整する資本主義経済路線に転換したのです。