[569](寄稿)ペンギンドクター、読書について

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ペンギンドクターより
その1

皆様

 早くも7月に入りました。いかがお暮しでしょうか。私は相変らずの毎日を送っています。女房も二度目のファイザー製ワクチンの接種が終わりました。彼女は71歳ですが、微熱が出現し、倦怠感もあって翌日は私の仕事の送り迎えは何とかやりましたが、横になることが多い一日でした。夕方には回復し食事の支度はしてくれました。私自身は注射局所の痛みの他は何ともなかったので、個人差が結構あるものだと思いました。

 本日は、アストラゼネカ製ワクチンの副反応についての学術誌の論文を中心に紹介します。権威ある学術誌でも意見が割れていて、どのように判断すべきか、難しいところです。ファイザーやモデルナにしても、原理的にまったく新しいワクチンですから、5年後10年後の影響もあり得ることです。今後も必要十分な情報を地道に収集していく必要があると思います。

 添付ファイルの後半部分のコロナ以後の医療の変化については、自分なりの予測があり、いずれまとめてみたいと思っています。本日は、巣ごもり生活での「読書」についてちょっとお話します。

 立花隆さんが亡くなりました。80歳ですから天寿に近い死亡ですが、また一人尊敬できる作家・ジャーナリストが亡くなって、寂しくなりました。彼の本は5-6冊読みましたが、『脳死』は見事な本でした。日本の医療界の闇の部分を論理的に抉り出す名著だと思いました。まだ読んでない彼の本が多くあるので、駅ビルの書店に「追悼記念」に登場しないかと期待しているのですが、やはり古河に登場するのは死後ひと月ぐらいかかるようです。 

 私は上京できない今、新刊の新書の類を駅ビルの書店で探して読むことと、自宅の書棚・書庫の以前購入したままの本を読むことの二本立てでやっています。私の本が最も多いのですが、母と女房の購入したものもあります。母のものは高価な美術関係や全集があり、重量はともかく、実際に開いた形跡はあまりありません。それでも時々母の購入した文庫なども読んでいます。

 先日、「文豪・夏目漱石」の奥さん、夏目鏡子さんの『漱石の思い出』を読んで大変感銘を受けました。すなわち、漱石が異常人格であったことを実感できたからです。悪妻ともいわれる鏡子夫人ですが、彼女でなくては耐えられなかったであろう逞しい女性だったと感じました。ある意味で「弱者虐待をする人」でもあった漱石の内情は、長女筆子や二男伸六の言葉にも実際の経験として述べられていて、興味深く感じました。一方、漱石自身の修善寺の大患胃潰瘍大出血)のことなど、まさに文豪の名に恥じない見事な文章です。偉人はある意味で異常な人、奇人変人でもあるというのは真理です。

 文化勲章ももらった文芸評論家・山本健吉が、百年後に残る日本の作家・詩人は夏目漱石石川啄木だと言いましたが、啄木もまた滅茶苦茶な人でした。

 「多様性」というとキレイゴトのようで適切な言葉ではないと私は思いますが、ある意味で奇人・変人を許容する社会でないと未来はないような気がします。

 書棚の古い小説などを読む楽しみは、その時代の雰囲気がわかって、知らなかった日本の状況が理解できるように思えるからです。巣ごもり生活も悪いことばかりではないと思えるひと時です。

 最後に本の紹介です。

 池上彰佐藤優『真説日本左翼史 戦後左派の源流1945-1960』(講談社現代新書、2021年6月20日発行)は大変興味深く読みました。冒頭に佐藤優が「・・・・・・私は「左翼の時代」がまもなく再び到来し、その際には「左派から見た歴史観」が激動の時代を生き抜くための道標の役割を果たすはずだと考えているからです。・・・・・・」と述べています。この本にはすでに続刊も予定されています。

 シッダールタ・ムカジー『遺伝子――親密なる人類史――』(ハヤカワ文庫NF、2021年3月15日発行)です。彼の本は世界的ベストセラー『がん――4000年の歴史――』を読みましたが、今度の本も魅力的です。上下2巻あり、まだ読み始めたばかりです。一昨日駅ビルの書店で見つけて早速購入しました。しばらく楽しみができました。

 今、朝5時です。これから作り置きの朝食をチンして食べます。録画してある田中陽希の「グレート・トラバース」で、日本三百名山を登った気になったり、中井精也の「てつたび」で旅行した気分になっています。では。

編集部註:アストラゼネカ製ワクチンの副反応とコロナ以後の医療の変化については、次回掲載します。