[576]辞職に追いやられる香港区議

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香港の反対派区議が一斉辞職

 7月9日までに香港の区議会議員(定員475名)のうち110名以上が辞職を表明し、今後さらに増える見込だといわれています。香港行政府は7月中に区議会議員に「愛国的」「宣誓」を求める方針を表明しました。宣誓を拒否する区議をはじめ230名にのぼる議員が辞職する見通しです。

 香港行政府と中国政府(=共産党)は、2019年の逃亡犯条例反対運動の高揚に香港統治の揺らぎ感じ、反政府運動の息吹が中国国内に波及することを恐れて運動とその担い手を壊滅するために弾圧しました。指導者、活動家とみなされた労働者、学生、経営者、文化人が根こそぎ逮捕され有罪判決を受けて投獄されました。
 昨年6月30日、中国政府・習近平は国家安全維持法を公布し香港行政府がその日に施行しました。中国政府は香港に国家安全維持公署を設立し国家安全維持委員会を指導・監督することを通じて反対運動を徹底的に弾圧しはじめたのです。
 議会対策として愛国者と認定するもの以外を議会からも排除するために選挙条例を改悪したのです。2019年9月の選挙で政府に批判的な議員が475議席中388議席を獲得し、林鄭月娥長官はリコールされる寸前に追いつめられたからなのです。


翼賛議会化


 改悪された選挙条例は、行政府にたいする反対派議員が辞職せざるをえないようにあからさまな踏み絵をつくりました。政府提出の議案に「むやみ」に反対したり行政長官に辞職を強く迫ることを禁じています。それだけではなく条例違反で議員資格をはく奪された議員は、政府から支払われた給与や事務所運営費など約2400万円を返還することを強いられるという締めつけまで行っているのです。

 その他方で、辞職すれば返還する必要はないという未確認情報をメディアに流し返済できない反対派区議に辞職をうながすという手も使っているのです。もはや、中国と香港行政府に忠節を誓うもの以外は区議会には存在しなくなります。


批判の封じこめ

 
 反中国政府運動としての意味をもっている香港の反対運動は、強権発動によって抑えこまれたかのようにみえます。弾圧は「共産党」員でもある資本家が牛耳る中国政府(今や資本家階級の政治的代表部となった)が香港行政府を指導してなされたのです。
 
 現在の中国共産党は資本家に転向した元スターリン主義者の党です。スターリン主義者・毛沢東が生きていたら間違いなく「走資派」と批判することでしょう。しかしスターリンが反対派の肉体的抹殺をもおこなった大粛清に示される党官僚専制主義は「継承」しているのです。社会主義市場経済という二律背反のイデオロギーを掲げ中国を資本主義化した鄧小平は、ソ連の自己崩壊の轍を踏まないように党の官僚統制と反対運動の弾圧は強化していったのです。さらに習近平は党と国家の専制支配を強化しています。

 中国共産党は自らに批判的な声の存在を否定し消そうとしています。批判の声が指し示すところの・批判される者の行為は、弾圧することによって批判されたことを覆い隠すことはできますが消すことはできません。批判は「共産党」の他在だからです。あえて存在論的にいうならば、どこまでも批判を消す行為をつづけるかぎり自分が消えるほかなくなるのではないでしょうか。批判の声は消すのではなく在るものとして認め、自省しつつ反批判していくことによってしか自分を実現することはできないのではないかと私は考えます。
 労働者農民学生の批判を弾圧で抑え込もうとする中国の官僚政府は下からの闘いによってたおされるにちがいありません。
 いまさら習近平以下中国共産党のご歴々にそんなことを言っても、キョトンとするだけだろうということは承知していますが、社会主義の理念を放棄した彼らが「中国の特色ある社会主義」だなんていうと、ついついいいたくもなるのです。