[592](投稿)広島の黒い雨、判決

f:id:new-corona-kiki:20210727071911j:plain被爆認定、大幅に緩和 「黒い雨」二審判決 病気の発症、要件から除外/国側には大きな衝撃
07/15 05:00(北海道新聞デジタルより)

 原爆投下後の「黒い雨」を巡る訴訟で、広島高裁は原告全員を「被爆者」と認める判決を言い渡した。「健康被害が否定できない」というレベルでも認定すべきだとする高裁判決は、全面勝訴だった昨年夏の一審判決以上に被爆地の思いに寄り添った内容となった。「まさかここまでとは…」。国側には大きな衝撃が走った。控訴時に立ち上げ、「結論先延ばし」と批判された国の検証検討会は行き詰まっている。制度の見直しを迫る原告側の願いを裏切れば、国へのさらなる批判は免れない。

 「一審判決よりも踏み込んだ内容だ」。原告団の竹森雅泰弁護士は、満足げな表情で話した。一審判決は特定の病気の発症も被爆者認定の要件としていたが、高裁はこれがなくても認定できると判断を示した。政府関係者は「本当か、と驚いている」と話した。

 現行の認定制度は、降雨状況を踏まえて区域を線引きし、設定された。広島県・市は被爆者健康手帳交付の事務を担うため被告になったものの、実際には長年、住民のために区域の拡大を求めてきた経緯がある。昨夏、制度設計した国の意向で検証とセットの控訴を受け入れたが、松井一実市長が「毒杯を飲むという心境」と表現した苦渋の決断だった。

■科学的知見主張

 政府内には当時、一審判決は原告の証言に傾きすぎて救済範囲の際限がなくなるなどとして、区域拡大には「科学的知見が必要」との声が根強かった。ただ世論の反発への懸念もあり、政府は訴訟を続けながら、検証検討会を設けて救済策を模索するという両にらみの道を選んだ。

 だが昨年11月に厚生労働省が立ち上げた検討会は壁にぶつかり、袋小路に入った感は否めない。検証の目玉の一つだった気象シミュレーションは複数の委員から「不確実性が大きい」「手法そのものに疑問がある」との異論が出され、いつ結論を示せるのか見通せない。

 一方、控訴審の進行は速く、今年2月には判決期日が示された。松井市長は今月、田村憲久厚労相に「科学的知見を超えた政治判断を優先してほしい」と要請した。市の関係者は「100パーセントの結果が出なくても50パーセントでも決断してほしい」と漏らす。国に上告断念を求められるかについては、控訴を受け入れた経緯があり困難との見方を示した。

■「線引き」理不尽

 国は被爆者認定について「科学的根拠」に固執してきたが、そもそもの線引き自体が理不尽との批判は根強い。原告の前田千賀さん(79)は、援護対象区域と川を挟んだだけの実家周辺で黒い雨を浴びたという。同じ集落内でも身内の中で、認定されるかどうか分かれた。2007年に亡くなった父親は1970年代から区域拡大運動の中心人物の一人だった。前田さんは控訴審の判決後、こう訴えた。「ようやくここまで来られた。県や市、国は上告せず、原告以外の人も含めて救ってほしい」

■「微粒子」影響 考慮が必要

 名古屋大の沢田昭二名誉教授(物理学)の話 「黒い雨」が降った地域では通常より小さな雨粒の水分が蒸発した放射性微粒子が、大気中に大量に充満していたと考えられる。呼吸などによって取り込むと体内に付着し、内部被ばくしてしまう。こうした影響を国はこれまで無視してきたが、判決は健康被害を受ける可能性を改めて認めており画期的だ。国は黒い雨の雨量によって援護対象区域を線引きするのではなく、放射性微粒子による被ばくの可能性をきちんと考慮すべきだ。

■地元と国で温度差 黒い雨訴訟で14日の広島高裁判決が一審に続き原告全員の請求を認めたことを受け、被告側の広島県広島市、国は今後の対応を協議する方針を明らかにした。ただ地元と国では温度差があり、湯崎英彦知事は「(判決で)黒い雨体験者の切実な思いが認められ非常に大きな意義がある。上告したくないと思っている」との意向を示した。▼ 松井一実市長も「心身に苦しみを抱えてきた体験者の長年の切なる思いが認知されたものと受け止める。降雨地域の拡大を目指す市の思いを訴える立場で協議に臨みたい」とした。▼ 一方、厚労省原子爆弾被爆者援護対策室は「国側の主張が認められなかったと認識している。判決内容を精査している」とのコメントを出すにとどめた。



②黒い雨訴訟「上告断念認めて」 広島県・市が国に要請

07/16 13:28

 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡る訴訟で、一審に続き原告全員への被爆者健康手帳の交付を命じた広島高裁判決を受け、被告の立場の広島県広島市は16日、田村憲久厚生労働相に面会し、上告しないことを認めるよう求めた。▼ 松井一実市長と、県の田辺昌彦副知事が厚労省を訪れ直接、要請書を手渡した。県と市は手帳の交付事務を担うため被告になったものの、実際には長年、住民のために援護対象区域の拡大を求めてきた。昨夏、制度設計した国の意向で検証とセットで控訴を受け入れた経緯がある。▼ 要請書は、当事者の高齢化に触れ「人道的視点に立って救済方法を考えていくという政治判断が優先されるタイミングだ」などと指摘した。▼ これに先立ち、田村氏は16日の記者会見で、援護対象区域拡大を視野に入れた有識者検討会に触れ「急いで方向性を示したい」と述べた。▼ 厚労省は昨年7月の一審判決に控訴した一方、検討会を立ち上げて検証を進めている。▼ 上告するかどうかについては「精査している最中」「関係省庁、県、市と協議したい」などと述べるにとどめた。

③黒い雨訴訟、容認しづらい 厚労相、手帳交付「重い」07/20 13:28

 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡る訴訟で。一審に続き原告全員に被爆者健康手帳を交付するように命じた14日の広島高裁判決を受け、田村憲久厚生労相は20日閣議後記者会見で「(放射線に関する)他のいろいろな事象に影響する内容とすれば、われわれとしては容認しづらい面がある」と述べた。▼ 原告全員への手帳交付については「重く受け止めている」などと繰り返し、援護対象区域の拡大に一定の含みを持たせた。一方、判決の認定には懸念があるとして上告の可否を慎重に判断する姿勢を示した。▼ 判決は、黒い雨に直接打たれた場合だけでなく空気中の放射性微粒子を吸い込んだことなどによる内部被ばくで健康被害の可能性があれば被爆者と認めるべきだとしている。田村氏は判決が影響する範囲について関係省庁と分析を進めているという。

④黒い雨訴訟、国が上告を要望 広島県、市は受け入れず

07/23 19:55
 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」訴訟で一審に続き原告全員を被爆者と認めた14日の広島高裁判決に関し、訴訟に参加する国が、最高裁に上告するよう被告の広島県と市に要望したことが23日、関係者への取材で分かった。県と市は受け入れず、結論は出ていない。▼ 関係者によると、23日に広島市内で国、県、市の3者協議が開かれ、厚生労働省法務省の幹部が出席。判決を受け入れた場合、被爆者援護法に基づく援護制度を大きく変える必要があるため最高裁の判断を仰ぐ必要があると説明したという。(①②③④の記事はいずれも北海道新聞デジタルからの引用です。)

※※※ 骨川筋衛門のコメント

「原爆投下後の「黒い雨」を巡る訴訟で、広島高裁は原告全員を『被爆者』と認める判決を言い渡した。『健康被害が否定できない』というレベルでも認定すべきだとする高裁判決は、全面勝訴だった昨年夏の一審判決以上に被爆地の思いに寄り添った内容となった。『まさかここまでとは…』。国側には大きな衝撃が走った。」と①の報道では書かれていて、後日、国はこの判決に対して、広島県広島市最高裁に上告するよう「要請した」とありますが、この国の要請の仕方に皆様は、「既視感」がありませんか?      
 ついこの間、オリンピックの前に西村康稔経済再生担当大臣が、酒税を科する国税局や金融機関に酒の卸店やお酒を提供するお店に、酒の提供を「私権を制する」通達を出し、「優越的地位の乱用」とまで批判されたのと同じ道を歩んでいると思います。国の言うことを聞かない場合、地方自治体に「配分するお金」や「選挙になれば協力しない」などというような「悪代官の手口」を水面下で匂わせながら、最高裁に「上告すること」を迫っていると想像します。

◆ 西尾正道氏の「被曝インフォデミック トリチウム内部被曝ICRPによるエセ科学の拡散」(2021・3・11 発行 寿郎社 発行)の45ページに、内部被曝について書かれています。
 広島に落とされた原爆の放射線を直接的に浴びた広島県庁に勤めていた夫を探しに松江市から妻は出かけ、「(原爆投下後)一週間後に入市したが明らかに原爆症と思える症状で死亡した(夫は存命したが)」「松江の夫人は、内部被曝問題への私の疑念の元になった」と「内部被曝の問題に気付いた肥田舜太郎氏の著述」の引用があります。この部分の肝(きも)は、外部被曝よりも内部被曝の影響がより大きいことを示しているのです。原爆の影響を調べた結果、爆心地から2キロメートル以上離れた地域には被害がないとしている[ICRP(国際放射線防護委員会)]の科学は「エセ科学」だと西尾氏は喝破しています。

◆遠い地域に降り注いだ「黒い雨」を浴びて外部被曝を被ると同時に、呼吸器や消化管などから黒い雨を吸ったり口に入れたりして、呼吸器や消化器の細胞や血管内に入り込んで骨髄や各臓器に蓄積された放射性物質が、各臓器に与えた内部被曝の影響は外部被曝よりも強いことを示す例だと肥田舜太郎医師は気づいたのです。黒い雨の影響は長年に続き、かなり後でも癌になったり心臓血管障害や骨髄が侵され、白血病や血小板減少症や貧血や脳腫瘍などにもなったことでしょう。

◆そのようななかで何とか延命できた方たちの声を素直に聞き入れなければ、政府とともに厚労省の信頼は地に落ちるばかりです。新型コロナ対策でも失策の連続のこれまでの経過を鑑みても、この裁判の判決を「真摯(しんし)」に受け止めるべきです。さもなければ、政府、各省庁の権威失墜はなおのこと早まり、傷が深まり、人民の信頼をさらに失いことになると思います。

◆読者の皆様、この「黒い雨」の判決と政府の最高裁への上告を広島県広島市に迫るという今回の「悪代官」まがいの「優越的地位の乱用」をどのように考えられますでしょうか!!