[611](寄稿)中等症は、在宅酸素療法の体制確保を

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ペンギンドクターより
その1

皆様

 先日、突然政府が中等症の新型コロナウイルス患者は自宅療養とするという発表(尾身さんは相談は受けていないと言っていました)をして、与党内からも批判が出て、すぐに撤回しました。相変らずの迷走ですが、政府内の誰が言い出して誰が撤回と決めたのか、相も変わらぬ不透明な日本国です。
 転送する以下のような具体的なケースは現場の医師と患者さんの姿が浮かび上がってきて、焦燥感が募ります。なぜなら、既視感(デジャヴ)があり、同じことが今年の初めにもあったと思うからです。何度も言いますが、これは予測されたことだからです。専門家はこの事態に対して警鐘を鳴らし続けていました。オリンピックどころではなかったはずです(オリンピックを決行したから起こったと言ってはいません)。つまり、予測されていたのですから、オリンピックをしながらでも対策を取るべきだったのです。どんな対策か私見・愚見を述べます。

 私自身は、中等症は現状で入院しなくてもよいと考えています。入院できる病院がすでに患者数の増加のために逼迫していることはわかっているからです。自宅療養でもいいが、少なくとも、下記の松本医師のような医師が主治医として、対応してあげる体制を取るべきです。在宅酸素投与ができる体制をとっておくべきです。恐らく在宅酸素療法の酸素濃縮器を供給する「帝人」もフル稼働で生産しているのでしょうが、2020年初めから、国費を投入して増産を促していたという話は聞いていません。

 また、在宅医療を行なっているクリニックも下記のような医師ばかりではないと思われます。開業医の団体である日本医師会はどうしているのか、危機感を強調することが無意味とは言いませんが、彼等から具体的にどう対応しているという報告は今まで聞いたことがありません。

 私が先日経験したケースをお話します。92歳の男性です。彼は元医師です。80代半ばまではまともで医師会雑誌に「短歌」を載せていたのですが、認知症もあり、以前お話した介護付き老人ホームに入所していて、クラスターが発生し、本人もコロナ肺炎を発症しました。私がパート医をしているクリニックの院長がその施設に往診をして、対応しました。その男性は高齢でもあり、入院はせずに施設で酸素投与を行ない、幸い奇跡的に回復しました。CTは市民病院で撮影してあり、明かなCOVID‐19の肺炎がありました。輸液等はしたと思いますが、治療法までは聞いていません。

 その元気になった男性をたまたま脱水になったということで、施設のナースが私の外来に連れてきたのです。このナースもPCR検査で陽性となった女性ですが、非常に気の利く頼もしいナースです。患者は元気になっているので、血液検査の結果を伝え、点滴もしなくてもいいと伝えましたが、念のため施設で250㏄だけ投与することにしました。認知症はなかなかのもので、洗面所に排便するので困りますとナースは笑っていました。

 認知症があり90歳を超えているし、明かな肺炎があっても病院に入院はせず施設で面倒をみるということに落ち着いて、返ってよかったわけですが、関与する医師がいない場合はこうはいきません。

 日本医師会は多くの開業医を傘下に会員としてもっているのですから、少なくとも具体的に自宅待機のコロナ陽性者に対応する窓口になるべきだと思います。実際そのような報告が個々の在宅医療に専心している医師からも見られます。しかし、日本医師会は組織として、日本病院会をはじめとする病院団体、厚労省と「具体的な方策」を練り上げないのか、その時間はあったはずです。要するに任務分担を具体的に相談し発表すればいいのです。

 それができないのは、なぜか。実は日本医師会日本病院会などの病院団体も、具体的な対応の出来る現場の個別の医師や個別の病院を傘下に持っていないからではないでしょうか。名目上はありますが・・・・・・。つまり、「名誉職としての老人の団体」だからです。

 要するに「高級将校」だけで兵隊がいない軍隊は戦争などできません。これはアジア太平洋戦争(15年戦争あるいは大東亜戦争と表現してもいい)における日本軍に対する欧米の評価、兵隊は強く、上に行くほど無能だという評価の再現です。

 心ある大学病院や公的・私的病院で働く個別の医師たちは疲弊しています。これは一年余り前にも報道されていました。その実際を私はNHKスペシャルで何度も見ました。 

 だから、今になって中等症は自宅待機と政府が発表して、「えっ、それは・・・・・・」と思いました。

 コロナ対策の予算が30兆円余ったとも聞いています。医療関係でも1.5兆円使われなかったという情報もあります。そして多くの居酒屋や観光産業の人々が廃業したはずです。私の愛する鉄道路線廃線の危機です。

 何とか具体的な方策を考えるべきです。

 今の日本のコロナ対策は「無政府国家」と言えると思います。都道府県や地方自治体は頑張っていても、国家が何もしていないに等しい。30兆円がその証明です。

 まあ私は粛々と日常の医療に勤しむだけですが。ワクチンは打ちましたが、感染したらアウトですから、神経を使っています。
 もう一本、次はお馴染みの医師の意見を送ります。では。

 次回へつづく