[681]「危機の時代に」2021衆院選のなかで

f:id:new-corona-kiki:20211022104948j:plain
朝日新聞が10月16日「危機の時代に 2021衆院選」シリーズをはじめました。


夜の公園に弁当を求めて


第1回目は緊急事態宣言によって経営危機におちいった経営者から解雇・雇い止めされ貧窮する労働者の今の姿をルポしています。

見出しは「夜の公園 無料の弁当に列」「女性や若者もコロナで困窮」です。9月下旬、東京・池袋の東池袋中央公園には無料配布される弁当を求めて400人を超える人々が集まり、用意された400食ほどの弁当は20分ほどでなくなりました。

朝日新聞デジタル版では貧困の現場を長年見てきたNPO法人「TENOHASI」事務局長の言葉を紹介しています。「コロナでぐらぐら揺れて、液状化現象のように貧困層が表面に出てきた。非正規雇用でもともと弱い立場にいた人が失業保険や行政の給付金でもしのぎきれなくなり真っ逆さまに落ちている。困窮する人に手を差し伸べるというメッセージを、いまこそ国が発してほしい」と訴えていると。


公園で朝日新聞の記者にインタビューされた人の声を引用します。

――――

妻と一緒に列に並ぶ男性(54)は、ホテルの従業員。コロナ禍の影響で仕事がなくなった。会社は休業手当を出さず、収入が減った。妻は飲食店におしぼりを納入する会社でパートで働いていたが、その仕事も失った。今年2月ごろ、炊き出しのことをテレビで知り、訪れるようになった。

 最近はホテルの仕事が徐々に戻ってきたものの、勤務は週3日で、生活は苦しいという。「並ぶのは正直、恥ずかしさもあるけど、こういう場があるのは本当にありがたい」

 若い人にも話を聞いた。

 並ぶのは3回目という男性(32)は、派遣会社に登録し、ネット通販大手の倉庫で商品の棚出しの仕事をしていた。ところが、今年夏、雇い止めに遭った。ハローワークにも通ったが、コロナ禍以来の就職難で厳しい現実に直面した。興味を持った病院の清掃の仕事は、3人の求人に40人の応募があり、あきらめた。

 友人の家に居候し、冷凍食品の配送など日雇いの仕事で食いつなぐ日々だ。今の月収は7万円ほど。「収入を計算できる仕事を早く見つけて、炊き出しに頼らなくてもいい生活に早く戻りたい。今はとにかく粘るしかないですよ」

――――

 コロナ危機で経営者・資本家に解雇され路頭に投げだされた労働者のうちで弁当配布を知った人だけが公園にたどりついてきたといえます。支援求めて公園に来る人たちが400人を超えるのはリーマン危機以来のことだといわれています。


「危機の時代」とは?


シリーズ第1回の終わりで次のように趣旨がのべられています。

 「終わらぬ新型コロナウィルスの感染、差し迫る地球温暖化など、わたしたちはいま行動や価値観の変化を迫られる危機の時代に生きている。守るべきものは、そして変わらなくてはならないものとは。衆院選を前に考える。」

 いま「危機の時代」には違いありません。しかしこのフレーズで表現される「危機」が意味する現実はそれを感じる人の階級的・社会的立場によって異なるでしょう。生産流通活動が止まれば資本家・経営者は経営危機に落ちり、この危機の犠牲を労働者におしつけます。そもそも商品生産が止まるということは資本の増殖が止まるということです。資本家にとっては本質的に存亡の危機を意味するのです。だから現実には資本家は抜け道をさがします。感染を避けるために流通形態を変える方向に転換しました。例えばウーバーイーツに象徴される販売形態の拡大とギガワーカーと呼ばれる宅配個人事業労働者の育成と委託。新型コロナロナ感染症の爆発を条件としておおくの労働者が犠牲を強いられ生活の危機に落としこめられています。労働者は賃金をカットされ解雇されます。解雇に反対してたたかうか、うけいれ路頭に迷うか問われます。労働者には抜け道はないのです。資本主義はこの資本家階級と労働者階級の対立を内包しています。新型コロナ感染症の広がりはそれを白日のもとにさらしました。


コロナ禍は所得の再分配といった政府の役割の大きさを改めて認識させた?


記者はこのシリーズ第1回目で衆院選の争点をデジタル版でまとめています。


「コロナ禍はこの国の医療態勢や安全綱のほころび、経済格差をあらわにし、所得の再分配といった政府の役割の大きさを改めて人々に認識させました。本当に困っている人を支えるために、限られたお金をどう使うか。必要な財源をどう確保するか。衆院選での選択は社会のありようを大きく左右します。」

 コロナ禍は政府の役割の大きさを人々に認識させたとはいえます。コロナ対策で失敗した政府は職を失い貧窮する労働者の生活を保証すべきです。しかしそれを「成長の分配」という形で政府に要求するというのは破綻したトリクルダウン論の二の舞になります。分け前がほしいならもっと働いて会社や国の利益を増やせというのが資本家の利益を体現するいまの政府です。そもそも労働者は成果の分配を受けているわけではないのです。(このブログ「〔675〕新資本主義会議に連合会長も」を参照してください)
 いま労働者の生活の危機の時代です。労働者が主体となって政府に生活給付金や減税を要求していくと同時にこれ以上の犠牲を労働者に転嫁することを許さない共同した闘いを進めていきましょう。既成の労働運動の変革を!

労働組合