[703] 恒大集団の危機

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現代中国の象徴
中国恒大集団の危機


 恒大集団は中国資本主義の発展のなかで急成長した大資本です。マンション開発を主力に、文化観光、プロスポーツ、EV自動車などを展開しています。2020年の売上高は9兆円。日本の不動産会社上位5社の売上げの合計を大きく上回っています。その恒大集団が中国の国内総生産(GDP)の2%にあたる約2兆元(約35兆円)もの負債を抱え、デフォルトの危機に立っています。

 もしも恒大集団が債務不履行になればその影響は重大です。すでに住宅価格はさがりはじめており金融商品の価値が下落しています。不動産バブルの崩壊は2008年のサブプライム危機の中国版となる危険性をはらんでいます。中国の資本家階級は企業危機の犠牲を労働者階級にさらに転嫁するでしょう。中国の労働者階級にたいする解雇は加速されるでしょう。
 その影響は国際的に波及します。各国政府•資本家は身構えています。

中国政府の不動産規制強化が引き金

 中国政府は2020年8月、不動産開発会社に対し資金調達の制限に関する指導を行いました。そこで示されたのが、「三条紅線(3つのレッドライン)」と呼ばれる基準です。

 簡単にいうと1つ目は自己資本比率が30%は少なくても超えること、2つ目は負債よりも資本金を大きくすること、3つ目は利子がつく借金を返済できるだけの現金は確保すること、ということです。この3つの基準の達成数に応じて、会社を「緑(3つ達成)」「黄(2つ達成)」「オレンジ(1つ達成)」「赤(全て未達)」の4グループに区分し、年間の有利子負債の増加額を、「緑」は15%以内、「黄」は10%以内、「オレンジ」は5%以内に抑え、「赤」は増加を認めないという内容でした。

 つまりこの基準を一つも達成できていなかった恒大は「赤」に分類され、借金して運転資金を調達することができなくなったのです。

「三条紅線」政策は2021年1月1日、正式に全面的に実施されました。

 3月に開かれた全国人民代表大会(中国の国会にあたる)で発表された政府活動報告では「住宅は住むものであり、投機の対象ではない」といった文言が強調されました。中国政府の不動産バブルの抑止政策によって、銀行としては不動産開発会社向け融資、住宅ローンの販売活動を、厳しく控えざるを得ない状況となったのです。それによって恒大集団は融資が受けられなくなり運転資金が枯渇していったのです。住宅が売れない、価格が下がるという追い打ちをかけられ危機が進行したのです。

朝日新聞の記事を抜粋引用します。

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「世界的不況の懸念も」


 9月中旬、中国不動産大手・中国恒大集団の経営危機を伝えるニュースが、衝撃的な見出しとともに世界を駆け巡った。

中国の国内総生産(GDP)の2%にあたる約2兆元(約35兆円)もの負債を抱えることになった中国恒大集団と、創業者である許家印氏の実像を伝える連載です。初回では、許氏が生まれ育った農村を記者が訪れて、中国一の不動産会社を築き上げるまでにいたった許氏のルーツに迫ります。

 負債総額約35兆円。巨額の負債を抱えた恒大が経営破綻(はたん)すれば、2008年に世界を大混乱に陥れたほどの金融不安に発展するのでは――。こうした懸念が高まり、世界は身構えた。

 私は、すぐに支局がある上海から南部の広東省に飛んだ。同省深圳市の中心部にある恒大の本社ビル前に着くと、警察官が盾を構えて警備する厳戒態勢が敷かれていた。

 その前週には、恒大のマンションや金融商品を買った人たちが本社ロビーに押しかけ、抗議の声を上げていた。

 恒大の2020年の売上高は5072億元(約9兆円)。日本の不動産大手5社の売上高の合計をはるかに上回る。これほどの繁栄を極めた巨大企業が、なぜ危機に陥ったのか。私には、わからないことだらけだった。

 カギを握るのは、創業者の許家印(63)だ。恒大を一代で築き上げ、かつて中国一の富豪にもなった。だが、IT大手アリババの創業者、ジャック・マー(馬雲)らと比べると世界的な知名度は低い。

 彼の半生をたどれば、中国の不動産業界が発展した理由や、恒大が直面する危機の本質をより深く理解できるのではないか。そう考え、私は9月下旬、彼が生まれ育った河南省の農村を目指すことにした。

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引用以上

 1949年スターリンの影響下で毛沢東を先頭とした中国共産党は中国の労働者階級農民とともに中華人民共和国の樹立を宣言しました。社会主義中国の実現が試みられましたが、人民公社運動・大躍進政策の失敗と文化大革命の混乱の末に失敗しました。毛沢東死後鄧小平は改革開放の名のもとに中国の資本主義的改造にのりだしました。鄧小平は1993年の中国共産党第14回大会で社会主義市場経済という考えをうちだしてスターリン主義的な中国型社会主義から資本主義への道へと舵を切りました。中国共産党マルクスレーニンの用語で粉飾された資本家階級の代弁者となったのです。そのイデオロギー的心棒は資本主義的中華ナショナリズムです。そして中国共産党が統制する国家資本主義中国は今やアメリカに迫る経済的規模になりました。
 新型コロナ危機を契機として経済的危機は労働者にしわ寄せされ、不動産バブル崩壊の波が迫る現代中国の深層に迫りたいと思います。

ぽつぽつ考えたことをブログに書き留めていきます。

恒大集団は10月30日現在依然として債務危機にあえいでいます。