[710]中国共産党100年の歴史決議

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中国共産党の歴史決議

 中国共産党は第19期6中全会(第6回中央委員会全体会議)で第3の「歴史決議」を採択しました。決議の正式な名称は「党の100年にわたる奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する決議」です。この決議にいまの中国共産党の質が凝縮的に表現されています。
 全文を読んでいますが、長くて大変です。100年の歴史は長く中国人民の苦難の道がしのばれますが、党指導部の文章は、歴代の党指導者の功績を讃え、これからも中国の資本主義化を党専制国家によって制御統制するために習近平を終身的な指導者として認めていこうというものでしかありません。

 歴史決議では現代中国を「マルクス主義の中国化」によって「中国の特色ある社会主義」が実現されていると強調し資本主義化していることを認めていません。後半の「六、中国共産党100年にわたる奮闘の歴史的経験」の「(三)理論革新を堅持する。」のところで「マルクス主義は我々の立党立国、興党強国の根本的指導思想である。」と言いマルクス主義という言葉がくりかえされています。けれども今日の中国は公有制概念の内包を拡大し種々の私的所有が認められ、商品の生産と流通が全社会的に行われています。マルクスは『資本論』を「資本制生産様式が支配的に行われる諸社会の富は一の『厖大な商品集聚』として現象し、個々の商品はかかる富の原基形態として現象する。だから、吾々の研究は商品の分析をもって始まる。」という叙述からはじめています。こんにちの中国社会は資本生産様式が支配的に行われる社会となっています。労働力までもが商品化され資本家階級と労働者階級の対立があり、生産過程で資本家階級が労働者階級を搾取して剰余価値を取得する典型的な資本制経済社会です。アリババや恒大集団のような巨大独占体が生まれ超格差社会になっていること、この現実とマルクス主義とは相いれないのです。

「理論革新を堅持する」とは

 この項で次のようにいわれています。
 「マルクス主義理論はドグマではなく行動指針であるため、実践の発展とともに発展させる必要があり••••••中国のその他の政治勢力が達成しえなかった厳しい任務を完遂することができたその根本的な理由は••••••マルクス主義の基本原理と中国の具体的な実情とを、中国の優れた伝統文化とを結びつけることを堅持し、実践こそ真理を検証する唯一の基準であることを堅持し、何事も現実に立脚することを堅持し、時代の問いかけや人民の問いかけに遅滞なく答え、マルクス主義の中国化•時代化を不断に推し進めたことにある。」
 この言い回しは行き詰まった「社会主義」建設を資本主義化によってプラグマティックに乗りきろうとしたという結果を正当化するための屁理屈です。
 中国は1992年に鄧小平による社会主義市場経済論の提唱を区切りとして資本主義化し労働者階級、農民の犠牲の上に成長したのです。この現実を「マルクス主義の中国化」と概念的に規定し正当化することはできません。
 「理論革新を堅持する」とは「マルクス主義」を中国の資本主義化を正当化するためのシンボル的概念として活用しつづけるということにほかなりません。

中国型社会主義から中国型資本主義への歴史

 毛沢東社会主義人民公社運動や大躍進政策によって多くの労働者農民を餓死させ大失敗しました。この失敗をきっかけにして党内の権力闘争が激化し毛沢東文化大革命を組織して中国型社会主義は大混乱したのです。
 鄧小平は1976年に毛沢東が死去して、ただちに「改革」に乗りだしました。しかし彼の改革開放政策は中国社会主義主義建設の破綻をマルクス主義を適用して克服することではなく、中国を資本主義化して乗りきっていこうというものなのです。
 生産諸手段の私的所有の復活、民間企業の設立と労働者の雇用の承認、つまり搾取の承認など中国は資本主義の道を一気に進みだしました。
江沢民の「三つの代表」胡錦濤の「科学的発展観」はそれに棹さしたのです。
つづく