[712](寄稿)医療あれこれ(その62)−1

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ペンギンドクターより
その1

 本日は医療あれこれ(その62)を送ります。子宮頸がんワクチンのことなど言いたいことはあったのですが、以下はすべてコロナ関係となりました。
 まず身近なCOVID‐19情報です。
 先日Y病院救急における80歳男性のコロナ感染死亡のケースで、自宅待機になった医療従事者の件ですが、一人だけナースがコロナ感染陽性と出ました。それだけで感染は収束しました。まずは「めでたしめでたし」といったところです。
 いくつかCOVID‐19情報をピックアップしてお送りします。
●ブレークスルー感染64% 島根10月 高齢者割合高まる
 2021年11月10日(水)配信 山陰中央新報
 島根県が9日、10月の新型コロナウイルス感染者(101人)のうち、ワクチン2回接種後に感染する「ブレークスルー感染」の割合が64.3%に上ったと明らかにした。県はワクチンを先行接種した高齢者世代を中心に抗体量が減少し、高齢者福祉施設でのクラスター(感染者集団)の発生につながったとみている。
 県内では10月、浜田、雲南、江津各市の高齢者福祉施設クラスターが計4件発生。感染者の年代別では80歳以上が40.6%を占め、ブレークスルー感染者の平均年齢も77.9歳で、9月の54.3歳から大幅に上がった。
 ブレークスルー感染者は無症状や軽症者が多い傾向で、県は早めの受診や検査を呼び掛けている。

●沖縄で集団免疫の可能性「無症状、感染者の16倍」 友知沖国大教授ら分析
 2021年11月11日(木)配信 琉球新報
 【宜野湾】友知政樹沖縄国際大学教授と河野光雄中央大学名誉教授が10日までに、新型コロナウイルス感染拡大に関する研究報告書第5弾をネット上に公開した。第5波を経て沖縄では計算上では免疫化率が8割を越え、感染が広がりにくくなる「集団免疫」が達成されている可能性があると指摘した。「ワクチン接種をさらに推進すると同時に、現状の到達点を明らかにするために大規模な抗体検査を進め、抗体保有率を早期に明らかにすべきである」と提言する。

 論文の公開日は10月17日付。友知教授らは昨年11月に発表した論文で、従来の感染症の分析に用いられる数理モデル(SIR)に、無症状の感染者が感染を広げることなど新型コロナの特徴を加えた独自の数理モデル(SIIR)を考案。無症状の感染者が発症者の「16倍近く存在する」と指摘していた。

 今回の報告はその後の第4~5波の感染者数を分析した。第4波にピークが2回あった沖縄の状況について「観光客によってもたらされた感染拡大は一時的なものとして終わりかけたが、感染力のある無発症感染者が野放しのまま第4波後期の感染拡大を駆動したと思われる」と指摘した。

 沖縄ではワクチン接種率が6割程度であるが、発症者数と推定される無症状者数の累積は人口比で5割になる計算で、これらを考慮すると沖縄などで「免疫化率」が77.3~96.7%に達すると推計される。沖縄で「集団免疫が実現している可能性もある」としている。

 またワクチン接種のスピードが遅い場合、逆効果として「感染拡大期間を長引かせる」と指摘。感染を早期に終息させるには「一挙に接種することが決定的に重要だ」とした。
 友知教授は「集団免疫が達成されていたとしても小規模な感染は発生しうるので、日々の感染対策は引き続き重要だ。また免疫が効かない新たな変異株が入って来た場合には集団免疫がない状態に逆戻りするため、水際対策は極めて重要だ」と話した。

▼一時日本で最も感染率の高かった沖縄ですから、あり得ることかなと思います。ただ、この情報は医師の間で閲覧した人数は多かったものの、その後他のネットワークで話題になっていなかったようで、皆半信半疑の状態ではないかと思います。また沖縄でのCOVID‐19激減は説明できても、他の地域では「集団免疫」が激減の理由にはならないと思いますから、今後の推移と検証が必要でしょう。

●「第5波の病床確保、実効性がなかった」、阿南氏らが分析
 病床確保を都道府県と医療機関の約束事に、分科会専門家ら提言
 2021年11月16日(火)配信 m3.com編集部
 「第5波では確保病床の使用が50~60%の中で入院困難になった。実効性がなかったということで、反省すべきだろう」。神奈川県医療危機対策統括官の阿南英明氏が、11月16日の政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の後の会見で述べた。阿南氏と同分科会会長の尾身茂氏を含む計9人の専門家は、「第5波までの医療提供体制の検証と教訓に基づく今後のあり方―都市部を中心に―」を取りまとめ、分科会の資料として提出した(資料は内閣官房のホームページ)
 取りまとめは①日本の医療構造特性、②第5波までの医療対応に関する検証、③過去の教訓から改善の余地が期待されること、④第6波に向けた医療体制づくりの具体―――の4章からなる。【注、以下は適宜筆者が省略しています】
◆日本の医療構造、慢性期にシフトしている。
 OECD諸国に比べると急性期病床の役割が慢性期医療にシフトしている。【筆者の考えを述べますと、これは日本の急性期医療が本当の意味の急性期医療をしていない。例えばガンは本当の意味の急性期ではない。心肺疾患、脳卒中などはまさに急性期ですが、感染症も急性期病床を必要としているので、ここでは感染症を軽視していたと明確に言えばいいのです】
◆利用率80%が限界と認識を
 病床逼迫の要因を分析し6つの理由をあげた。①軽症者の管理の問題。②病床確保したものの、「行政の管理下での大きな感染の波のときに対応できる仕組み作りが追いつかなかった」。【筆者注、要するに保健所等の人員の配置が上手くできなかったということ、当然である。】③病床確保には病院の負担が大きい。【つまり1床確保するには2-3床犠牲にすることになる。これも当然】。④他の疾患の患者を移動させる必要があって地域の医療を支えるという医療機関にはストレスな状況である。⑤実効性を伴わない病床確保。つまりベッドはあっても対応できる医療従事者の人員が確保できない。⑥第5波で拡大した臨時医療施設や入院待機ステーションについて、「ただ収容できる場所を作ればいいというわけではない」として医療の一部分として運用することが肝要と述べた。
◆現実に運用可能な病床数の検討が必要
 今後の流行に備えて改善の余地が期待できる点として
①自宅・宿泊施設療養で患者急増期にも適切なモニタリングができる情報共有ルールの構築、②現実に運用可能な病床数を検討した上での病床数積み上げ、③病床確保を都道府県と医療機関が事前に約束する、④効率的な病床運用と広域での入退院調整を管理する、⑤確保病床の80%程度の稼働ができる調整機能の構築、⑥臨時医療施設の設置の際の人員配置等の確保検討――を挙げた。

▼いかがですか。既に実際にやっているところもあるはずで、何を今さら・・・・・・。総花的で役人の文章です、と悪口が言いたくなります。COVID‐19激減の今、「神が与えた猶予期間」として、具体的に動いてほしいものです。恐らく現場ではいろいろ動いていらっしゃると思います。引退した老骨がとやかくいうことではないでしょうが。

つづく