[720](寄稿)「日本版CDCに必要なこと」

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ペンギンドクターより
その1

皆様
 コロナで送信の回数が増えることに慣れて、毎週一回程度送らないと落ち着かなくなりました。自分の勉強のためでもありますが、わずらわしいと思われる場合は、すぐに削除してください。先日、分科会専門家の提言の概略をお伝えしましたが、その時の資料の内容をお知らせします。私の批判ばかりでは片手落ちですから。そして、某保健所長の「愚痴?」「怒り?」も転送します。

●次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像(概要) 
令和3年11月12日 新型コロナウイルス対策本部
基本的考え方
○ワクチン、検査、治療薬等の普及による予防、発見から早期治療までの流れをさらに強化するとともに、最悪の事態を想定して、次の感染拡大に備える
○今夏のピーク時における急速な感染拡大に学び、今後、感染力が2倍となった場合にも対応できるよう、医療提供体制の強化、ワクチン接種の促進、治療薬の確保を進める
○こうした取組により、重症化する患者数が抑制され、病床ひっ迫がこれまでより生じにくくなり、感染拡大が生じても、国民の命と健康を損なう事態を回避することが可能となる。今後は、こうした状況の変化を踏まえ、感染リスクを引き下げながら経済社会活動の継続を可能とする新たな日常の実現を図る
○例えば感染力が3倍となり、医療がひっ迫するなど、それ以上の感染拡大が生じた場合には、強い行動制限を機動的に国民に求めるとともに、国の責任において、コロナ以外の通常医療の制限の下、緊急的に病床等を確保するための具体的措置を講ずる

1、医療提供体制の強化
<今後の感染拡大に備えた対策>
①病床の確保、臨時の医療施設の整備
入院を必要とする者が、まずは迅速に病床又は臨時の医療施設等に受け入れられ、確実に入院につなげる体制を11月末までに整備
○今夏と比べて約3割増の患者(約1万人増(約2.8万人→約3.7万人))の入院が可能に

 ・病床の増床や臨時の医療施設における病床確保(約5千人増)
 ・感染ピーク時において確保病床使用率8割以上を確保(約5千人増)
 ・入院調整の仕組みの構築。スコア方式の導入等による療養先の決定の迅速・円滑化※公的病院の専用病床化(約2.7千人の入院患者受け入れ増)(病床増約1.6千床分)
○今夏と比べて約4倍弱(約2.5千人増)の約3.4千人が入所できる臨時の医療施設・入院待機施設を確保

②自宅・宿泊療養者への対応
全ての自宅・宿泊療養者に、陽性判明当日ないし翌日に連絡をとり、健康観察や診療を実施できる体制を確保
 ・保健所の体制強化
 ・今夏と比べて約3割増の宿泊療養施設
の居室の確保(約1.4万人増(約4.7万室→約6.1万室))
 ・従来の保健所のみの対応を転換し、約3.2万の地域の医療機関と連携してオンライン診療・往診・訪問看護等を行う体制を構築
病状の変化に迅速に対応して必要な医療につなげ、また重症化を未然に防止する体制を確保
 ・全ての自宅療養者にパルスオキシメーターを配布できるよう総数で約69万個を確保

 ・入院に加え外来・往診まで種々な場面で中和抗体薬・経口薬を投与できる体制構築

③医療人材の確保等
感染拡大時に臨時の医療施設等が円滑に稼働できるよう、医療人材の確保・配置調整を担う体制を構築
 ・医療人材派遣に協力可能な医療機関数、派遣者数を具体化
 ・人材確保・配置調整等を一元的に担う体制を構築
 ・公立公的病院から臨時の医療施設等に医療人材を派遣

④ITを活用した稼働状況の徹底的な「見える化
医療体制の稼働状況をG‐MISやレセプトデータなどを活用して徹底的に「見える化
 ・病床確保・使用率(医療機関別:毎月)
 ・治療薬の投与者数(都道府県別:毎月)
 ・オンライン診療・往診等自宅療養者に対する診療実績(地域別:毎月)

⑤さらなる感染拡大時への対応
○今後、地域によって、仮に感染力が2倍を超える水準になり、医療のひっ迫が見込まれる場合、国民にさらなる行動制限を求めるとともに、国の責任において、コロナ以外の通常医療の制限の下、緊急的な病床等を確保するための追加的な措置を講ずる。
 ・国・都道府知事は地域の医療機関に診療等について最大限の協力を要請
 ・コロナ患者受入病院に、短期間の延期ならリスクが低いと判断される予定手術・待機手術の延期等を求める
 ・公立公的病院に追加的な病床確保や医療人材派遣等を要求、民間医療機関にも要請

○感染力が2倍を超え、例えば3倍となり、さらなる医療のひっ迫が見込まれる場合、大都市のように感染拡大のリスクが高く病床や医療人材が人口比で見て少ない地域等について、当該地域以外の医療機関に、コロナ以外の通常医療の制限措置を行い、医療人材派遣等を行うよう、国が要求・要請。こうした措置が速やかに解除されるよう、国民にはさらなる行動制限を求める

 以上です。さて、以上の具体的な体制は新型コロナウイルス感染が激減(本当に激減したの?)した今、どこまで動いているでしょうか? ITを利用した稼働状況の「見える化」などが短期間に可能などと誰も思いませんが、その他については、上記の分科会が提言をまとめて発表すると同時に分科会・厚労省日本医師会、各種の病院会、大学病院等とオンライン会合を主宰し、行動にうつせば可能だと思います。やるべきことはわかっているわけですから、オンライン会議を開始して、それぞれの都道府県と医師会にも行動を促せばいいと思いますが。実際には各団体はコロナ患者が激減して、ホッとして英気を養っているというのが現状でしょうか?

 ここでちょっと話題を逸れます。
 前に紹介した村上陽一郎編『コロナ後の世界を生きる――私たちの提言』(岩波新書、2020年7月17日第1刷発行)に以下の提言があります。
●黒木登志夫「日本版CDCに必要なこと」
 アメリカのCDC(Center for Disease Control and Prevention)というのはアメリカ国民の健康を担う司令塔です。その予算額は年間1.2兆円、1万5000人のスタッフを抱えています。黒木氏は日本版CDCを作れば素晴しいが、日本にできるだろうかと問いかけています。そして最後に否定的だと延べ、問題点は以下のものを挙げています。(2020年6月頃の時点の考えと思いますが)。最後の文章(p55-56)を記します。

●私の考える問題点を以下に記す。
・行政的、官僚的発想から抜けられない厚生官僚
・互いに忖度し合う政府と専門家会議
エビデンスを無視した政策決定
・透明性のない運営
・誤りを認めない体質
・現場を無視した体制
・スピード感の欠如
・社会への発信軽視
・透明性のないトップ人事
 さらに深く考えれば、このような問題の背景には、経済至上主義による「選択と集中」と「グローバル化」があるのだ。コロナ後の世界は、これまでの価値観とシステムを見直すチャンスでもある。

 以上です。きょうはこのへんにしておきますが、コロナのおかげでNHKはじめテレビの番組を録画してよく観るようになりました。民放の「ポツンと一軒家」「三宅裕司のふるさと探訪」、BSイレブン「警部モース」なども観ますが、BSプレミアムの「ヒューマニエンス」は人体研究の今がわかって勉強になります。女房の肩をもみながら(たまに私ももんでもらいます)、二人で毎週欠かさず観ています。では。