[725]広がる“中国化”(その4)

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広がる“中国化„その4<国際社会で影響力を増す中国>

中国が推し進める一帯一路は世界140か国に関与しています。

 一帯一路の沿線に位置する68か国のうち、カンボジアをはじめ23か国が、中国からの債務を返済できなくなる可能性があるといわれています。
 これらの国では、港の運営権などを中国に譲渡したり、中国軍の補給基地が設置されたりする事態になっています。いずれも、一帯一路のシーレーンにとって重要な位置にあります。

 各国が中国側と交わした契約書では、何らかの違反があったと認定された場合、ただちに契約が打ち切られ、一括返済を迫られることになっているのです。例えば台湾の承認に関する事項など中国にとって大切な問題で違反とされれば契約解除となる可能性があります。
 
 香港で反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」が中国のテコ入れによって施行されました。ところが、国連の人権理事会では、懸念を示す国(27)よりも、中国を支持する国の数(53)が上回りました。その大半が、中国から融資を受けている一帯一路の国々でした。
 中国の外交戦略に詳しい国営メディア・環球時報の胡錫進(こ・しゃくしん)編集長は中国の経済支援に疑念を持つのは筋違いだと主張します。

「一帯一路はウィンウィンになる関係です。よく考えてください。中国が強制的に推し進めたものではありません。中国の海外進出は、高度な融合を促進することを目指しています。絶えず協力関係を結び、絶えずビジネスを行い、ますます大きくなるのです」

 国営メディアの編集長は中国政府を代弁しているのでしょう。その釈明の裏で進行する事態は一帯一路戦略が単に経済的な領域にとどまらず、中国の軍事政策にもかかわることがあるのです。

疑惑の空港

 中国企業が土地を借り上げ、リゾート開発が進むカンボジア・ダラサコーに建設中の新空港に、軍事利用の疑いがかけられています。プノンペンの国際空港よりも長い3200メートルに及ぶ滑走路があり軍用機も利用できる規模です。
 中国は5年前からカンボジアとともに合同軍事演習を行い、関係強化を進めており、以前カンボジアと軍事演習を行っていたアメリカは、強い懸念を示しているようです。
 駐カンボジアアメリカ大使のパトリック・マーフィーによれば、これは中国の国有企業が、秘密裏に行ったプロジェクトだといいます。

中国の「国防動員法

 疑惑の根拠となっている中国の「国防動員法」は、有事の際は民間資源でも軍による接収を可能にします。中国の「軍民融合」の思想を国外でも適用するのではないかと懸念しているがアメリカです。
 一方、ここでリゾート開発を行う中国企業正恒集団・鄧丕兵会長がNHKの取材に応じ、そうした指摘は、杞憂に過ぎないと語りました。

カンボジア政府は独立した主権国家であると繰り返し主張しています。国内に第三国が軍事目的の基地を持つことを認めていません。空港の建設は、今後の発展を考えると不可欠なのです」

 軍事利用の疑念は晴れないと考えるアメリカは、中国企業に対し、資産凍結などの制裁を科しました。

一帯一路、最大の都市リゾート開発。そこは、激しさを増す米中対立の最前線となっているのです。
 台湾問題をめぐって米中の政治的軍事的緊張関係が高まっています。アメリカと軍事同盟関係にある日本では岸田政権が自衛隊に「敵基地攻撃能力」をもたせるという自民党積年の課題を政治日程にのぼらせています。

 軍事的緊張が高まる中で、、2021年10月、リアム海軍基地に軍事関連とおぼしき建物が建てられました。リアム海軍基地はベトナムやマレーシア、フィリピンが中国と領有権を争う南シナ海に開かれたタイ湾の入り口に位置する軍事的な要衝です。カンボジアが中国による独占的な基地の軍事利用を認める見返りに、中国がインフラを整備する密約を結んだ疑いが指摘されてきたところです。
 
つづく