[726]広がる”中国化“(その5)

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広がる”中国化“その5です。<一帯一路への風向きが変わるヨーロッパ>

 中国が推し進める一帯一路はいまヨーロッパを中心に、行き詰まりも見えています。
 バルカン半島モンテネグロで問題となっているのが、建設中の高速道路です。人口わずか60万のこの国に中国が1000億円に上る融資を行いました。

 「当時10億ユーロの融資は国のGDPの3割に相当する巨費でした。日本がGDPの3割を借りたと想像してください。中国側が当時の閣僚に個人的に働きかけたかどうかは、時が教えてくれるでしょう」(アバゾビッチ副首相、NHKの取材参照)

 工事は、中国の国有企業が請け負っています。道路は2年前に完成予定でしたが、工事は難航し、まだ完成していません。一方で、ことし7月から中国への債務の返済は始まっています。アバゾビッチ副首相は、中国は重要なパートナーだとしながらも、こう証言しました。
 「我が国が中国側と結んだ契約は本当にダメです。国土を担保にしたのですから信じられません。何が担保なのか(契約内容が)不明瞭ですが、外交施設以外が担保だということです。あえて善意の助言をさせてもらうなら、中国は自国のイメージに少し気をつけるとよいと思います」と。
 加盟国の半数以上が一帯一路に参加するEU。これまで中国との経済的な結びつきを重視してきましたが、立ち位置を変え始めています。

グローバルゲートウェイ戦略

 一帯一路戦略に危機感をもつ欧州委員会は12月1日途上国支援として7年間で3000億ユーロ(約38兆円)を投じる計画を発表しました。
「グローバルゲートウェイ」戦略と呼ばれるこの計画は、フォンデアライエン欧州委員長が「一帯一路の真の代替案だ」と強調しています。バルカン半島から黒海沿岸、アフリカ、アジア、南米の途上国に「民主主義」を理念として気候変動対策やデジタル化、サプライチェーンの整備などを進めるといわれていわれていますが、現地に受け入れられるかどうか、まだわかりません。

人権問題に厳しい姿勢

 EU新疆ウイグル自治区での人権問題に厳しい姿勢を示し、ことし、中国の当局者に対する制裁に踏み切りました。中国に制裁を科すのは、天安門事件以来32年ぶりのことです。

 風向きが変わる中、習近平国家主席はことし、ある指示を出しました。
 習近平国家主席はいいます。「自信を示すだけではなく、謙虚で、信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージを作るよう、努力しなければならない」

中国共産党 広報戦略の強化

 岐路に立つ「一帯一路」でいま、中国共産党は広報戦略に力を入れ始めています。
 NHKスペシャルは中国の援助によって、300床の病床を持つカンボジアの総合病院の中国メディアのプロパガンダを紹介しました。
 
 中国人記者「新型コロナが広がっていますが、ここは今後カンボジア感染症対策に使われますか」

建設担当者「はい。カンボジアの保健相も視察に訪れ、期待していました」

中国人記者「多くの方が治療できますね」

 このメディアはことし、中国企業の資金で設立された、APタイムズという動画の配信を行うネットメディアです。中国政府からは、外国で宣伝活動を行う組織として認定を受けました。
 APタイムズ社長の李濤(り・とう)はかつて国営メディア・中国中央テレビの番組制作にも携わり、一帯一路に貢献したいとカンボジアにやってきました。

 李は「私たちの主席に感謝します。帆を上げ出航しよう。ここで夢を実現しよう。光り輝く未来に手を携えともに歩もう。」「カンボジア国民の中国への感謝と両国の友情を伝える。それが私たちの役割です。我々はプラットフォームとなって両国の懸け橋となるのです」といいます。いま、カンボジア政府の中枢に人脈を広げることに心を砕いている李は、フン・セン首相に30年近く仕えているカンボジアカニャリット情報相を会社に招きました。李は、福袋を用意し大臣の誕生日である当日に、花束とともに、さりげなく手渡しました。
 カニャリット情報相が福袋を受けとる場面が放映されました。中身まではわかりませんがこういうことを中国系の企業は日常的に行っているのかもしれません。
 そのリアルな現実が放映されるのは驚きです。
つづく