[740](寄稿)「がん」の話

f:id:new-corona-kiki:20211221055624j:plain
ペンギンドクターより(12月17日)
その1

皆様
 朝晩寒いですね。温暖化そのものは変わらないのに寒く感じるのは年のせいだと思います。室温は日差しで二十度近くてもパソコンに向かうときは、足元の足温器のスイッチを入れています。今朝は雨で、「寒い時は身体を動かすに限る」と、師走の恒例行事の大掃除に一階の部屋の窓ふきなど雑巾がけをしました。明日は二階の部屋のカーテン洗濯+雑巾がけをする予定です。一方、女房は年賀状の印刷をしてくれました。これから数日かけて年賀状にひと言をペン書きでつけ加えてポストへ投函です。

 COVID‐19についてはオミクロン株の動向が気になりますが、日本でのデルタ株は沈静化 したままです。本日は「医療あれこれ(その63)」を送ります。転送するMRICの主張は「和田眞紀夫医師」です。デルタ株沈静化以後、和田氏の主張は久し振りです。彼の意見は具体的でまさに現場からの発信と注目していました。しかし、今回の意見はいささかインパクトに欠けますが、現状の解説として転送します。

 さて、本題です。私の現役のころの専門の「がん」のお話から始めます。

 すい臓がんでは医学部の同級生が少なくとも3人死んでいます。同級生100人ほどのうち物故者は13人ですから、割合は高いと言えるでしょう。最も予後不良のがんです。一般的にがんは2:1と男性に多いのですが、すい臓がんに限り、ほぼ1:1で女性にも多いがんです。私がH病院にいた時、一年で3人のすい臓がんを見つけましたが、全員手術不能でした。しかも3人とも40歳未満の女性でした。3人とも国立国際医療センターの胆嚢・すい臓専門の後輩に送りましたが、「そちらには、どうしてそんなにすい臓がんが多いのですか?」という質問を受けました。偶然ですが。

 なお、K君の「肺がん」ですが、タバコが原因の「扁平上皮癌」であり、胸部の単純写真ではわからないことが多いのが実情です。つまり、気管に近い気管支に多く、CTでないとわかりません。彼の場合は、「反回神経麻痺」があって見つかっていますから、残念ながら進行した状態でようやく診断がついています。
 反回神経とは迷走神経(消化管などに分布する10番目の脳神経)の枝で、右は右鎖骨下動脈で前方へ反転して上方へ、左は大動脈弓で反転して上方へ分布し、甲状腺の背部、気管にそって声帯に分布します。反回神経麻痺で「嗄声(しゃがれ声)」になります。声帯に直接影響する喉頭がんで「嗄声」が起こりますが、反回神経が麻痺した状態でも「嗄声」が起こります。したがって、甲状腺がんでもしゃがれ声になります。私はH病院で50代の女性でタバコを吸っていないのに「嗄声」があり、甲状腺がんを見つけたことがあります。また、食道癌でも起こります。特に食道がん手術でリンパ節を系統的に摘出すると反回神経を傷つけて術後「嗄声」を引き起こします。傷つけただけで、切断しなければ(特に電気メスの使用では再生しない)半年ぐらいで元に戻ります。食道がんの多くの原因がアルコールとタバコで、喉頭がんや肺がんの原因の多くはタバコですから、このへんの癌は「嗄声」で見つかることが十分あり得るということです。しかし、肺がんも食道がんも「嗄声」があれば、進行した状態ですから、予後は極めて悪いと言えます。

 すい臓がんに戻ります。女房の同級生の件です。彼女が腹膜播種(腹腔内に転移が広がった状態)にて見つかったすい臓がんです。今年の3月に診断がつき、腹腔内には断続的に抗がん剤を皮下に埋没したチューブから投与、さらに別の抗ガン剤を静脈より全身投与しています。抗がん剤の副作用で髪の毛は抜けましたが、腫瘍マーカーも正常に戻り、現在元気です。コロナ下ですが、4月初めのお見舞いに続いて、先日東京の彼女のマンションで5人で同級会もやったようです。したがって、女房は今年2回上京しています。彼女は「73歳まで生きられればいいな」と言っているようです。確定診断後の生存日数の中央値は291日、1年生存率は40%というのがすい臓がんの現状です。

 もう一つ、私が今最も信頼し尊敬もしている作家・評論家は「佐藤優」です。ご存じの方も多いでしょうが、彼は1960年生まれの61歳です。私は彼の本を100冊ほど読みました。彼は以前から腎臓が悪いと聞いていました。経緯は不確実ですが、末期の腎不全で奥さんから腎臓移植の可能性を探るため、検査したところ、前立腺がんが見つかったとのことです。転移の有無を検査中とのこと。
 前立腺がんだけならともかく、腎臓移植ができなければ、血液透析になるとのことで、一日4時間(昔から)の睡眠で月に2000枚の原稿を書いている佐藤優の仕事に支障が出ないか心配です。このことはいずれ詳しく書きます。
 きょうはこのへんで。