[755]農民工 故郷に帰る その5

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賭けに出た元農民工・張建平

 帰郷してすでに2年がたち張建平は、賭けに出ようとしていました。大きな牛4頭、子牛を6頭買うために新たに300万円を借りました。大きなリスクを背負うが、うまくいけば一気に借金を返済できる。
 牛の販売業者とのやりとりです。

販売業者「小さな牛は34万円でどう?」

張「33万円」

販売業者「無理だ」

張「1万円の違いだろ」

販売業者「あの牛を他の人にいくらで売っていると思う?36万円だぞ」

必死の交渉が続く。

張「どうか負けてくださいよ。また買うから」

販売業者「お前も俺もまじめな人間だから、大きな牛はその値段でいい。子牛は・・・」

張「兄さん、いいだろう。今度俺のところに来たら、ご馳走しますよ」

 こうして張さんは牛を買いました。家族の将来がかかった大切な牛をトラックに乗せ、12時間かけて村へ帰りました。

「理想」の実現を待ち続ける人々

10月1日、国慶節。72回目の建国記念日を迎えた。

 資本主義化して急速な発展を遂げた中国は、労働者階級農民の搾取と収奪のうえにいま、「社会主義現代化強国」という名の資本主義大国として「総合国力で世界の先頭に立つ」ことを目指しているのです。

 フフホトで国慶節を迎えた張建平の長男・新雨。深刻な表情で、あるニュースを見ていました。不動産開発の巨大企業、恒大(こうだい)グループの経営危機。

新雨「恒大だけでなく、不動産業界全体が将来どうなるか分かりません。建築関係を専攻している自分の未来がどんな影響を受けるのか、心配です」

 習近平中華民族の発展を掲げるけれど、新雨は自らの夢の行方を、まだ見通せずにいる。

 紅石砬村では、張建平を父親の長祥が黙々と支えています。張「もう80歳近いのに申し訳ない。助かっています」と張は語ります。

長祥「これからお前も、俺みたいにここで年をとる。『落ち葉は根に帰る』ということだ。俺たちは苦労することだけは得意だからね。苦労に耐えなければ、生活はよくならないのだよ」

冬に備えて牛舎を整備する張。最低気温はマイナス20度、草木も凍る。

張「もうじき冬です、とても寒いよ。でも冬が来れば、春も近くなる」

 中国共産党社会主義市場経済という矛盾したスローガンのもとに中国人民を「社会主義」建設の破産から目をそらせ、資本主義大国化する方向に遁走を続けています。けれどもソ連邦の自己崩壊後、世界中を席巻したかに見える資本主義はいま危機を深めその犠牲を労働者階級に転嫁し生き延びる道を模索しています。
 新型コロナ感染症パンデミックは危機に立つ現代資本主義の暗部をうかびあがらせることになりました。中国も例外ではありませんでした。
 故郷に帰った農民工は自分たちの生活を守ることのできる社会をつくるために組織的に団結してたたかう日を必ずつくらなければなりません。
 私は故郷に帰った農民工とその家族の現状を知り今の中国で生きる民衆の苦労と苦悩を感じとることができました。日本の私たちもいま、新型コロナ危機のなかで解雇、雇い止めされ、そして様々な形をとった賃金抑制攻撃をうけています。中国労働者階級人民と連帯して低迷する労働運動を活性化させるためにたたかわなければなりません。

    「農民工 故郷に帰る」以上です。