[756](投稿)山の小僧

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<卓上四季>山の小僧
01/05 05:00
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「おほさむこさむ 山から小僧がとんでくる」。ある寒い冬の晩のこと。奥座敷のこたつにあたりながら、童謡「おおさむこさむ」を口ずさむおばあさんに三郎は尋ねる。「小僧がなぜ山からとんでくるの」。童話作家、土田耕平の「大寒小寒」の冒頭の場面である▼山にはこたつも家もない。木の股から生まれた山の小僧はひとりぼっち。人家の外で「火にあたらせて」と頼んでも、その声は人間の耳に届かない▼「もしかすれば、今じぶんお家の門へきて立つてゐるかも知れない」。おばあさんの説明に少し気味悪くなる三郎。だが、おばあさんが焼いてくれた餅を食べるうちにすっかり小僧のことも忘れてしまう。かすかな後ろめたさが残るお話だ▼コロナ禍などで困窮する人々を支援する動きが年末年始も各地であった。炊き出しには長い列に並ぶ姿があり、自治体やNPOが設けた生活や医療の相談の窓口にも多くのSOSが届いている▼昨年暮れから数年に一度の厳しさという寒波に見舞われた日本列島。その寒空の下、行く当てもなく、その日の糧(かて)にも苦労する人々がいる。先の見通しが立たないという訴えは切実だ▼三郎が山の小僧に思いをはせたのは、ときどき風で吹きたわむ庭の竹の音に耳をすませたからだった。寒の入りを迎えてますます寒さも強まる季節だ。気づいたことから目を背けず、声なき訴えにも耳をそばだてたい。2022・1・5


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農民工の「切実な物語」は、心打つものでした。
世界中の「戦争前夜」のような動きとコロナや経済苦で苦しむ人々の姿が眼前に浮かびます。

今年もよろしくお願いいたします。

石川木鐸