[760]民主主義VS権威主義?

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 新聞各紙は2022年世界を民主主義と権威(専制)主義との対立として描いています。米中の対立と相互依存を軸として揺れ動く現代世界は各国の資本家階級の政治的代表部としての政府によって支配されています。統治の仕方をアメリカ、日本などを民主主義的といい、中国、ロシアなどを権威主義的というわけ方をしていますが本当にそうなのでしょうか。
 
アメリカ民主主義の終わりのはじまり

 昨年の1月にアメリカでトランプが大統領選挙で敗北したことに怒った支持者が、トランプの負けを正式に決める手続きを行っていた連邦議会を占拠して選挙の不正を訴えました。この事件は世界に向かってアメリカの民主主義的統治の危機を告げ知らせました。あの映像はアメリカ国家権力の選挙管理機能が民衆の直接行動によって壊される事態をリアルタイムで伝えました。このときのアメリカは「民主主義的統治形態」の危機を露わにしたのでした。
 昨年11月のアメリカ下院本会議はトランプの元首席補佐官マーク・メドウズを議会侮辱罪で起訴することを司法省に求める決議を可決しました。議事堂の占拠を止めるよう保守系のFOXニュースの司会者などトランプに近い人物からメッセージをうけていたにもかかわらず、支持者の占拠行動を黙認したというのが議会侮辱罪にあたるということです。共和党は2人を除いてこの決議案に反対しました。それは「アメリカ民主主義」破壊行動を下院の半数近くが認めたということを意味しているのです。
 議会制民主主義による統治形態は、資本家階級の階級的特殊利害を普遍的利害にみせかけるための一手段でしかないのですが、それが行き詰まっているということなのです。アメリカの労働者階級の多くがみずからの生活の危機に根ざす不安の解消をアメリカファーストを掲げるトランプ式排外主義に求めました。多くの民衆がトランプの選挙での敗北は不正によるものだと信じ選挙の破壊のために行動したのでした。
 もはや権威主義の対概念としての従来の民主主義は崩壊の端緒についたというべきでしょう。新型コロナ感染症の対策で世界的に強権的手段がとられています。進行する不況と格差拡大、失業の危機のなかで労働運動は低迷し不安になっている民衆のきもちを逆手にとってファシズム的統治形態が跋扈する時代に入ってしまいました。
 世界の支配階級の統治形態・イデオロギーを民主主義VS権威主義ないし強権主義というシェーマで見ることはできないと思います。境界線が消えつつあると思います。
 中国は香港やチベットの反対運動に対する弾圧をもって党専制支配体制を強化しています。
 現代世界は資本主義の限界が民衆の生活を圧迫しわき起こる反発を力で抑え込む時代に入っているのです。新型コロナ危機はそれを促迫しています。統治形態は議会制民主主義からファシズム的なものに変わってきているのです。
 日本では平和憲法が壊され戦争のできる国家への仕上げが憲法改悪によって完成させられようとしています。
 なんとかしなければ危ないです。