[764](寄稿)MRICを主宰する上昌広医師の「新年の挨拶」

ペンギンドクターより
その3
 転送するのは上昌広医師の「新年の挨拶」です。上昌広医師の主張はともかく、文中にある塩崎恭久厚労相の主張は傾聴に値すると思います。

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2022年新年によせて

上昌広

2022年1月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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明けましておめでとうございます。新しい年を迎え、皆様、いかがお過ごしでしょうか。


お陰様で、2004年1月に始まったMRICは、今年で19年目を迎えます。ここまで続けることができたのは、皆様のお陰です。この場をお借り、感謝申し上げます。

新型コロナウイルス(以下、コロナ)の世界的流行が始まり、3年目に入ります。欧米諸国と比べ、今冬の日本の流行は抑えられているものの、これは日本の対策が良かったからではありません。欧米でデルタ株、およびオミクロン株が大流行している中、アジアで感染が拡大しているのは韓国、ベトナムラオスくらいです。この三カ国も、その感染の規模は欧米とは比較になりません。12月19日の一日あたりの感染者数(人口100万人あたり、一週間平均)は、英1,138人、米392人であるのに対し、ベトナム185人、ラオス179人、韓国132人です。

コロナは流行当初から、欧米と比べ、アジアでの感染は小規模でした。ただ、今冬ほど、その差が極端だったことはありません。今夏、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、そして日本の流行は欧米とほぼ同レベルでした。なぜ、夏に大流行したデルタ株が、アジアでは、流行の本番である真冬に抑制されているのか、ワクチン接種(追加接種)では説明がつきません。

コロナは未知のウイルスです。その実態はまだわかっていません。コロナを克服するには、データを収集し、科学的な議論を積み重ねるしかありません。つまり、臨床研究を進めなければなりません。ところが、この点で日本は大きく見劣りします。

米国立医学図書館はPUBMEDという医学論文データベースを公開しています。医療ガバナンス研究所の山下えりかが、このデータベースを用いて、各国から発表されたコロナ関連の論文数を調べました。トップは米国、ついで中国、英国と続くのですが、日本は主要先進7カ国(G7)の中で最下位で、トルコと同レベルでした。人口あたりの論文数にすると、コロナ流行当初からOECDに加盟していた37カ国中、33位です。日本より下は、スロバキア、コロンビア、メキシコ、チェコだけです。なぜ、こんなことになるのでしょうか。そして、どうすればいいのでしょうか。

昨年11月27ー28日、東京都港区で開催された第16回現場からの医療改革推進協議会シンポジウムに出席した塩崎恭久・元厚労大臣が興味深い発言をしました。塩崎氏は、「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革だ」というのです。

塩崎氏が最も問題視したのは、我が国のコロナ対策の非科学性です。「PCR検査は偽陽性が多い」、「クラスターさえ追いかけておけば、感染を抑えることができる」に始まり、最近は「定量式抗原検査の感度はPCR検査と遜色ないため、検疫にPCRを使う必要はない」まで、科学的に間違った主張を繰り返してきました。

塩崎氏は、与野党を問わず、多くの政治家が情報ソースを官僚に依存していることを認めた上で、「国民はコロナ対策に科学的な合理性を期待するが、官僚組織で最優先されるのはムラ社会の理屈で、科学的合理性は二の次。非科学的でも、ムラ社会の対面を保った官僚が出世する」と批判しました。私は、全く同じ状況が医師やメディアにも通用すると考えています。

誰だって、社会に役立つ仕事がしたいでしょう。ところが、厚労省をはじめ、日本の医療界では、長いものに巻かれないと出世しないのです。こんなことを続ければ、優秀な若手から辞めていきます。その成れの果てが感染症ムラです。

塩崎氏は「できることなら政府には優秀な人材が集まって欲しい。そのためには、科学的に正しい政策を遂行した役人が評価されなければならない」としました。そして、そのような評価軸をつくることこそ、政治家の仕事であると断じました。ところが、自民党の総裁選で、このこと問題視した政治家は一人もいませんでした。

おそらく、医系技官と族議員や御用学者が仕切り、記者クラブが全面支援する日本の医療界は容易には変わらないでしょう。コロナ研究の惨状をみても、誰も批判しないのですから、行くところまで行くはずです。

では、我々に何ができるのか。私は官に依存しない公を作ることだと思います。そのためには健全な言論が必要です。権力に忖度せず、国民視点に立った科学的で合理的な議論を積み重ねなければなりません。私は、このような議論をするプラットフォームとして、MRICがお役に立てればと願っています。「ここが問題だ」「こうすればよくなる」という現場からの御寄稿をお待ちしています。本年も宜しくお願い申し上げます。

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