[772](寄稿)「専門家」の「提言」

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ペンギンドクターより
その1

皆様
 典型的な西高東低の冬型が続いています。今日の午後は風速9メートルとウェザーニュースが言うので、先ほど7時半より公園散歩に行ってきました。蝋梅(ロウバイ)が真っ盛りですが、他はサザンカぐらいで雑木林も寒々としています。しかし日差しは強く、東へ向かって歩くと軽い追い風になり、ポカポカしてきます。お日様の威力は大したものです。今日は太陽光発電が10キロワットを超えるのではないかと期待しています。

 オミクロン株感染の激増が続いています。
 今朝(1月21日朝刊)の朝日新聞によれば、「専門家会議」が
●「感染者が急増した場合、若年層の多くは軽症で自宅療養で軽快するため、検査せず臨床症状のみでの診断も検討を」
と提言したとあります。一方政府高官は
●「政府としてはできない。検査を控えるようにいって、重症化するなどしたときに責任はとれるのか」
と語った。

 凄いですね。「政府」と「専門家」が入れ替わっているとしか言えない発言です。この国の「専門家」というのはどういう人種なのか耳を疑います。まず「診断」というのは普通は医者がするものです。しかし、上記の発言は若者は感染したかもと思ったら医者にはいかず「自己診断して自宅にいなさい」ということになります。しかも「症状だけでどう診断するかは明記されていない」とのこと、これが「専門家」の「提言」ですから、呆れてしまいます。
 オミクロン株の場合、無症状か軽症が多いうえに、症状も風邪と区別がつきにくい。つまり発熱よりも咳や痰、だるさなどまさに一般的な風邪症状が主体です。それがウイルスをばらまくわけですし、オミクロン株はいわゆる「空気感染」に近い状況になっている極めて感染力の強いウイルスです。
 何だか、2020年4月日本感染症学会(厚労省等と結託した?)が、PCR検査をしないように「発熱が4日・・・」とか提言していた悪夢の再現です。あれから2年近く経っているのに・・・・・・と言葉を失います。

 さて開業医での具体的な実例です。
 一昨日1月19日(水)私はクリニックの外来で二人の女性に新型コロナウイルスの「抗原検査」をしました。
 一人は77歳女性です。80歳代の旦那さんが風邪症状(発熱なし)で念のため、抗原検査をしたら陽性、保健所に連絡し、別の施設でPCR検査で陽性、一日自宅待機後に、市立病院に入院となりました。昨日からこの77歳女性も「風邪症状」があり、来院、別室の発熱外来でナースが「抗原検査」をして陰性でした。院長が顔馴染みでしたので診察し、元気だからPCR検査まではしなくていいだろう、自宅待機続行という結論となりました。
 もう一人は、85歳女性、デイサービスに行っていたのですが、自分の前にいた人が「陽性疑い」とのことで心配して来院、車の中で待機してもらい、ナースが検査、こちらも陰性でした。私は外の車の患者さんのところに行って、「陰性でした。熱の出ないことも多いから、心配になったらいらっしゃい」と伝えました。風邪の症状もなく、認知症の薬も飲んでいる人ですが、反応もまずまずで元気に娘さんと帰っていきました。

 2020年4月時の日本感染症学会理事長の舘田東邦大教授が先日インタビューに答えて、2年前はPCR検査が出来なかったので医療逼迫・大混乱を防ぐためにやむを得ず学会として「発熱が4日・・・・・」という提言をしたが、今はPCR検査も1日30万件可能だから大丈夫というような主張をしていました。しかし、実態はどうか。
 MRIC主宰の上昌広医師の意見にもあるように、欧米その他の国のオミクロン株の感染者数を見れば、検査は一日100万の単位で必要だといえるわけです。そして日本におけるデルタ株の沈静化の時期にも諸外国での猛烈な感染者数があったわけですから、今の日本の状況は予測されていたわけです。そんなことは馬鹿でもわかります。
 また、現実には日本の検査能力はPCR検査も抗原検査も公称よりもはるかに多いのではないかと私は考えています。
 というのは、上記のクリニックでもPCR検査の機器は購入して持っています。在宅医療中心ですが、老健施設やクリニックを数多く運営していますし、職員も多いので、職員対象にPCR検査がいつでも出来るようにしているわけです。患者さんのPCR検査を引き受けると、そのための要員などで日常業務が不可能になるのでやっていません。患者さん向けにはインフルエンザ検査と同じように手軽に可能となったコロナ抗原検査をしている状況です。
 このように、厚労省および「専門家会議」は日本における現場の状況に対し「無知」としか言えないのではないか、いや日本の状況を把握しようとしていない厚労省の現状、さらに「医師免許証保有者」「医系技官」「現場で患者さんを診ていない医師」のみの「専門家会議」の現状が表面化した「提言」ではないかと思います。高齢者の検査はもちろん必要ですが、若者の検査をしなくていいのではなく、若者の検査をどうすれば可能かそれを考えるのが専門家会議で、私の予想では専門家会議の事務局をしている厚労省の役人の言い分をそのまま伝えているのではないかと邪推してしまいます。
つづく