[789]中国資本主義の先端 深圳 その1

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連合組合員より 

 昨年11月のNHKスペシャル、中国新世紀シリーズで「実験都市 深圳」を見ました。その後12月に放映された「農民工 故郷に帰る」を見た私は現代中国社会の跛行性に驚きました。このブログ[751]~[755]で貧窮している農民工の姿を伝えました。他方、深圳は資本主義的生産様式の最先端を走っています。深圳で今何が起きているのか映像解説を参考にして要約して書きます。

 資本主義大国となった中国は、いま北京五輪を開催しアメリカに対抗する「社会主義現代化強国」という名の資本主義国家として存在意義をアピールしています。次の100年、一帯一路戦略で世界を巻き込みながらどこへ向かうのでしょうか。 世界一の経済大国を目指す中国共産党が、繰り返す言葉があります。 「“創新”を推し進め、戦略的に科学技術の力を強化する」 「創新(そうしん)」。 付加価値の高い、新たな産業や企業を育てる、いわゆる「中華イノベーション」のことです。
 中国の経済成長が減速する中、次の成長エンジンとして期待をよせているのが、沿海部にある深圳(しんせん)です。

改革開放路線の先駆け深圳

 1978年鄧小平が改革開放を宣言して以降市場経済特別区となった1300万人のこの街は、中国共産党による資本主義化の尖端で、世界を席巻する企業を生みだしてきました。 平均寿命わずか3年と言われる中国のベンチャー企業。激しい新陳代謝の中で生き残ったものだけが、中国経済を牽引する存在となるのです。
 起業家はいいます「深圳ではお金がすべて。深圳は、勝てば大勝ち、負ければ何の価値もない」、弱肉強食の世界。 しかし、中国の起業家たちは、共産党の統制という「くびき」を逃れることはできません。 中国IT業界の巨人・アリババも厳しい制裁を受けました。党の管理の及ばないビジネスを手がけたことが理由と見られます。 共産党の存在がもたらす「強さ」と「あやうさ」を読みながら競争し、資本家たちは生き残りをはかる。労働者は賃金抑制攻撃を受けています。
 
中国共産党が主導する「中華イノベーション」。いま何を目指し、世界にどんな影響を与えるのか。
 
未来都市・深圳
 住民の平均年齢33歳、深圳は、中国でもとりわけ若く、特別な都市です。 公共のバスやタクシーはすべて電気自動車。ビルの谷間を自動運転タクシーが走っているといいます。 経済特区のこの街なら、あらゆる実験が可能だ。 ドイツ人起業家がいいます。
 「深圳は中国の中でも特別な都市。深圳に昔からいた人はいない。中国全土から集まった。新しいものを高速で開発、とても熱心だ。深圳はユニークな都市だ」

次々と生まれるベンチャー企業
 深圳のモノ作りを支えてきた巨大電気街「華強北(ファーチャンベイ)」は秋葉原の30倍の規模で、1万店を超える電子部品の問屋が軒を連ねています。 2000年代まで、華強北から偽iPhoneなど「山寨(さんさい)」とよばれるコピー商品が大量に生み出されていました。多いときには5千を超える山寨企業が、本物よりも早く安くつくろうと、競うように製品を開発した。 その激しい競争の中で、深圳には、大小様々な工場群が雨後の竹の子のようにつくられていきました。 例えば、ワイヤレスイヤホンの工場だけで、深圳には3千以上が存在し生き残りをかけた闘いを乗り越えたものだけが、さらに成長を続けることができるのです。

ベンチャー企業 
 ロボット開発で成長を続けるベンチャー企業「ドラボット」の社長の鄧小白(とう・しょうはく)は、27 歳でこの会社を立ち上げました。いつも着ているのは青いTシャツです。鄧さんの子どもの頃からの夢は 「『ドラえもん』をつくること」。「100年後に夢を実現したい。日本の『ドラえもん』は100年後に誕生したことになっています。誕生日は僕と同じ9月3日です」といいます。 鄧さんはAIとセンサーを組み合わせ、自らモノを識別してつかむ、物流ロボットを開発しています。 鄧さん「ドラハンドはオーダーどおりに果物を選別することができます。オレンジ3個、梨2個、リンゴ1個など、たくさんの大小さまざまな果物から選べます」といいます。
  起業のきっかけは、6年前(2015年)に首相・李克強(り・こっきょう)が、深圳を訪れ「大衆創業(たいしゅうそうぎょう)万衆創新(ばんしゅうそうしん)」を提唱したことでした。みなで起業し、新しい価値を生み出そうと呼びかけたのです。 すぐさま、起業ブームが起き、この年だけで深圳には、30万社以上の民間企業が誕生した。 鄧も、2人の仲間とパソコン3台だけでこの会社を立ち上げました。 物流ロボットの将来性に期待が集まり、起業を決めた翌日には、民間投資会社から1億7千万円の融資を受けました。起業を促す共産党の政策が、異例ともいえる投資熱を生み出していた。 鄧さんは「ラッキーでした。初めての起業でも、投資家の支援をもらうことができて、いいスタートを切ることができました。なぜ深圳で成功できるのか、その理由は私たちが安定した政治体制の下にいるからです」 といいます。
 ドラボットに、ある仕事が舞い込みました。依頼主は、中国伝統の酒・白酒(ばいちゅう)を製造する国有企業。古い生産ラインを一新したいと依頼してきたのです。
つづく