[797]中国資本主義の先端 深圳 その4

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世界とつながる新たなイノベーション

 改革開放の象徴として、深圳では様々な規制緩和が行われてきました。世界と直接つながり、イノベーションを起こそうという、新たな起業家たちも登場しています。 潘昊(はん・こう)は、深圳でも名の知れた起業家です。大企業によるトップダウンではなく、個人や中小企業が国境を越えたネットワークを結び、企業の新たな形態をつくることを目指しています。
 潘が立ち上げた会社は「シード」という名です。社員は200人あまり。今年はおよそ80億円の売上げを見込んでいる。主力製品は、電子回路。次世代の通信機器やIoT機器の頭脳となる。これまで2千種類以上を開発してきました。 ネットワークを重視する潘が用いているのが、オープンイノベーションという新たな方法です。例えば、ある電子回路を開発すると、その設計図ごとに公開し、世界のエンジニアなどと共有する。 それぞれが、電子回路に自由にアレンジを加え、カメラや時計など様々な独自製品を開発。専門性を活かし、自由に開発するため、社会に必要とされる製品が素早く生まれる。シードは売上げの一部から、収益を得る仕組みです。
 潘さんは「オープンイノベーションでは、数千人数万人の開発者が同じ技術を共有し活用します。例え大手企業でも1社だけでは困難ですが、ベンチャー企業みんなが参加すると、柔軟に効率よく問題を解決できます」と言います。 いまシードで、新たな製品開発が進んでいます。自社開発した電子回路をもとに製作した「振動センサー」はAIを内蔵し、取り付けるだけで、構造物の揺れを効率的に検知できる製品です。
 オープンイノベーションを目指す潘は、試作品を手に、中国の土木工学の権威に会い、専門家から、橋の揺れを検知するだけでなく、もっと有用な使い方もあるとアイデアをもらいました。 西南交通大学・張方教授は「いま(橋の)ボルトをチェックするとき、肉眼かドローンを飛ばし確認します。その映像を見て100個、1000個のボルトを全部確認しないといけません。落ちたボルトがあれば、すぐに警報を鳴らします。もし振動センサーをボルトにつけたら、緩んだときにすぐに警報を鳴らすことができます」 と言います。ボルトの周辺にセンサーを取り付け、振動の変化を観測することで、ゆるみ具合を確認できる製品を今後共同で開発することになりました。

 ボルト点検労働過程に振動センサーを導入することによって労働生産性は高度化します。労働生産性はこのような労働過程の技術的改善によって成し遂げられるのです。深圳で開発される新技術形態を中国全土の生産過程に導入することが追求されているのです。中国の資本家階級は技術的改善に夢中になっています。

 オープンイノベーションはネットワークによって進化しています。 潘さんは「これからのイノベーションにとって大事なのは、個人や中小企業の力です。世界中のイノベーターと、もっと積極的に交流を深め、みんなが安心して深圳に来て創業できるといいですね」と言います。
つづく