[876](寄稿)COVID‐19の2冊の本を紹介します

ペンギンドクターより
その1

皆様
 大型連休ですが、いかがお暮しでしょうか。私は昨日半年に一回の眼科受診をしました。白内障の手術後ですが、右目は原因不明の「網膜剥離」があるので、進行はしていないものの異常があれば受診するように言われています。最近右目に違和感があり、疲れ目に過ぎないと思うのですが、念のため昨日受診しました。特に問題はありませんでした。
 今の私には、読書と読書記録が一番の仕事なので、眼の異常が心配の種です。次回は11月頃の受診を考えています。
 歯科受診も半年に一度続けていたのですが、昔勤務していた埼玉県の病院まで行くので、コロナ禍の現在、2年余りご無沙汰しています。しかし、もう十年以上前に歯科衛生士さんに「数年ですべての歯が抜け落ちます・・・・・・」と脅かされ、「歯間ブラシの使用」を強く勧められたおかげで、毎日三食後には必ず歯磨きを励行し、「虫歯」「歯槽膿漏」の再発はなくなりました。「口臭」も減少したと思います。歯科衛生士さんには感謝してもし過ぎることはないと肝に銘じています。

 さて、ウクライナ問題で新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)が霞んだ感も無きにしも非ずです。しかし、まだまだ予断は許さないと私は考えています。ということで、COVID‐19の2冊の本を紹介します。転送する現場の医療者・山本医師の主張もお読みいただければ幸いです。(編集者註:次回紹介します。)ワクチン未接種者は単にワクチン反対という人びとばかりでなく、接種する時間が取れない人、接種して副反応の発熱で仕事を休むと派遣の勤務が切られてしまう・・・・・PCR検査も陽性なら仕事を休まざるを得ず、仕事を即座に失ってしまうという日本の現実が浮彫りになっています。

 中村祐輔『ゲノムに聞け 最先端のウイルスとワクチンの科学』(2022年3月20日第1刷発行、文春新書)
 著者の中村医師は医学・医療の世界では有名な人です。犯罪捜査に汎用されるDNA鑑定の基礎を確立した人であり、ノーベル賞有力候補でもあります。略歴を示します。1977年大阪大学医学部卒業。外科医として勤務した後、1984年にユタ大学ハワード・ヒューズ医学研究所研究員、1989年癌研究会癌研究所生化学部長、1994年東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授、1995年同研究所ヒトゲノム解析センター長。2012年シカゴ大学医学部教授・・・・・・。政府の様々な役職も務めています。COVID‐19についても医療者ネットワークで連載があり、いつも私は目を通していました。この本の目次を抜き書きします。第3章だけは項目も列挙します。

 第1章 すべてはゲノムが教えてくれる
 第2章 新型コロナウイルスのすべて
 第3章 検証・科学なき国の感染対策――何が間違ってどこがおかしかったか?

 感染者激減は高いワクチン接種では説明がつかない/日本が科学的な説明ができないワケ/感染状況と政府の対策を検証する/オリンピック強行開催がもたらした巨大な波/「感染症対策の大原則」を踏み外した安倍・菅政権/世界142位/ニワトリなら殺処分/必須だった大規模PCR検査/人口1000人あたり0.02回/感染者数が少ないのは検査をしていないから/変異ウイルスは感染力が強くなる理由/感染力が2倍になると10週間後にはほとんど変異型に置き換わる/アルファ型の脅威を見誤った政府/ゲノム解析を徹底した”科学立国”/神戸市独自の調査のおかげで/新たな変異ウイルスの解析は外国頼み/救えた命/”コロナ難民”18万人――医療崩壊は人災/十分に予測可能だった”不測の事態”/世界各所で変異ウイルスが出現/デルタ株のウイルス産生量は1000倍/後手に回り続けた政府/スマートウォッチで救えた命/ワクチン接種後の死者の死因の99%が解明不能/後遺症対策に無関心/アジア、中東の致死率が低いのはなぜ?/コロナウイルスを整理する/ちょっとした風邪が

 第4章 ウイルス――宿主に寄生し増殖する「無生物」
 第5章 ウイルスvs人体――戦う細胞・免疫
 第6章 ワクチン――感染症から人類を守る救世主
 第7章 「万能型」新型コロナウイルスワクチンの可能性
 特に第3章の国すなわち厚労省すなわち医系技官などの「感染症ムラ」に対する批判は辛辣で的を射ています。誰でも理解できることですが、著者はPCR検査の重要性を強調しています。全体として読みやすく、一部医療術語が頻発する部分もありますが、そのへんは飛ばしても意味は理解できると思います。是非一読を勧めます。

 宮坂昌之『新型コロナの不安に答える』(2022年3月30日第1刷発行、講談社現代新書

 宮坂医師については以前も紹介しました。『新型コロナワクチン 本当の「真実」』(講談社現代新書)という苦心した標題の新書でした。今回紹介する本は、2022年1月末時点でのデータを基に述べられています。情報は時々刻々変化するのでホームページを作ったとのこと、転記しておきます。
 https://gendai.ismedia.jp/list/author/masayukimiyasaka
です。
 この本は、それぞれの章が疑問に答えるかたちで述べられていて、大変わかりやすいと言えます。中村医師の本よりさらに理解しやすいでしょう。目次を列挙しておきます。章毎にさらに細かな疑問の項目があります。

 第1章 オミクロンは本当に恐るるに足りないのか?
 第2章 ワクチン普及でもなぜ感染が収束しないのか?
 第3章 デルタを制圧した日本で第6波の感染爆発が起きたのはなぜか?
 第4章 3回目追加接種は本当に必要なのか?
 第5章 追加接種の副反応と最適なワクチンの組み合わせは?
 第6章 ワクチンに深刻な副反応は本当にないのか?
 第7章 ワクチン接種によって将来予期せぬ問題が発生することはないのか?
 第8章 フェイクニュースの「からくり」を見抜く
 第9章 Q&A 新型コロナの疑問に答えます
 第9章だけが質問のようにみえますが、それぞれの章も具体的な記述で対応しています。
 45-46ページには、以下の記述があります。  
 「政府の中にも新しい感染症に対して随時対応できる専門の研究機関、政策立案機関、実行機関などを作ることが必要です・・・・・・ところが、これまでの歴史を見ると、日本政府は、感染症対策の重要性をある程度は理解しながらも、それを実行できていないのです。・・・・・・」とあり、2009年の新型インフルエンザの世界的流行に基づき2010年に公開された「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議報告書」に書かれた提言の不実行に言及しています。ただし、それに加えて良いニュースとして政府が約1500億円を投入して「先進的研究開発戦略センター」(SCARDA)を国立研究開発法人・日本医療研究開発機構の中に作るようですとも述べています。さらにワクチン開発のための世界トップレベルの研究開発拠点の形成にも約500億円の予算があてられるとのこと。さてどうなるか。厚労省天下り先になるだけで終わらないことを期待したいと思います。

 昨日でしたか、前回述べた「ロシア・ウクライナ戦争」の「専門家」廣瀬陽子氏の意見をMSNニュースで見かけました。直接戦争の今後を述べるのではなく、ロシア政府と関係の深い民間軍事会社(PMC:Private Military Company)という現代版「傭兵」ワグネルについての論評でした。彼女の『ハイブリッド戦争』にも詳しく述べられています。彼女が言及していた小泉悠『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021年5月10日第1刷発行)が先日駅ビルの書店で平積みになっていました。
「専門家」佐藤優氏については、いずれ述べたいと思います。今回はCOVID‐19関連のみです。
 では。