[904](投稿)泊村原発、再稼働差し止め判決ー札幌地裁


<フォーカス>安全立証不十分 北電を指弾 泊差し止め判決で地裁
06/01 09:35


 北電に泊原発全3基の運転差し止めを命じた31日の札幌地裁判決は、北電側が安全性の根拠を示していないことを理由に、放射能漏れ事故の「具体的危険」があると認定した。原子力規制委員会で再稼働に向けた審査が続いているにもかかわらず、安全基準を満たしていないと結論づけた異例の司法判断。豊富な知見や資料を持っていながら説明責任を果たそうとしない、北電の姿勢にも疑問を突きつけた形だ。

■「審理継続 相当でない」 同種訴訟 上級審で逆転

 「審理を継続することは相当ではない」。提訴から10年以上が経過した訴訟。谷口哲也裁判長は判決で、立証を尽くそうとしない北電の姿勢を非難した。北電が規制委に再稼働に向けた審査を申請してから8年半がたちながら、裁判でも主張立証を終えていない現状に対しても「泊原発の安全面や審査における問題の多さ、大きさがうかがえる」とまで述べた。 判決は、放射能漏れ事故の危険性を立証する責任は原告側が負うとする一方、北電が安全性の説明を尽くさない場合には「事実上、事故の恐れが推定される」と指摘。その上で「(北電側が)防潮堤の地盤の液状化を否定する具体的データを示していない」として津波に対する安全性を否定。使用済み核燃料の撤去請求は結果として棄却したものの、「(北電が)安全性の根拠を何ら示していない」として危険性自体は認めた。 原発の安全性に対する司法判断は、「(規制当局の)判断に不合理な点があるか否かという観点」で審理すべきだとした1992年の最高裁判決が先例となってきた。高度な科学技術的判断が必要なためだ。泊原発の場合は再稼働に向けた原子力規制委の判断が出ていないため、地裁は今回、規制委の安全基準を泊原発が満たしているかについて検討。北電側の説明状況を踏まえて結論を導いた。 同種訴訟では、資料の偏在を理由に電力会社側に一定の説明責任を負わせる枠組みが定着しつつある。今回の判決も同様の枠組みを採用したが、審理では北電が「規制委の審査中」を言い訳に主張を先送りし、地裁が再三苦言を呈する事態に。原告弁護団事務局長の菅沢紀生弁護士は「原発に関する資料を原告側が用意するのは難しいという実態を踏まえ、公平な判断を下してくれた」と評価する。 北電のずさんな対応は、規制委の審査でも露呈。昨年10月、5年8カ月ぶりに再開した火山対策審査で、知見が一切更新されていない資料を提出し、規制委の怒りを買った。訴訟と審査の双方からは、真摯(しんし)に安全性を追求、説明しようとの意識が薄い北電の姿勢が浮かぶ。 今回の判決は、安全神話が崩壊した今、北電に積極的に原発のリスクと、自社の考え方を明らかにするよう促したとも言える。 原発に慎重な世論は根強い。北海道新聞の4月の世論調査では再稼働を「認めてもよい」が48%、「認めるべきでない」が46%と拮抗(きっこう)。多くの市民が不安を抱える中、北電は安全性に関して何年にもわたり「現時点でこれ以上の主張はできない」と繰り返した。 震災後、住民側の主張を認めた司法判断は8件あるが、係争中の2件を除いて上級審などで逆転。司法の慎重姿勢を背景に、10基が再稼働するまでに原発の「復権」は進んだ。 国がさらなる原発再稼働を進める方針を示す中、控訴審では、より議論を深める訴訟指揮が裁判官に求められる。(角田悠馬)

■申請9年再稼働めど立たず 断層判断で難航 専門人材不足も

 泊原発は2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、定期検査で12年5月までに1~3号機すべてが停止した。北電は13年7月、原子力規制委員会に安全性審査を申請し、早期の再稼働を目指したが、審査は長期化。同時に申請した他の電力3社の4原発7基は再稼働したにもかかわらず、泊原発は9年近くたった今も合格できていない。 長期化の要因は、原発敷地内の「F―1断層」を巡る審査の膠着(こうちゃく)だ。新規制基準では、12万~13万年前以降に活動した断層を地震を引き起こす可能性のある「活断層」と定義。北電は申請当初から「活断層ではない」と主張し続けたが、断層の年代特定に必要な火山灰層が確認できなかった。追加の掘削調査を経て主張が認められたのは21年7月で、審査に8年を要した。 北電自身が審査に必要な資料の更新を怠ったり、規制委との情報共有が不十分だったりしたことも審査の遅れに拍車をかけた。規制委の更田豊志委員長は「北電に専門的な議論ができる人材が欠けていることが影響している」と指摘する。 審査の効率化を求める規制委は今春以降、「意見交換の場」を設けたほか、審査の論点をリスト化するなど、他電力に対しては見られない異例の対応をとる。 ただ、審査は▽原発を襲う可能性のある最大地震の想定「基準地震動」の策定▽最大の津波を想定した「基準津波」の策定▽原発に影響をもたらす可能性のある「火山の影響評価」―など複数の項目が残る。北電は審査に必要な説明の終了時期を来年夏とするものの、工程通りに進むかは不透明で、再稼働の見通しも立っていない。(土屋航)

■厳格化新基準 10基が再稼働

 福島第1原発事故当時、全国に54基あった原発は、2012年5月の泊原発3号機を最後にすべて止まった。事故で原発の安全行政に対する信頼が地に落ちた反省から、政府は同年9月に原子力規制委員会を発足。従来より厳しい安全対策を原発に義務づける新規制基準を作成し、再稼働に向けた安全性の審査に当たっている。これまで27基が審査を申請し、10基が合格して再稼働した。 事故前に規制を担っていた原子力安全・保安院は、原発を推進する経済産業省の傘下にあった。安全規制の「ブレーキ」と原発推進の「アクセル」を分離できていなかったことが、事故を防げなかった要因と批判された。 こうした経緯から、政府は規制委と事務局の原子力規制庁環境省の外局として発足させた。 規制委は13年7月、政府が「世界最高水準」とする新規制基準を施行。地震津波への対策を強化し、航空機などによるテロ対策や炉心損傷などに伴う放射性物質の拡散を食い止める設備の設置設置も義務づけた。 新規制基準の下で審査を受けた原発は、15年の九州電力川内原発を皮切りに10基が相次ぎ再稼働した。合格済みも7基あり、安全対策工事の完了や地元の同意を待つ。泊原発を含め10基は審査中だ。(土屋航)(北海道新聞デジタルより引用)

★★★ 骨川筋衛門のコメント:2012年5月以降、「福島第1原発事故当時、全国に54基あった原発は、2012年5月の泊原発3号機を最後にすべて止まった」負の歴史があるにもかかわらず、「事故で原発の安全行政に対する信頼が地に落ちた反省から、政府は同年9月に原子力規制委員会を発足」させ、原子力規制委員会は、これまで27基が審査を申請したうち、10基を合格させ再稼働させている。原子力規制委員会は「新規制基準」としている「活断層」に関しては「12万~13万年前以降に活動した断層」を「地震を引き起こす可能性のある『活断層』と定義」しています。「北電は申請当初から『活断層ではない』と主張し続けたが、断層の年代特定に必要な火山灰層が確認できなかった」と答えるしかできなかったのです。
 北海道新聞は、これまで地層研究をしてきた科学者が活断層などによる危険性があると警告している記事を掲載してきました。 今回、記者は、「規制委の更田豊志委員長は『北電に専門的な議論ができる人材が欠けていることが影響している』と指摘」し、北電に専門家を導入し、「再稼働」をできるようにと示唆しているともとれる発言を書き記しています。政府・規制委員会はできれば、他の電力会社の原発再稼働を許可して尻押ししてきたように北電の「地層・津波対策」においても稼働停止中の北電の原発を「合格=再稼働」させたいのでしょう。しかし、残念ながらあまりにも「お粗末な回答」しか提示できなかった北電の言い分に加担することができなかったと思われます。 
 北電は今後も控訴して争う構えですが、何年で「原発再稼働合格」できるのでしょうか?(余談ですが、今回の審判の記事を読んで、『人間失格』を太宰治は書き、井上ひさし氏はそれを念頭に置きながら『人間合格』という「脚本」を書いていることを連想しました…)。

 北電の原発が間近にある神恵内村(かもえないむら)や寿都町(すっつちょう)の、特に核のごみ処分場設置賛成の人たちにこの判決がどのように影響することかと想像しました。地震津波原発事故などが身近に起こる可能性がないと断言できない北電の原発が身近にあるということがクローズアップされ、核のごみ=高レベル放射性廃棄物地層処分=埋葬は果たして安全なのかと疑わざるを得ないと思うのです。それともNUMO(原子力発電環境整備機構)の「安全神話」を手放さず、お金だけを頂戴できる=食い逃げできると思っているのでしょうか?核のごみの捨て場所にはどの国も困っているのです。この北海道電力泊原発が再稼動ができないという事態をふまえて、原発の再稼働問題とともに、是非核のごみの処分問題を再考して頂きたいと思います。