[916]社内副業


 副業制度を企業がちょっと前から積極的に導入しはじめました。社内副業とは、社内で所属している部署とは別の部署やチームなどの業務をすることです。
 多能工化の発展形態といっていいと思います。多種類の仕事をやるのは大変です。
 副業制度は資本家・経営者が労働市場で購入した労働力商品をヨリ効率的に消費するために取り入れた方法です。具体的には社内でアルバイトを募集するケースや、社員労働者が自分の技術的労働を複数部署に提供するケースがあります。そして今では所属先会社と個人事業主として委託契約を結んで仕事をする制度が導入されはじめました。
 私は個人契約の副業と聞くと内職をイメージします。古い話ですが、家の中で家計のために低賃金でコツコツ働く、例えば繕い物をする人の姿が浮かびます。内職は時間賃金ではなく個数賃金でした。
 企業側にとっては、自企業で働く労働者のやる気や能力を一定程度わかったうえで労働基準法の適用外の労働力を調達することができる便利な制度です。しかし、労働者にとっては厳しいと思います。単純化していうと8時間労働でこなした仕事以外に、種類の違う労働を請負うわけですから労働時間が増えます。企業側にとって労働時間管理が大きな課題になります。
 副業制度をとり入れているIT企業ガイアックスの担当者は言います。
 「副業が『アルバイト』の場合、本業と副業の勤務時間を通算して管理しなければならず、給与も時間外の計算が必要で運用が煩雑になるため、社外の副業においては『業務委託』を推奨していました。ただ、その運用を社内に適用すると、残業管理の回避や過重労働を隠す手法として、悪用や批判を受けるリスクもありました。そこで社労士に相談し、労基署の見解を確認しました。その結果、『社外で過度な副業をするより、社内なら稼働状況も見えやすくなる』と評価いただき、採用や新人教育のコストを抑えることも可能な案に、お墨付きを得ることができました。」

 労基署からお墨付きを得たと言いますが、「過度な副業」は社内でも起きることを前提として「見えやすくする」ということです。しかし、業務委託した仕事には委託した側は過度な労働が見えても労働時間管理に口出しできないのです。経営者が副業に委託契約という形態を導入するのは残業や過重労働を契約労働者本人の責任とし、企業側責任を回避するためなのです。
 委託契約労働の対価は委託契約金という形式をとりますが、事実上は個数賃金です。
 個数賃金は時間賃金の転化形態です。個数賃金は資本制的生産様式のもとでもっとも過酷な賃金支払い形態です。この問題は稿を改めて考えてみたいと思います。