[918](寄稿)ロシア・ウクライナ戦争の帰趨、予想がつきません

ペンギンドクターより
その1

 梅雨入りとなり、うっとおしい日々が続いています。いかがお暮しでしょうか。
 新型コロナウイルス感染(COVID‐19)は重症者が激減し、病院の医療逼迫はなくなりました。このまま推移すれば秋にはお会いできる可能性は高いと思われます。ただし感染者数については、減少はしているものの全国で収束しつつあるとは言えません。私自身は相変らず人混みを避けて暮らしています。ある意味で規則正しい生活ですが、その分あっという間に毎日が過ぎ去っていき、身体の衰えだけが増している感じです。
 転送する文章は、皆様にもお馴染みの山本佳奈医師が連休中に訪れた米国事情です。(編集者註:次々回紹介します。)若い人があちこち出かけるのは大変結構なことと思います。コロナ禍だからこそ、大いに世界の状況を観察してくるのは役に立つと思います。続きもあるようですので、配信されたらまた転送したいと思います。

 ロシア・ウクライナ戦争の帰趨については、日々情報が飛び交っていますが、私にはまったく予想がつきません。長期化するとすれば、戦場となっているウクライナの荒廃がますます進むと思われます。黒川祐次『物語ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国』(中公新書、2002年8月25日初版、2022年3月25日11版)によれば、ウクライナの歴史には様々な紆余曲折があるようです。著者の黒川氏は1944年愛知県生まれ。東京大学教養学部卒業。外務省入省後、駐ウクライナ大使・モルドバ大使(兼務)の経験もあり、20年前の本とはいえ、バランスの取れた論調で、ウクライナの歴史を知るにはもってこいの本です。駅ビルの書店に平積みになっていたので、よく売れているのだと思います。ウクライナは世界の黒土地帯の30%を占め、耕地面積は日本の全面積に匹敵し、農業国フランスの耕地面積の二倍ある世界屈指の農業国であると同時に、工業・科学技術面でも水準は高いとのことです。この戦争により、小麦の需給が逼迫し、アフリカなどでの飢餓が問題になっているのは予想された通りと言えそうです。毎日心配しながら、YahooやMSNからの情報をチェックしています。

 さて、前回送信しました「胃がん」の件です。「実験胃がん」を世界で初めて作った杉村隆博士ですが、昨年ではなく一昨年94歳で亡くなっていました。COVID‐19が問題になってからは、時間の感覚が乏しくなり、申し訳ありません。癌研の佐野病院長に「胃がん発生の研究者を集めて座談会をして胃がん研究大国である日本が、なぜ犯人ピロリ菌を見つけられなかったのか総括したら・・・・・」と内輪の会で提案したのももう4年前の2018年のようです。その時、彼は「杉村隆さんは私の患者だけどちょっと認知症が進んで・・・・・」と言っていましたから、もともと座談会は無理な相談だったということでしょう。実は杉村隆博士も胃がんになって胃全摘を受けています。その手術の主治医が、当時がんセンターにいた胃がん担当の佐野部長だったわけです。早期胃癌だったようで命に別状はなかったものの、ご本人は会食などにおいて、自分だけ美味いものを腹いっぱい食べられないことに不満をもらしていらっしゃったようです。そういう文章を見た記憶があります。ピロリ菌の検査などはされたのかどうか、今更遅いけれども、ちょっと気になります。

つづく