[934]21世紀世界の地殻変動

 
 大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は29日に、今後10年間の行動指針となる新たな「戦略概念」を採択し、ウクライナを侵略したロシアを事実上の敵国と認定しました。中国についても欧米への「組織的な挑戦」を突きつけていると初めて明記しました。そしてトルコが賛同することによってスウェーデンフィンランドの加盟も可能になりました。
 NATOソ連邦崩壊後最大の転換点を迎えています。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとして米・欧・日対ロシア・中国の対立関係は鋭角的になり、NATOの対応という観点からみるかぎりロシアは孤立化を深めています。
 
 けれども他面では、ロシア・中国ブロックとでもいえるグループの結束がはじまっています。
 バイデンが21年12月に主催した「民主主義サミット」に呼ばれなかったシンガポールのリー・シェンロン首相は今年5月、日経新聞のインタビューに「民主主義対権威主義の図式にはめ込むのは、終わりのない善悪の議論に足を突っ込む」と答えたそうです。リー首相の発言はプーチンウクライナ侵攻という現代世界の地殻変動のはじまりの中でアメリカの一極支配の終わりを物語っています。
 スウェーデンの独立研究所VーDemの調査によれば、21年時点で世界人口の7割にあたる54億人が非民主主義的な体制下にあるといいます。「自由民主主義」と分類される国は2012年に42ヵ国だったが、21年には34ヵ国にまで減り、世界のわずか13%にとどまります。

 米調査機関エイドデータの集計によると、中国の一帯一路戦略にもとづく投融資は2013年からの5年間で4280億ドル(58兆円)になり、一国でG7の6000億ドル(81兆円)の7割です。
 G7サミットにあわせて開催されたBRICsの拡大会議に参加したG20議長国インドネシアのジョコ大統領はプーチンとの会談のためにモスクワに向かいました。G20はロシアに門戸を開いています。
 プーチンウクライナ侵攻による21世紀の世界的カオスのなかで東西資本主義は新たな支配の秩序づくりに動いています。東西対立が深まり両陣営の衝突の可能性が高まっています。
 世界大戦を止めるのは労働者階級の団結した力です。