[953](寄稿)第7波


ペンギンドクターより
その1

皆様
 新型コロナウイルス感染(COVID‐19)が拡大しています。第7波であることは間違いなさそうです。黒木登志夫氏の言うように、「パンデミックは続く、変異も続く」は図星ですね。先日紹介した黒木登志夫『変異ウイルスとの闘い――コロナ治療薬とワクチン』(中公新書、2022年5月25日発行)参照。
 私はまもなく75歳ですので、日常的に「三密」は避けていますし、旅に出たい思いは強くとも相変らず上京もしていません。ただし、7月30日(土)昔勤務していた病院の歯科受診を予約しました。毎日食後3回の歯磨きすなわち歯間ブラシの使用により、落ち着いていた歯の状況が少し変化して、食後に右奥歯の周辺の違和感が出てきたからです。お馴染みの歯科医の先生にほぼ3年ぶりに診察してもらおうと思っています。利根川を越える電車の乗車は3年ぶりになります。なるべく「呼吸をしないようにして?」乗車往復してくるつもりです。
 それはそれとして、数日前、東京広尾に在住の大学の同級生から、「本日7月18日の麻雀の誘い」のショートメールが入りました。他に二人の同級生を入れて3人はメンバーが揃ったのですが、1人足りないので私に目星をつけたのでしょう。もちろん断りました。広尾の彼のマンションには80万余りで購入した全自動マージャン卓があり、昔私も一度お手合わせしたことがあります。ただ、広尾へは往復4時間以上かかるので、落ち着いて遊ぶどころではありませんでした。確かに麻雀好きの連中には、あと一人足りないというのは苦痛です。私もよく麻雀をしたので気持ちはわかります。しかし、第7波のこの時期に74歳以上の医師4人でマージャンをするというのは、ちょっと「異常」のような感じがします。東京の人びとは、あまりコロナに対する危機感がないのかもしれません。田舎と違って都会は今多くの人びとが街をにぎわせているという現実があるからかもしれません。仲の良かった麻雀友達に会いたい気持ちがないわけではありませんが、少し呆れてしまいました。彼は子供はいなくて「麻雀が生きがい」というところもあり、気のいい奴なので気の毒ではありましたが・・・・・・。

 第7波ですが、とりあえず外出制限や飲食店の営業時間制限をしないという政府の方針は、一応私も賛成です。2類を5類にするという方針は今のところ政府にはないようです。朝日新聞によれば、またまた保健所の疲弊が取り沙汰されています。何だか、同じ場面がこれでもかこれでもかとくり返されている気がします。
 以前紹介した中村祐輔『ゲノムに聞け 最先端のウイルスとワクチンの科学』(文春新書、2022年3月20日第1刷発行)の第3章 検証・科学なき国の感染対策の94ページに次のような文章があります。

 ・・・・・・本来ならば、この国のトップである総理や官僚たちは敢然と、新型コロナウイルスを2類相当から季節性インフルエンザなどと同じ5類に引き下げ、大規模なPCR検査を指揮するなど、現実に即した対応をすべきでした。
 ところが実際には、大規模PCR検査をすると、その会場でクラスターが発生する危険性があるなどという情報が垂れ流され、PCR検査の実施は最小限に抑えられたのです。

 PCR検査をして感染確定者の数が増えてしまうと、病床が軽症者や無症状感染者で溢れて医療現場が立ち行かなくなって自分たちの失敗が白日の下に晒されることになります。政府がそれを隠蔽したために国民の健康が犠牲になったと言わざるを得ません。
 重症化率の低いオミクロン型が急速に感染拡大するに至っても、感染者を隔離入院させなければならない2類のまま放置しました。これで法律と現実のつじつまが合わなくなり、結果として世論の動向を見ながら、科学的根拠のない「蔓延防止等重点措置」を乱発しました。いまもなおこの国の医療システムのエラー、”感染症ムラ”の機能不全は改善されないままです。・・・・・

 医療者ネットワーク上での意見は、若い医師の方が多いせいもあるかと思いますが、2類を5類にという意見が圧倒的です。私も現在はそういう意見に同調します。ただし、2類を5類にというのは、現実には感染者が減少している間に行なう方がいいはずです。「変化」は議論する余裕がある時にすべきです。どさくさ紛れは禁忌です。議論をリードすべき主体である厚労省は何をしているのか、という疑問は出すだけ無駄でしょうが、「政府」というのは実際は「厚労省」ですから、無理な注文でしょう。
 岸田政権にはコロナどころか、ロシアのウクライナ侵攻、参議院選挙、安部元総理射殺などでそれどころではない、とすれば、誰かがやらなければいけない課題ですが・・・・・・。

 プロ野球では快進撃のヤクルトがコロナ感染で失速、大相撲も6勝2敗の一山本が所属部屋の親方の感染で休場せざるを得ないとか、世界陸上の選手も感染など、いよいよ感染拡大に歯止めがかからなくなっているようです。現状では「COVID‐19抑制に打つ手なし」とも思えます。私は今までのようにじっと我慢ですが、何だか、「物価高騰」「急速な円安」に日銀の打つ手なしとダブって見えます。さらに言えば、元統一教会献金強要などのニュースなどと共に、安部元総理の功罪についてマスコミが云々していますが、安部外交の評価はともかく、安部さんは結局「コロナ対策」の失敗で政権を投げ出したのですから、国民の身近な課題である「コロナ対策」は決して馬鹿に出来ないと思うのですが。
 尾身会長も、JCHO地域医療機能推進機構理事長を勇退し、結核予防会理事長に横滑りして、ホッとしているのではないでしょうか。結核予防会にも病院はありますが、具体的なコロナ対策病院からは距離があります。そのせいではありますまいが、現状の新型コロナウイルスは5類に近いとかちょっと気楽な物言いが目立ちます。一気に感染拡大の島根県知事は尾身会長の発言に憤然としているようです。・・・・・・。

つづく