[1030](寄稿)保阪正康の『五・一五事件 橘孝三郎と愛郷塾の軌跡』について

ペンギンドクターより
その2
 コロナ関係では、イベルメクチン(ノーベル賞の受賞者大村智氏が発見した抗寄生虫薬)のオミクロン株への有効性が結局は認められなかったという情報があります。臨床試験を担当した国内中堅製薬企業・興和厚労省が合計約61億円の緊急支援を行ったのですが、残念ながら有効性の有意差は認められませんでした。これについては詳細を後日とします。
 
 前回お話した本のことです。
 安部元総理が射殺されたことをきっかけに松本清張の「二・二六事件」全5巻を読んだことをお伝えしました。実は、きっかけというのは、射殺の実行犯である山上容疑者に対し、減刑願いというか同情の署名が集まっているという報道があったので、私は「これは五・一五事件」に似ていると思ったのです。「五・一五事件」については、保阪正康五・一五事件 橘孝三郎と愛郷塾の軌跡』(中公文庫、2009年7月25日初版発行)があります。二・二六事件と異なり、五・一五事件は実行犯が海軍将校中心で少人数であり、減刑嘆願書が厖大な数となっています。殺されたのは犬養毅首相です。
 
 横道に逸れますが、このテロで殺された犬養首相は自分が政友会総裁だった時に、浜口内閣打倒のためロンドン海軍軍縮条約締結を「統帥権干犯」と海軍強硬派や鳩山一郎とともに批判した前歴があります。つまり彼は自らの手で政党内閣衰退のもとを作っています。そしてその付けが、皮肉にもテロに倒れる結果を招いたとも言えます。政治家の節操のなさを見せつけられます。
 さらにこの犬養首相の三男が犬養健であり、吉田内閣法相時に、「造船疑獄」での佐藤栄作幹事長の逮捕を「指揮権発動」で阻止した張本人です。彼は翌日法相を辞任していますが、何と言うべきか言葉を失います。
 健法相には娘に評論家犬養道子さんがいます。彼女は祖父の犬養毅首相のことを良く知っていたはずですが、彼女の文章を読んだとき、「統帥権干犯」云々については触れていなかったので、ちょっと残念な思いがしたことを覚えています。
 ついでです。犬養健と「第二夫人」との間に生まれた娘が安藤和津さんです。ということで俳優の奥田瑛二さんは犬養健の娘婿というわけです・・・・・・。まあどうでもいいことですが、いろいろなつながりがあるので、滅多なことは言えませんね。
 
 話を戻しますと、安部元首相の射殺を契機に、五・一五事件を思い出したのですが、保阪正康のこの本は読んですぐに読書記録をつけていたので、もっと昔に読んでいたために読書記録をつけていない、松本清張二・二六事件』を読んだというわけです。やっとつながりました。
 旧統一教会と政治家との関連がゾロゾロ出て来ますが、与党も野党も選挙のためには何でもやる感じで、自民党安部派中心というものの、政党に対する不信は募ります。天皇側近・政党・財界・官僚の腐敗をただすと蹶起した五・一五事件二・二六事件青年将校を今に置き換えれば、自衛隊の中堅将校たちは韓国発祥の統一教会に端を発する現在の政界・宗教界?との癒着に何を感じているのか、知りたい気持ちもあります。本来嫌韓・嫌中のはずの自民党右派が選挙のためとはいえ、どうして韓国の宗教団体と結びつくのか、きわめて歪な事態です。
つづく