[1039](寄稿)ウクライナ関連の本を2冊紹介します

ペンギンドクターより
その2
 
ウクライナ関連の本を2冊紹介します。
 エマニュエル・トッド第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書、2022年6月20日第1刷)と佐藤優『よみがえる戦略的思考 ウクライナ戦争で見る「動的体系」』(朝日新書、2022年10月30日第1刷)です。
 
 エマニュエル・トッドの本の表紙裏と裏表紙のコピーを記します。
 
第三次世界大戦はもう始まっている
 本来、簡単に避けられたウクライナ戦争の原因と責任はプーチンではなく米国とNATOにある。事実上、米露の軍事衝突が始まり「世界大戦化」してしまった以上、戦争は容易に終わらず、露経済よりも西側経済の脆さが露呈してくるだろう。
 
 ●この戦争は第二次大戦より第一次大戦に似ている
 ●戦争の原因の責任は米国とNATOにある
 ●「手遅れになる前にウクライナ軍を破壊する」が露の目的だった
 ●反露に固執するポーランドの動きに注意せよ
 ●ノルド・ストリーム2の停止は米国の悲願だった
 ●独仏は”真のNATO”に入っていない
 ●「欧州と日本をロシアから離反させる」が米国の戦略だ
 ●人口が流出していたウクライナは戦争前から「破綻国家」だった
 ●ロシア経済よりも西側経済の脆弱さが露呈するだろう
 ●超大国は一つだけより二つ以上あるほうがいい
 ●米国の”危うい行動”こそ日本にとって最大のリスクだ
 
 エマニュエル・トッドは以前から「EU」はドイツ帝国だと批判しています。彼はフランス人でイギリスで歴史人類学・家族人類学を勉強していますから、ロシアびいき、反アメリカというわけではありません。彼は冷静に事態をみて、EUの危うさを危惧しています。今のマスコミの反ロシア一辺倒の論調にも疑念を持つべきだと私は思います。彼も佐藤も言っていますが、プーチンの主張を是認するというわけでなく、戦況や事実関係には米英国からの一方的な情報もあり得るという冷静さは必要だと思います。つまりトッドの主張には説得力があります。一読を薦めます。
 
佐藤優の本の表紙裏と裏表紙のコピーを記します。
 
 エネルギー問題、核の脅威・・・日本を含む全世界が消耗し尽くす前に現実的問題解決が必要である。
 戦争の危機はなぜ去らないのか?
 今こそ、価値観外交ではなく現実主義的外交が必要だ。
 国際関係は、「価値の体系」「利益の体系」「力の体系」が複雑に絡み合った動的体系である。ウクライナ戦争に対する日本の政策は、米国やG7と共同歩調をとり、メディアもロシアを厳しく断罪している。しかし、戦略的思考を欠いたために、戦前の日本では悲劇的事態が起きた。世界地図が塗り替えられる今、その愚を繰り返してはならず、「大国」としての行動が必要とされる。現下の危機を克服するために、戦略的思考を取り戻せ!
 国際政治の肝は今も昔も変わらない。
 米バイデン政権が展開する対ロシア外交は、「民主主義vs権威主義」「自由vs独裁」という単純な二項対立に基づく「価値の体系」のみが突出した外交だ。価値観外交を展開すると、自らの価値観を受け入れない国家を殲滅しなくてはならず、国際秩序が著しく不安定になる。
 
 トッドも佐藤もロシア軍侵攻以前に、ウクライナという国が一種の「破綻国家」であったことは認めているように私は理解しています。今後どうなるか、もちろん私にはわかりませんが、中国やインドが距離を置いている現実は、注視していきたいと思っています。トッドが言うように、アメリカが極めて不安定な超大国であることは間違いありません。何しろアメリカは分断された状態ですから。
 つづく