[1072]再び胡錦濤退場事件について

15日のヤフーニュースに夕刊フジの記事(峯村健司)が紹介されていました。

 中国共産党大会での胡錦濤前総書記〝途中退席〟事件に関する分析内容と、中国問題を分析する際の”追っかけ方“が述べられています。

 

 私もあの事件にはいささか驚きました。中国共産党大会のいわばハップニングがリアルタイムで放映されたからです。ブログの[1053][1054]で私が感じたことを書きました。

 

以下ヤフーニュースより

習政権3期目の行方を占う胡錦濤前総書記〝途中退席〟事件・第4弾 党幹部向け文書に極めて重要な「個人的な心情」の説明

11/14(月) 17:00配信

夕刊フジ

【ニュース裏表 峯村健司】

 

本欄では引き続き、10月22日の中国共産党大会閉会式における胡錦濤前総書記(79)の〝途中退席〟事件を取り上げたい。なぜしつこくこの問題を追いかけるのか、疑問に思われる読者がいるかもしれない。それは、本件が単なる胡氏個人の問題ではなく、「習近平政権の3期目」の行方を占ううえで、重要だと考えるからだ。

 

米国や台湾などの専門家らと意見交換を進めるなかで、「胡氏が新人事に対して『抗議の意』を表そうとしたところ退席を余儀なくされた」という見解ではおおむね一致している。

 

筆者は大会に出席した共産党幹部を親族に持つ党関係者らに取材を続けたところ、新たな事実を確認した。

 

それは、事件の顚末(てんまつ)について、10月22日夜に党内の幹部向けに出された説明文書だ。そこには、退席した理由が次のように記されていた。

 

「第20回党大会で中央委員を選出する際、前指導者の個人的な心情と体調などを考慮、尊重して、閉幕前に退席して休んでもらった」

 

ここで極めて重要なのは、胡氏の「個人的な心情」が理由として明記されていることだ。同じタイミングで、国営新華社通信の英語版ツイッターの説明では、「体調問題」の部分だけが記されていた。

 

胡氏の「個人的な心情」とは、新人事で自らが率いる共産主義青年団共青団)出身の胡春華・副首相(59)らの降格が決まったことに不満を示したことを裏付けている。

 

伏線はあった。北京に隣接する河北省のリゾート地、北戴河で8月上旬に開かれた秘密会議「北戴河会合」で、胡錦濤氏が次のような発言をしていたことを前出の党関係者から確認している。

 

「最高指導部に、共青団出身者を一人はいれなくてはならない」

 

習近平総書記(69)主導で進められた人事に対して、胡錦濤氏は異議を申し立てた。これに対し、習氏は会議上では、胡春華氏の常務委員への昇格を内諾していたという。

 

こうした経緯を振り返ると、閉会式直前に習氏との人事案をめぐる約束を反故にされたことを知った胡錦濤氏が、海外メディアの取材団が入ってきたタイミングであえて、抗議の意思を示そうとした、と考えるのが合理的と言えよう。

 

厚いベールに包まれた中国政治の中枢、中南海の動向を探るのは極めて難しい。中国共産党内では、「権力闘争」も「派閥」も存在しない建前だ。しかも、中国当局は党内の内部情報を開示しないだけではなく、今回の胡錦濤氏の「病気説」のように世論誘導を狙った情報操作をするから厄介だ。

 

こういう難しい状況下で正しい情報を収集して判断する方法は、公開情報を丹念に集めて「流れ」を把握したうえで、内部情報で「裏取り」を進めること。これが、私が15年間、中国政治を分析した経験に裏打ちされたやり方だ。

 

引用以上。

 10月22日の党内の幹部向けに出された内部文書の内容が事実だとすれば、大会で胡錦涛習近平人事に関する反発を示したことを党が認めたということです。

 胡錦涛のあの行動の意味は体調問題だけではないと推断していいと思います。習近平新体制と胡錦涛の行動——それは、自身の諸施策にたいする共青団派からの根強い批判を厄介だと思った習近平が、異論をもつものを指導部内から排除したということを端的に示しているといえます。

 中国国家資本主義は新型コロナ危機のなかで行き詰っています。習近平は一方で米欧日諸国とのウクライナ、台湾問題など危ういパワーゲームを展開しつつ、中国の労働者階級に犠牲を強いることを通して危機をのりきる方途を探るでしょう。