[1084]原発政策、転換

 岸田首相が原発の新増設、運転期間の延長に踏みだしました。自民党政権東日本大震災以降、建て替えや新増設を「想定していない」と言ってきました。しかし28日、経済産業省原子力政策の行動計画案を示し、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発•建設を進めていく」と明記しました。震災前より原発依存度を下げると言っていますが、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で決定しようとしています。

 福島第一原発の事故の後始末のめどが未だにたっていません。専門家によれば太平洋のプレートが数cmづつ動き続けていて東南海地震が発生するのは必然的だと言われています。そのときには津波も発生します。原発事故が起きるでしょう。

 福島第一原発事故で政府、東電は多くの人々に大きな被害をあたえたにもかかわらずなぜ原発依存に戻るのか。エネルギー危機と脱炭素に対応するためにと言っています。

 けれどもエネルギー危機は、ウクライナ戦争でロシアにたいして欧米日政府が発動した経済制裁の反動で起きていることです。戦争政策によってもたらされたエネルギー危機を原発によって贖うというのです。原発依存への回帰を正当化するためにエネルギー危機を使っているように私は感じます。

 ところで原発の原料であるウランの核分裂では二酸化炭素は出ませんが、採掘、精製、加工、輸送の過程で二酸化炭素が出ます。さらに大きな問題は「温排水」です。原発では燃料を冷やすために海水を使い温まった水を海に排出します。入れたときより7度〜10度温まった状態で棄てられるため、海水温を上昇させ、排水口付近の生態系に影響を与えてしまいます。 また、その水には、化学物質や放射能が含まれ、生態系に影響を与えます。

 原発政策を転換した本当の狙いは、原発建設、稼働による巨額の利益に垂涎する経団連の要求に応えることであり、ウクライナ危機のなかで核武装への道を開けておくということ。原発の原理は核分裂なのです。

 

以下、日経新聞ウエブニュースです。

原発先細り、打開探る 建て替えや運転延長にカジ

 経済産業省原子力発電所の建て替えや運転期間延長の案を示した。東日本大震災後、再稼働さえままならず、原子力は先細りの懸念が強まっていた。将来にわたる電力の安定供給と脱炭素の両立に向けて国として原発の活用に再びかじを切る。打開を探るには技術・資金両面での官民の役割分担、使用済み核燃料の扱いなど山積みの課題に一つ一つ向き合う必要がある。

 政府は震災後、原発の新増設や建て替えを封印してきた。ここにきてウクライナ危機でエネルギーの供給不安に直面し、輸入依存度が高い化石燃料に依存するもろさを突きつけられた。

 原子力の再拡大は一筋縄ではいかない。国内33基の原発がすべて現行ルールの特例で最大60年間運転すると仮定しても、2050年代には5基まで減る。

 建て替え案の提示は袋小路の状況を打開する一歩になる。政府内では関西電力美浜原発福井県)を候補地の一つとする見方がある。1~3号機のうち1、2号機は廃炉が決まり、3号機は稼働から40年を超えた。関電は「新増設や建て替えがおのずと必要になる」との立場で、震災前には1号機の後継について自主調査も始めていた。

 問題は、原発の設計・建設には少なくとも10年前後の時間と5000億~1兆円の巨額の資金を必要とすることだ。投資を回収できるメドがなければ電力会社は動けない。震災を経て社会の環境も大きく変わった。

  電力市場は自由化が進んで再生可能エネルギーのコストが次第に下がっており、原発に以前考えていたほどの価格競争力はない。経産省の計画案は「収入の安定につながる制度措置などの検討を進める」と盛り込んだ。電力会社を後押しする実効的な支援策を打ち出せるかが問われる。
引用以上
 日経新聞は、政府にたいしてもっと電力会社を支援するように尻押ししています。