[1088]賃上げ5%要求では足りません

 「連合」は12月1日、千葉県浦安市で中央委員会を開き、23春闘の賃上げ要求を決定しました。

 2023年の春季労使交渉で、基本給を一律に上げるベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ要求を5%程度にすると決定しました。ベア分が3%、定昇分が2%です。28年ぶりの高い要求と言われていますが、10月の消費者物価指数 (生鮮食品を除く)は3•6%上昇しています。賃上げ要求よりも物価の値上げのほうが足が速い。

 30年間賃金は上がってない

 1990年以降国際競争に遅れ危機に陥った日本企業は賃金コスト削減にむかいました。労働組合に雇用か賃上げかという枠をこしらえ、雇用の安定のために賃上げはできないとして賃金抑制をはかって来たのです。

 労使協調主義の労働組合指導部もまた、雇用の安定の名のもとに賃上げ闘争を低額妥結し収拾してきました。

 また経営者は人件費を抑えるために労働者の雇用形態を非正規化したり派遣労働者を受け入れ労賃コストを削減してきました。いまや労働者の40%が非正規雇用形態になりました。

 さらに新型コロナ危機のなかで資本家、経営者はさらに賃金コストを切り詰める追求をしています。労働者を雇用するのではなく個人請負契約を結び定額で長時間働かせています。個人事業主として請負契約で働く労働者は、一定量の仕事を何時間でこなすのかは「自己責任」です。労働基準法の対象にはならず、事故にあっても賠償と保障は自分もち。経営者は雇用主ではないので賃金引き上げ闘争は否定されます。いわゆるキグワーカーに仕事をさせるのは賃金コスト削減の一形態といえるでしょう。

 財務省の法人企業統計調査によれば、7〜9月期の経常利益は新型コロナ感染症が広がる前より18•3%増えているのに賃金は1•7%減っています。労働者の生活はますます厳しくなっています。

 今なお実質賃金は下がっているのです。いま大幅賃上げが必要です。

 

揺らぐ平均賃上げ要求方式

 連合芳野会長は1日の中央委員会で、「慢性デフレから脱却し、家計と企業が急性インフレに対応するためにはとにかく賃上げが必要」と言いました。

 しかし労働者全体の賃金のベースアップという賃上げの形は今ピンチに直面していいます。ジョブ(職務)によって賃金体系が変えられ、ジョブごとに賃上げ要求をするところが出はじめています。

 連合指導部は平均要求方式の存立の危機をどうするのか。

 日本の賃金闘争は平均賃上げ要求を廃止する方向に向かっています。トヨタ労組は22春闘で先鞭をつける形で平均賃上げ要求を廃止しジョブごとに異なる要求内容を出し妥結しました。労働組合が同一企業で職務ごとに異なる賃金要求を出すのは、労働者の団結を分断する行為です。労働組合の存在意義が問われています。